引き続き、8つある調査項目のそれぞれを深掘りしていき、一通りの役所調査ができる知識習得を目指します。ここからは道路についてです。入門編で触れたように、道路は厳密には建築基準法の範囲内ですが、不動産調査における重要度が非常に高いため個別に解説します。
さて、入門編で記載した通り道路調査で最優先に確認すべきは「接道義務」であり、下記2点でした。
- 建築基準法による道路か?
- 2m以上接しているか?
しかし、入門編では概要にしか触れていませんので「結局のところ建築基準法による道路って何?」といったところは棚上げにしていました。実戦編では接道義務の詳細を中心に解説をしていきます。
ちなみに、これらのルールについては建築基準法の第42条と第43条に定められています。上記 ① のような道路の定義に言及しているのが 第42条で、② のような敷地等と道路の関係に言及しているのが第43条です。まずは「建築基準法による道路とは?」という疑問を解消するために第42条の解説から始めたいと思います。
建築基準法による道路とは?(第42条)
解説に先立って建築基準法の正式な条文を引用しますが読む必要はありません。重要なポイントは個別に解説しますし、法律の文言は読むと疲れます。まずは条文から全体像をやんわりと把握するのが趣旨です。ちなみに第42条は第1項~第6項までありますが、重要なのは第1項と第2項の道路なので第3項以降はこのマニュアルでは割愛します。
第42条第1項
- 建築基準法による道路として第1号~第5号の5種類が記載されている。
- 第1項で定める道路とは第1号~第5号のどれかに該当する幅員4m以上のものをいう。
(道路の定義)
第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路
二 都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路
三 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道
四 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、二年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの
五 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
-建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)令和5年4月1日施行-
この条文をもとに、第1項に記載された道路5種は下記のように呼ばれています。またそれぞれによく使われる通称等もありますので( )書きで添えておきます。
- 1項1号(道路法による道路)
- 1項2号(開発道路 など)
- 1項3号(既存道路)
- 1項4号(都市計画道路 など)
- 1項5号(位置指定道路)
第42条第2項
- 第1項とは別に「幅員4m未満であっても特例的に道路とみなす」狭い道路の救済制度
- 通称:2項道路、みなし道路
2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。
-建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第四十二条 令和5年4月1日施行-
役所調査の実務において建築基準法による道路というと、ここまでに出た中でも特に1項1号・1項5号・2項道路の3種が頻出します。他にもありますが、ひとまずは頻出3種を押さえれば大体の調査はできるようになるはずです。
ちなみに建築基準法で認められない道を不動産業界では「道路」と呼ばず、「認定外道路」や「通路」などと呼ばれます。物件が接する道らしきものが認定外だった場合、接道義務を満たせず物件の価値が激減するため、ほとんどの業者から忌み嫌われます。そして、この接道義務を満たせない物件は業界用語で「再建築不可」略して「再建不(さいけんふ)」といいます。再建不は役所でも聞くことがある用語ですので覚えておくと良いでしょう。
建築基準法による道路の調べ方
少し話がそれてしまうのですが、頻出3種の解説前に「調べたい道路がどれに該当するのか」調べる方法を解説しておきます。ちなみに建築基準法による道路の種類は「道路種別」と呼ぶことが多いので、覚えておきましょう。
建築基準法の範囲ですから多くの場合で建築指導課などの建築に関わる窓口で確認することになります。しかし「道路」や「土木」といったキーワードがついた窓口の場合もあるので、調査先の役所のホームページで事前に確認しておくのがオススメです。電話や総合案内で窓口を尋ねる場合には「建築基準法上の道路について調べたい」が1番無難な聞き方だと思います。「道路種別を確認したい」でもたぶん伝わると思いますが、前者のほうが打率は高そうです。
ちなみに資料名で問い合わせるのはやめたほうがいいです。シンプルに「道路台帳」と呼ぶ役所もあれば「道路種別図」「指定道路図」などなど、資料名がまちまちなので当てるのが難しいですし、「道路台帳」というと道路種別以外の情報をまとめた資料と取り違える可能性があり、違う窓口を案内されるかもしれません。
また、用途地域と同様に資料をオンライン上で公開している役所も増えてきています。「◯◯市 建築基準法 道路」とか「◯◯区 道路種別」といった検索で恐らくヒットするはずですが、用途地域よりもオンラインの普及率は低いので確認のために役所に出向く機会は多いでしょう。
さて、確認先がわかったら資料を閲覧します。名称こそバリエーションがありますが、書式はどこも同じようなものですからそこは安心してください。用途地域図のように地図がベースになっており、道路種別ごとにカラフルに着色されているはずです。サンプル画像として港区の資料をお借りしてみます。
調査対象地を地図上で探し、接している道路が何色なのかを確認します。資料のどこかに「何色がどの種別なのか」を示す「凡例」があるはずですから照らし合わせて確認をしてください。