不動産業界における不動産金融事業の位置づけ

オープンハウスが金融業に参入し、ハウスドゥなどリースバック事業が成長をみせる今日、不動産業と金融業が融合した不動産金融事業が注目されています。

J-REATに代表される不動産の証券化は拡大し、中小の不動産事業者がクラウドファンディングにより不動産投資資金を調達する手法も可能になってきました。

今後の不動産業は「不動産金融」の視点を無視して語ることはできません。

可能性の広がる不動産業界の変化に対し、既存の不動産事業者が志向すべき不動産金融事業について考察します。

不動産金融事業の概要

不動産金融事業は銀行法、金融商品取引法、信託業法、不動産特定共同事業法、投資信託及び投資法人に関する法律、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律など、個別の事業に関する規制と法的有効性にもとづき、さまざまなスキームが形成され現在に至っています。

そもそも不動産事業と金融事業を結びつける概念が生まれたのは、1970年代にはじまったアメリカにおける「住宅ローン債権の証券化」と言われます。

遅れること日本では2001年に「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定し、住宅金融公庫の廃止と証券化支援法人への移行が決定しました。

住宅ローン債権が証券化されると貸し手と借り手が1対1の関係ではなく、金融資産が小口化されると同時にリスクも細分化されて多数の投資家に売却されます。

不動産も同様に「所有権」ではなく、不動産から生まれる収益(キャッシュフロー)が資産化され、小口化とリスク細分化された「証券」として投資家に売却されるようになります。

不動産金融の成長はこのように「証券化」の動きと重なるように進んできました。

一方、日本においては住宅ローン債権の証券化の前に、不動産を証券化させる大きな要因がありました。

バブル経済崩壊後の不良債権処理をスムーズにすすめるため、不動産流動化政策として不動産投資信託市場の創設です。

不動産投資信託市場では投資家から資金を集め、オフィスビルやマンションを購入し、不動産から生まれる家賃収入や売買益を投資家に分配する投資信託事業がはじまります。

これが現在のJ-REATのスタートであり、不動産証券化が本格的にすすむきっかけとなりました。

不動産は所有するものから運用するものへと価値観が変化し、投資家の資金を不動産運用のために活用する仕組みが作られたのも、199年代後半から2000年にかけてです。

「不動産特定共同事業法」が制定されさらに「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」の制定により、不動産証券化が法的根拠を得たわけです。

不動産金融事業のプレーヤー

不動産業は不動産の売買や貸借をおこなうビジネスであり、金融業は資金を保有する側が資金を要する側に融通するビジネスです。

この2つのビジネスを融合させたのが「不動産金融」というビジネスと捉えることができます。

不動産金融の範疇として位置づけられる事業には次のようなものがあります。

1. 不動産証券化事業
2. 不動産投資事業
3. ノンリコースローン事業

そして関連する事業としては「住宅ローン」も広い意味で不動産金融の範疇に入るでしょう。

プレーヤーとしては以下のような業種があげられます。

・銀行
・機関投資家
・個人投資家
・オリジネーター
・アレンジャー
・アセットマネージャー
・プロパティマネージャー
・不動産鑑定士・建築士・弁護士・税理士

不動産金融プレーヤーと不動産業者の関係

不動産金融プレーヤー,不動産業者

不動産金融事業において従来の不動産業者はどのようなポジションに立つのでしょうか?

・オリジネーター
・アレンジャー
・アセットマネージャー
・プロパティマネージャー

これらが不動産業者のこれまでの知見・経験を活かしたプレーヤーとしてのポジションです。

オリジネーター

証券化する不動産などの資産を保有している企業を「オリジネーター」と呼びます。

役割としては原資産を証券として発行する事業体に売却すると終了します。

具体的にはオフィスビルや賃貸マンションのオーナー企業です。

最近の事例では不動産大手のヒューリックなどが出資する特別目的会社(SPC)に本社ビルを売却した電通グループが有名です。

保有資産を売却しリースバックで引き続きテナント企業として入居するケースも多く、商業施設プロジェクトを立ち上げ開発し、完成後にSPCへ売却する開発型証券化においては重要なプレーヤーともなります。

アレンジャー

オリジネーターと投資家の間に立ち、証券化までのプロセスにおいてプロジェクト全般をアレンジする役割です。

大手不動産会社や証券会社、投資銀行などが担うことが多いですが、地方の中小不動産事業者が特別目的会社を設立して、オリジネーターとアレンジャーを兼ねてプロジェクトをリードする事例も見られます。

空き家活用などの小規模なプロジェクトに、クラウドファンディングを活用するプロジェクトなども、アレンジャーとしてのケースに該当します。

アセットマネージャー

証券を発行するSPCはペーパーカンパニーとなるため所有と経営が分離されます。

経営はアセットマネージャーが担うこととなり、投資家にとって収益性の高さを左右するのは、アセットマネージャーの経営能力や手腕にかかっています。

収益性は家賃収入だけではなく「出口戦略」の描き方も大きな要素であり、アセットマネージャーの役割は重要です。

不動産運用に長けた不動産会社や、証券会社系・信託銀行系のアセットマネジメント専門会社が担うことも多くみられます。

プロパティマネージャー

プロパティマネジメントはいわゆる賃貸管理業務にあたりますが、オーナーから依頼を受けておこなう一般の管理委託業務に加え、月次の運営管理レポートは詳細な内容になります。

プロパティマネジメント(PM)会社はアセットマネジメント(AM)会社からの依頼を受けており、AMはSPCよりの依頼であり実質的には多くの投資家たちへの情報公開になります。

上場企業がIR情報を定期的に発行するのと同様の役割があり、その内容には一定レベルの質が要求されます。

不動産金融事業の類型

不動産事業者が不動産金融事業に関りをもつ場合、不動産の証券化スキームにおいて役割を担いますが、証券化手法には以下の3つの類型があります。

・資産流動化型
・資産運用型
・開発型

不良債権処理から派生した資産流動型、不特定多数の投資家たちからの資金を効率よく運用する方法としてはじまった資産運用型、そしてかつてはゴルフ場開発に用いられたような開発型の証券化スキームです。

不動産事業者がこれから取組める可能性がある類型としては、資産運用型と開発型が考えられます。

たとえば立地条件のよい賃貸マンションの再生事業を考えてみます。

空室率が高く経営状態が悪化しており、大規模なリノベーションが必要です。

クラウドファンディングや私募ファンドにより資金を集め当該マンションを買取り、リノベーションによるバリューアップを図り満室経営に転換します。

数年間運用した後に売却しインカムゲインとキャピタルゲインを狙う、このようなビジネスは資産運用型あるいは開発型とも分類される方法です。

空き家活用プロジェクトなども、中小の不動産事業者にとっては取組みやすいジャンルと言えそうです。

開発の種を発見し地域経済の活性化を図る役割は、不動産事業者が担うべきものと考えられます。

まとめ

不動産の証券化は現在オフィスビルやマンション、商業施設などでおこなわれています。

将来的には戸建住宅の長寿命化とあいまって、戸建住宅を所有する投資集団が存在するようになり、住宅の居住者は利用する権利をもつリース方式に変わっていくかもしれません。

すでにリースバックの普及は、そのような変化を予想させるものであり、リースバックされた不動産は買取った不動産会社から、オフバランスされSPCに移転しています。
つまり戸建住宅さえもすでに証券化がすすんでいる証と言えるでしょう。

所有と経営が分離し所有と利用も分離される、新しい不動産活用の姿がはじまろうとしています。

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