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欧米と日本の中古住宅流通の違いを学ぼう

今回のテーマは「日本と欧米のインスペクションを取り巻く状況の違いについて」です。

平成30年4月1日から既存住宅の取引において、建物状況調査のあっせん有無の記載が義務づけられました。しかし、実際には建物状況調査の活用はそれほど増えていない状況です。

建物状況調査を行っている事業者に対して半年後に行われたアンケート調査によると、「まだ建物状況調査の制度が認知されていない」という回答が76.7%を占めています。また取引にかかわる宅建業者と売主、買主が消極的だという意見や、宅建業法上の建物状況調査と他のインスペクションとの区別がわかりにくいという点も課題となっています。たしかに建物状況調査をインスペクションと呼ぶ場合もありますので、一般の人には判別がつきにくいですね。

もしかしたら、きちんと区別ができていない方もいるかもしれないので簡単に整理します。

建物状況調査=国土交通省の定めた制度(調査項目は統一されている)
※実務上はインスペクションと呼ぶことも多い
インスペクション=建物を調べること(調査項目は事業者によって異なる)
よって「建物状況調査≠インスペクション」となる場合もある点に注意してください。

日米英の中古住宅流通市場比較

平成25年の資料で少し古いのですが、わかりやすくまとまっているのでご紹介します。

(出典)国土交通省の中古住宅の流通促進・活用に関する研究会の報告書資料
http://www.mlit.go.jp/common/001002572.pdf

それぞれの特徴を簡単にまとめます。

・建物検査をする人の名称の違い

日本 インスペクター
アメリカ ホームインスペクター
イギリス ビルディングサーベーヤー

名称は国によって異なりますが、建物を調べるというという役割は同じです。調べる項目は各国で違いがあるようです。

・両手仲介の有無

日本 両手仲介・片手仲介
アメリカ 両手仲介は原則禁止
イギリス 両手仲介・片手仲介

アメリカでは両手仲介が原則禁止。買主は仲介手数料を支払いません。

売主が仲介手数料を全額負担するケースが多くなっているようです。各州法のガイドラインにもよりますが約6%前後。この売主が支払った6%の仲介手数料から、買主側の不動産業者に半分の3%を支払うという仕組みです。

最近日本では「両手仲介=悪」という風潮が見られますが、正しくは「物件の囲い込み」という行為が問題だと思います。

・インスペクションの依頼者

日本 売主または買主
アメリカ 買主
イギリス 買主

アメリカ、イギリスの場合、インスペクションを依頼するのは、あくまで買主です。

なぜかというと、瑕疵担保責任の有無にかかわってくるからです。

・瑕疵担保責任

日本 瑕疵担保責任あり
アメリカ 買主責任主義で瑕疵担保責任なし
イギリス 買主責任主義で瑕疵担保責任なし

アメリカとイギリスでは瑕疵担保責任がないので、買主側としてリスクヘッジをするためにインスペクションを行うのです。

対して、日本では「万が一瑕疵が見つかっても、一定期間は売主に請求できる」という瑕疵担保責任があります。実際には、瑕疵担保責任を売主に請求するのは容易じゃないのですが・・・。だからこそ、インスペクションが重要なのです。

・売主からの開示情報

日本 売主の協力が得られるときは告知書を提出(物件状況等報告書)
アメリカ 売買時には売主の居住用不動産に関する情報開示義務が定められている
イギリス 売主はソリシター(事務弁護士)からの物件に関する質問に回答義務がある

アメリカの情報開示内容としては、物件価格や広さ、写真だけでなく登記情報や修繕、売買履歴(過去の価格データ)、災害リスクや税務情報があるそうです。

この情報データベースは全米リアルター協会が管理するMLS(Multiple Listing Service)に、24時間以内に入手した不動産情報の登録義務があり、違反者には罰則規定もあります。日本の中古住宅の取引時に開示される情報と比べると、雲泥の差です。

とくに売買履歴などの価格データを知らずに取引するのが一般的でしょう。アメリカのように物件に関する情報が整備されてくれば、日本の不動産取引のあり方も変わってくるかもしれません。重要事項説明での浸水説明義務化の動きもその一つです。

建物検査(インスペクション)の実施状況

日本 中古住宅購入経験者のうち1割未満
アメリカ 買主の約8割が実施(買主の費用負担)
イギリス 買主の約8割が実施(買主の費用負担)

日本でインスペクションを行う人の割合は今後増えていく可能性はありますが、まだまだ少ないのが現状だと思います。

インスペクションによって、どんなメリットがあるのかが認識していない人も多いです。そもそも宅建業者でインスペクションを活用した経験がない人が大半ではないでしょうか。

評価方法

日本 土地と建物を別々の不動産として扱う
(土地は取引事例比較法、建物は原価法で評価)
アメリカ 建物と土地は一体として扱う
(取引事例比較法で評価)
イギリス 建物と土地は一体として扱う
(取引事例比較法で評価)

土地と建物を別々に評価するのは日本特有の考え方。日本の建物は税法上の耐用年数22年であるから、年々減価していき最終的にゼロになる。実際の取引でも築30年位の木造住宅となれば古家付土地として解体費用分だけ評価が下がることも珍しくありません。

対してアメリカでは、実際の築年数は査定上考慮に入れておらず、建物の劣化や維持修繕の状況にもとづいて鑑定士の判断で決められているそうです。
(出典)国土交通省の中古住宅の流通促進・活用に関する研究会の報告書資料
http://www.mlit.go.jp/common/001002572.pdf

(出典)国土交通省の中古住宅の流通促進・活用に関する研究会の報告書資料
http://www.mlit.go.jp/common/001002572.pdf

その結果、アメリカと日本の住宅投資額累計と住宅資産額は上記のようなグラフになってしまうわけです。

アメリカはどんどん住宅ストックの資産額が増えていくのに、日本はほとんど増えていかない。要するに日本では「建物は消費されるもの」、その消費された分は建物を所有する国民の財布から消えていく・・・悲しいですね。

■建物の価値を維持するためにはインスペクションが必要

いかがでしたか。なんとなく「アメリカではインスペクションが常識になっている」と聞いたことはあっても、具体的に日本とどんな違いがあるのかまでは知らなかったという方もいるのではないでしょうか。

機会があればお客様との会話の中で、日本と欧米の不動産取引の違いを説明した上で、あなた自身の意見を伝えてみてください。お客様からは、一般的な不動産取引しか知らない担当者よりも、「不動産の取引に詳しいプロ」としてみられやすくなると思います。

お客様の信頼を得るポイント

欧米と日本の不動産取引の違いをお客様に説明できるようになる

日本の不動産取引の仕組みを把握した上で、今後の日本の不動産市場をどのように発展させていけるのかは、国の政策も大事ですが、なによりも実際に不動産取引を行うプレイヤーのあなた次第だと思います。

目の前のお客様にどのように説明をするのかで、売主さん、買主さんの考え方は変わってきます。「インスペクションはやらないほうがいいですよ」と、消極的な姿勢をとるのか、
「建物の評価をきちんとするためにインスペクションを活用しましょう」とアドバイスをするのか、選ぶのはあなたです。

私は建築士が行うインスペクションと、独自の簡易インスペクションを活用し専任媒介を取得する仕組みづくりをしました。そのおかげで、クライアントの不動産仲介会社では専任媒介の取得確率を高めています。

まだまだインスペクションを活用できる方法はたくさんあると感じています。ぜひあなたもインスペクションを活用して、取引機会を獲得できる方法を考えてみてください。

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