【これから10年で消える不動産会社の特徴】生き残る会社との決定的な違い

不動産会社を宅地建物取引業免許業者と定義した場合、その数は令和6年度末時点で132,291業者となり、過去20年間で最高の件数まで増加しています。

宅地建物取引業者数の推移

一方で年間の成約報告件数は令和5年度末で183,023件となっており、それ以前の9年間を遡ってみても大きく増加していません。

売り物件成約報告件数の推移

これは宅地建物取引業者(以下 宅建業者)の増加数に対して成約件数は比例していない、つまり1社あたりの収益機会が低下している可能性を示唆しています。

無論、宅建業者の収入源は不動産の売買だけでなく、賃貸取引や買取した上での売却、コンサルティング報酬など多岐に渡りますが、それでも競合業者の増加が少なからず影響を与えるのは間違いありません。

過去20年間を振り返った場合、平成17年に131,251社あった宅建業者は、平成25年に122,127社まで約7%減少し、その後徐々に増加してきました。

この間どのような環境変化があったかと言えば、リーマン・ショックによる不動産市場の急激な冷え込みや、金融機関による融資姿勢の厳格化など、不動産業界全体が厳しい局面を迎えたことが挙げられます。

しかしその後、金融緩和や不動産市場の活性化、さらにはインバウンド需要の拡大などを背景に不動産市場は回復基調に転じ、宅建業者数も再び増加に転じました。

結果として現在は、過去20年間で最多となる業者数にまで拡大したのです。

しかし注目すべきは、宅建業者数の増加と市場規模が必ずしも比例していないという点です。

つまり単純に考えれば、1社あたりが取り扱うことのできる案件数は相対的に減少している可能性があるのです。

そもそも不動産市場は「参入障壁が比較的低い」と言われる業界です。

宅地建物取引士の確保や免許取得など一定の条件はあるものの、他業種と比較すれば小規模でも開業が可能です。

実際、個人業者は令和5年度末で12,389件と全体の約9%を占めており、かつ1業者あたりの平均従業者数も4.7人と公表されています。

何より、従業者数5人未満が111,309業者と、全体の84.2%を占める業態なのです。

近年では不動産テック企業の参入やポータルサイトの普及、契約の電子化などによって業務効率が改善され、地域格差や企業規模に左右されずビジネスを展開できるようになりましたが、一方で地場密着といった従来型の優位性は失われ差別化が難しい時代になっています。

さらに人口減少や空き家・空き地の増加など、不動産市場を取り巻く環境も大きく変化しています。

都市部では依然として活発な取引が続いている一方で、地方では市場の縮小が顕著となりつつあり、地域によっては宅建業者同士の競争がより激しくなっているのが実情です。

こうした環境の中で、今後10年間の不動産業界を考えた場合、すべての宅建業者が同じように存続していくとは考えにくいでしょう。

実際、不動産業者の集まりに参加すると「今後は淘汰の時代に突入する」といった危惧を口にする経営者は少なくありません。

では、そのような環境下でも事業を存続し続けられる業者と、消えゆく可能性が高い業者にはどのような特徴が見られるのでしょうか。

本稿では不動産市場の変化を踏まえながら、今後の競争環境下で苦戦する可能性が高い宅建業者の特徴について考察していきます。

なぜ淘汰が予想されるのか

序章で触れた通り、宅建業者数は増加を続け過去20年で最多となっています。

一方で成約報告件数は大きく増加しておらず、1社あたりの取扱件数が相対的に減少していると推察されます。

無論、収益源は多様化していますから、単純に成約報告件数だけで宅建業者の経営状況を判断することはできません。

しかし、競合する宅建業者の増加が市場環境に影響を与えている可能性を、明確に否定できるだけの根拠も見当たりません。

近年はインターネットの普及によって情報格差が縮小され、消費者は簡単に不動産取引についての知識が得られ、かつ売買や賃貸物件情報も業者の協力を得ず容易に検索できるようになりました。

従来は不動産関連知識に精通している、あるいは地元ならではの情報に詳しいというだけで一定の優位性を保つことができましたが、現在ではそれだけで差別化を実現することは困難です。

さらに、人口減少という大きな構造変化や、これから不動産取引の主軸となる若年層の意識変化も影響を与えています。

そのような状況下でも都市部なら一定の需要が維持されると推測されますが、地方ではすでに人口減少と空き家・空き地数の増加が進行しており、今後さらに不動産取引の機会が減少する可能性は高いと推測されます。

このように、宅建業者数が増えている一方で、市場の成長は必ずしもそれに追いついているとは言えません。

つまり、これまでと同じビジネスモデルを続けているだけでは十分な収益を確保することは困難な時代が到来することが、当然に予測されるのです。

しかし、環境変化が著しい現在でも、着実に業績を伸ばし続けている企業は存在します。

それらの業者を入念に調査すると、いずれも市場環境に依存せず、自社の強みを明確にして、独自の戦略を構築していることが分かります。

逆に言えば、市場環境に即時対応できない企業ほど、今後の競争環境の中で苦戦する可能性が高いと言えるのです。

これからの10年で消える会社の特徴

不動産市場を取り巻く環境が大きく変化する中で、すべての宅建業者が生き残るとは考えにくくなっています。

これは、企業規模の大小のみで左右されるわけではありません。

個人事業主、あるいは地域密着型の中小不動産会社でも、安定した経営を続けている企業が存在している事実からも明らかです。

ですが、今後の競争環境の中で苦戦する可能性が高いと思われる業者には、いくつかの共通した特徴が見受けられます。

ここでは、その代表的な特徴について整理していきたいと思います。

1. ポータルサイトに集客を依存している会社

ポータルサイトの利用が悪いという意味ではありません。

実際に、ポータルサイトは消費者にとって利便性が高く、物件情報を効率的に探せるため情報取得の入口として広く利用されています。

しかしポータルサイトの集客モデルにはいくつかの課題があります。

第一に、同じ物件を複数の会社が掲載することも可能なため、消費者から「どの会社に問い合わせても同じ」との印象を持たれやすいという点です。

本来重要なのは、担当者との相性や対応力、知見の程度なのですが、ポータルサイトから得られる情報では消費者がその違いを把握できません。

その結果、消費者は写真写りや掲載点数など、物件を基準に問い合わせ先を選ぶ傾向が顕著となり、企業としての差別化は困難となるのです。

そのため媒介報酬の値引き競争に陥るなど、利益率低下を招く要因にもなり得るのです。

2. 営業ノウハウの属人化

ご存じの通り不動産業は、営業担当者の能力によって業績が大きく左右される業態です。

そのため、小規模事業者が従業者を募集する際には、未経験者より経験者が優遇されるのです。

ですが、営業個人の能力に依存していれば、組織としての安定性に課題を抱える結果となります。

トップ営業が退職した途端、売上が大きく落ち込むことになるからです。

そのため、顧客管理システム(CRM)や営業支援ツールなどを活用すると同時に、優秀な営業担当の手法を組織で共有し、問い合わせ対応から追客、さらには契約からアフターフォローに至る一連の流れを可視化して、営業活動を属人化させない体制を構築することが重要です。

市場環境が厳しくなるほど営業力が差別化戦略の“要”となります。

ですが、営業力を個人に依存すれば、将来的な経営リスクを抱えることになります。

このジレンマを解消するには、営業力の均一化とそれを実現するための対策が不可欠です。

3. 地域戦略が曖昧な会社

ポータルサイトやWeb会議の普及、さらには電磁的契約の解禁を背景に、不動産業者の商圏は広域化しています。

もはや、全国どのエリアの不動産でも扱える時代です。

しかし、物件価格の動向や需要、顧客の属性などに関する地域差を正確に理解しているのは地元業者です。

つまり、特定エリアに密着しているからこそ発揮できる強みがあるのです。

こうした情報は長年の営業活動や地域との関係性によって培われたものですから、遠方の業者が取得できるものではありません。

にもかかわらず明確な方針も持たず「広域なエリアを扱える」と強調すれば、せっかくの強みを放棄する結果になりかねません。

今後さらなる競争の激化が予想される現代においては、特定エリアでどのような価値を提供できるかを明確に打ち出す差別化戦略が重要となるのです。

生き残る会社の特徴とは

ここまでは、今後さらに激化する競争環境下の中で苦戦する可能性が高い業者の特徴について整理してきました。

ですが、当然ながら全ての企業が厳しい状況に置かれているわけではありません。

市場環境の変化をうまく捉えながら着実に業績を伸ばしている企業は存在するのです。

では、そのような企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

ここでは、これからの不動産市場において生き残る可能性が高い会社の特徴について考えてみたいと思います。

1. 複数の集客導線を構築している会社

先述したとおり、多くの不動産会社がポータルサイトを集客の中心に据えています。

ですが、ポータルサイトから得られる情報のうち特に査定依頼は、情報を得た時点ですでに複数業者と紐づけられています。

そこで勝ち残るのが容易ではないことを、皆さんよくご存じかと思います。

一方で、安定した経営を続けている会社の多くはポータルサイトを利用しつつも、依存することなく下記のような複数の集客導線を確保しているものです。

◯既存顧客からの紹介
◯出入り業者や士業など、利害関係者からの紹介
◯地域住民の相談対応
◯自社ホームページの拡充
◯地域情報発信による認知向上
◯Instagram、YouTube、SNSなどを利用した情報発信

これらを駆使して活動している会社は、ポータルサイトの掲載順位や広告費の増減に経営を左右されにくく、安定した案件獲得を実現しています。

特に売却は地域ネットワークや相続、離婚、境界問題などの相談対応を通じて発生するケースも多く、長期的な関係性の構築に尽力するのはもとより、企業としての専門性を広く発信することで案件の獲得につながります。

また、紹介もただ待っているだけでは得られません。

契約や決済、アフターフォロー時など会話の機会があるたびに「不動産の売却や購入を検討されている方がいらっしゃれば、是非ご紹介ください」と口にするのです。

紹介件数は信頼度に比例します。

そして、信頼度は相談に対して迅速に対応することで増していくのです。

言い換えれば、これからの不動産会社に求められるのは「情報を掲載する会社」ではなく、より多く「相談される会社」だと言えるのです。

2. 組織として営業力を高めている会社

不動産取引の主流が電磁的方法になる時代が到来しても、営業担当者の重要性が変化することはありません。

不動産は1to1取引の典型であり、顧客一人ひとりの属性、行動履歴、嗜好性などを的確に分析し、それぞれのニーズに合わせたアプローチを行う必要があるからです。

もっとも、これが不動産営業の能力が属人化しやすい理由でもあります。

ですが、企業が主体となって以下のような取り組みをすることで、営業力の向上と均一化を実現することは可能です。

◯顧客管理システムによる情報共有
◯追客プロセスの標準化
◯営業ノウハウの蓄積と社内共有
◯定期的な営業研修の実施

このような取り組みを継続し、かつ必要に応じて適宜修正・改変することで、営業担当者による成果のばらつきを減らし、企業全体としての業績を確保することが可能となります。

また、組織的な営業体制を整えている企業は、新人教育や人材育成も行いやすくなります。

転職率が高く、業界を渡り歩く熟練営業の多いのが不動産業界であり、それだけに帰属意識の低い傾向が見受けられます。

教育体制が整っていれば若手人材を定着させやすく、結果として長期的な競争力を高められるのです。

熟練者に依存する体質を改善することが、どれだけ自社に収益をもたらすか、経営者は自問する必要があるのです。

3. 地域の課題をビジネスにつなげている会社

人口減少や空き家の増加など、不動産市場にはさまざまな課題が存在しています。

ですがこれらの課題が解消できないと嘆いても始まりません。見方を変えて以下のように課題の解消に取り組めば、新しいビジネス機会となり得るからです。

◯空き家の売却や利活用相談体制の拡充
◯相続不動産の対応強化(士業を交えたワンストップ体制の構築など)
◯古家付き、再建築不可物件の利活用提案
◯地域再生に関わる不動産事業

こうした案件は単純な仲介取引ではありません。

コンサルティング能力や高度な提案力が求められ、かつ地域の事情を理解している企業ほど強みを発揮しやすい分野でもあります。

特に空き家問題が深刻化しているエリアでは、士業や自治体、地域団体と連携しながら問題解決できるノウハウを有する企業は他社の追随を許さない重要な存在となるのです。

実際に、地域課題をビジネスへと転換した事例は数多く存在します。

参考として、私が相談を受けたある地方の小規模事業者の事例を紹介します。

その地域では、高齢化によって管理不全となった「空き家」と「放置された竹林」が深刻な地域課題となっていました。

そのため、地元のNPO法人と提携して空き家とそれに連なる竹林を整備して景観を整えることを優先するようにアドバイスしました。

具体的には、伐採した竹を再利用した工芸品や資材を、その空き家をリノベーションする際のインテリアとして活用すること、そのうえで「地域のアイデンティティを継承する住まい」としてブランディングし、情報発信することを提案したのです。

結果として、そのストーリーに共感した都市部の若年層からの問い合わせが入り、長期間空き家であった複数の物件が成約に至りました。

現在のその業者は、自治体から「空き家対策アドバイザー」として委託を受け、コンサルティング報酬という新たな収益源を確保しています。

無論、NPO法人との提携や自治体との折衝、竹を利用した商品の作成など様々な困難はありました。

しかし、単なる「物件紹介業」から地域の課題を解決する「プロデューサー」へと進化を果たした、大手では真似できない独自のポジションを築いた好例だと言えるでしょう。

まとめ

宅建業者は過去20年間で最多となる一方で成約件数は大きく増加しておらず、競争環境は今後さらに激化することが確実視されています。

こうした状況下において、これまでと同じビジネスモデルを続けていれば、やがて十分な収益を上げることが困難になっていくでしょう。

これからは単に物件を仲介するだけの存在から脱皮して、国土交通省が想定した不動産業ビジョン2030に則り、自社を変革していく必要があるのです。

そして、それを実現するためにはAIやIoTなど新技術の有効活用はもとより、広範な知見を有した人材確保のために必要な教育訓練やシステム構築は欠かせません。

不動産業の将来像

それにより顧客や地域にとってより価値のあるサービスを提供できるようになるのです。

不動産会社の役割が、顧客や地域の課題を解決する身近なパートナーへ変化しつつあることを理解して、どのように対応していくかが、これからの将来を左右する結果を生み出すのです。

淘汰の時代と言われる今こそ、自社の強みを見つめ直す“好機”と言えるのかも知れません。

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