親子・親族間売買と一般売買の違い

「初めて親子や親族の間での不動産売買を行うため、一通りの流れや注意点を知っておきたい」そうお考えの皆様に向けてのコラムとなります。

今回は第1回目として、親子・親族間売買と一般売買の違いについて触れていきたいと思います。

親子・親族間売買と一般売買の違い

このようなご相談は今までなかったでしょうか。

「父親が事業の借り入れ金の返済で困っているから、自分が家を買うことでお金をつくって、その返済を負担できないか」「今、両親と一緒に住んでいる家にずっと住み続けたいから、将来兄弟と相続のときに揉めないように、両親から買う形を取っておきたい」「母親の施設の入所資金を賄うために、実家を自分が買うことで、その入所資金を捻出できないでしょうか」

多少形は変えても何十件に1件ぐらいはこのようなご相談があるのではないかと思います。

このような親子や親族での間で不動産売買のことを、不動産業界全体で略して「親子間売買」または「親族間売買」と呼んでおりますが、普通の第三者間での不動産売買と比べて異なる点、多くはその大変さがあります。

その異なる点は次の3つに集約されます。

1) 融資(住宅ローン等)を組むのが大変なこと
2) 税金等を正しく把握しないと後日トラブルになること
3) 親子・親族間の曖昧さを残すとトラブルになること、

この3つと言えます。

1.融資(住宅ローン等)を組むのが大変

融資(住宅ローン等)を組むのが大変なこと、これは仲介をする方は必ず直面する問題になります。

まず普通に金融機関に持ち込んでも「うちでは取扱いません」もしくは「頑張ってみます」と話を引き取った上で1~2日後に「やはりできませんでした」という回答です。これは私どもの会社だけではなく、この親子・親族間売買で融資を取り組んだ方の経験です。

数多くの金融機関では、「親子間や親族間での不動産売買には融資(住宅ローン)を出さない」という原則があります。

この原則がつくられた理由は諸説いろいろと言われていますが、10数年専門的にやってきて数多くの金融機関と付き合ってきた私どもでも「そのような決まりだから」「トラブルが多いから」ある金融機関の役員は「不正の温床だから」このような理由しか直接的には教えてもらえませんでした。

もちろんいろいろお話を伺って「おそらくこれが理由かな」と考えることは多くあります。

その結果分かったのが「親子や親族間売買での融資(住宅ローン等)は純粋に住むためのものではなく、資金使途が不明なお金をつくるためのものだから」ということに行き着きます。

それをどうにか、例外として融資を出してもらうのですから、融資の審査が厳しくなるのは当然と言えます。

また、金融機関の一担当者からも見てください。原則として金融機関として融資をしない仕組みです。そこを上司や本部を説得して融資を許可してもらうのはとても大変なことになります。

大変であっても許可を得られれば良いのですが、許可を得られるかどうかは分からない。大半は無駄な仕事になる。それだったら最初から他の仕事をしていた方が良い、親子親族間売買は見送ろう。そうはならないでしょうか?

したがって、皆様が思っているよりも親子や親族間売買で融資(住宅ローン等)をしてもらうことは、ハードルが高いものと言えます。

ちなみに、親子や親族の間での不動産売買を専門的に扱う弊社では年に約300件ものお話はいただきますが、実際にご依頼までに行き着くのはその1/5程度。少ないときだと1/7程度の年もありました。

そこまで少なくなる理由は、他社に依頼をしたとか、軽い確認だったという数字も含んでいますが、大半は「どう考えても解決できない」ため、「申し訳ありません。弊社での力ではお手伝いができません」とご相談の時点でお断りするしかなかったからです。これが一般の第三者間との不動産売買と大きく異なる点です。

なお、どうしたら融資を出してくれるのか、これについては別のコラムで触れていきたいと思いますので、今しばらくお待ちください。

さて、残り2つにも触れておきます。

2.税金等を正しく把握しないと後日トラブルになる

これも要注意です。

親子や親族間での不動産売買は税金の特例が受けられないことが多いためです。

そのため皆さんのアドバイスが間違ってしまったということがよくあります。例えば住宅ローン控除、これが物件上の適用要件を満たしても、親子・親族間でのローンということで使えないことがあるのです。

ただ、これならまだ皆さんの勉強不足ということで責任の取りようがありますが、何もアドバイスをしていないのに親子親族間売買の事後、多額の税金が発生したことによって、怒っているお客さんから「何できちんと説明をしてくれなかったのか?」と税金のことで問い詰められる方もいます。

先日受けた電話もそのような内容で「税金は不動産仲介の範囲外なのでとお客さんに説明をしてもなかなか納得してくれない、何かいい話し方を教えてもらえないでしょうか?」という相談を受けました。

かなりしつこくお客さんから詰められているようで、誠意が見えなければ法的な手続きもあると言われているようで大変なようでした。このようなことがあるのも、この親子・親族間売買の特異な点と言えます。

3.親子・親族間の曖昧さを残すとトラブルになる

親子や親族間の特有な現象で売買価格や、その手続きに曖昧さを残したがるということがあります。

売買価格は税金の観点から時価となりますが、「時価が3,000万円だと息子にとって高いので私は手元に1,000万円あれば良いからそうしてくれ」とお父様から依頼をされることがありました。

これは時価の観点から言ってそのままだとアウトなのですが、もう1つ、相続時の対応や親族間の感情面においてもできない可能性が高いのです。

特にお話を進めている最中にもよく起きます。

具体的に何かというと、売る側の相続人から「あの金額は安すぎないか」という横やりが入るのです。

父親から息子が買うとしたら、その息子の兄弟や姉妹からクレームが入るのです。確かに兄妹や姉妹から見れば将来の取り分が減るのだから当然です。

そこで話がストップする、このようなことがよくあるのです。

この話以外にもこういった感情面の問題はよくあります。

「妻から、あなたの兄妹からいろいろ言われるので辞めて欲しい」「将来、娘が結婚をしたときにこの負債を背負わせたくない」

など、様々なことがあるのです。

こういった親子・親族間の曖昧さを残さないように準備に時間と、場合によって経費をかけることが一般の第三者間との不動産売買と異なる点です。

以上、主な3点に絞って、親子・親族間売買と一般売買の違いについて触れてみました。

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