不動産業者同士は、「ライバル」とは限りません。
ときに業務提携し、紹介し、紹介されることもあるはずです。
とくに、「仲介業者と買取業者」「仲介業者とインスペクション業者」など異業種間の繋がりは、withコロナの世ではより重要になってくるでしょう。
業務提携によって広がる顧客の幅
不動産業者同士、とくに自社がやっていないサービスを提供している業者同士の繋がりは、自社にとって大きなメリットがあります。
自社の事業として行うにはお金も時間もかかる
不動産業者同士の業務提携は、単に「紹介料がもらえる」というメリットだけではありません。
たとえば、「しばらく売れないから業者買取に切り替えたい」というお客様に対し、自社で買取をしていなくても、提携先を紹介すれば「では、他の業者行ってください」と言わなくてすみますよね。
自社で買取業務も行おうとすれば、資金面、システム面の準備が必要です。
しかし、自社で行えない業務を信頼できる他社に紹介できれば、顧客を逃す可能性がグッと下がります。
顧客からすれば“ワンストップ”のサービス
さらに、「もし売れなかった場合に買取業者に繋いでくれる」ということは、顧客の“安心”にも繋がるでしょう。
買取業者に繋ぐシステムが構築できれば、売却保証や買取保証の対応も可能となり、住み替え希望者など今までターゲットになりにくかった顧客も取り込めます。
業務提携だとしても、顧客からすれば、それは“ワンストップ”のサービス。
自社の顧客層を広げるためには、業者同士の「横」の繋がりによって「できることを増やす」ことが重要だといえるのです。
では、「買取業者」以外に、これからの時代には、どんな事業者と繋がるべきなのでしょうか?
withコロナでは「リースバック」「任売」の需要拡大か
コロナの影響により、収入が減少する人・資金難の人が急増しています。
引用:2020/6/2日経新聞
収入が減少する人の増加で増えるのは、住宅ローンが払えない人。
現に、コロナ禍では、「住宅ローンが払えない!」という相談が住宅支援機構で倍増したようです。
住宅ローンが払えない人はこれから本格的に増えていくと見られ、「資金難からの不動産売却」という選択をする人も一定数増えていくと考えられます。
「売りたくても売れない」ときの任意売却
ご存じの通り、不動産は基本的に住宅ローンを完済しないことには売れません。
しかし、郊外を中心に不動産価格が下がり始めており、「住宅ローン残債>売却価格」となってしまう物件は今後増加していくことでしょう。
引用:2020/6/30日経新聞
日経新聞が報じているように、「住宅ローン残債>売却金額」となってしまう可能性が高いとみられるのは、郊外の住宅を購入した若年層。購入間もない住宅はとくに、オーバーローン状態に陥りやすいものです。
オーバーローンだとしても売却せざるをえない状況になってしまった人が選択するのは、「任意売却」です。
(こちらは別の記事『コロナショックから始める任意売却と不動産買取』でも説明しています。)
しかし、これまで任意売却をしてこなかった業者が、すぐに任意売却に対応するのも難しいものでしょう。そこで、業務提携です。
任意売却は、一般的な仲介業者が行うことがありますが、やはり法的な知識を伴うものなので法律事務所が主導となって行うケースもあります。
よって、任意売却の対応をするために繋がるべきは、任売可能な不動産業者のみならず、「弁護士」や「任意売却専門業者」も選択肢の1つです。
弁護士や任売専門業者は、“顧客獲得”を課題としていますから、Win‐Winの関係が築きやすいものです。
さらに、不動産業者では顧客を“紹介”するだけに留まるでしょうが、弁護士事務所なら、任意売却における“売却活動”に関しては任せてもらえる可能性があります。
「売っても住みたい」ときのリースバック
任意売却とともに、「リースバック」についてもコロナの影響で今後需要が拡大すると見られています。
リースバックは、売却後の賃貸契約によって、売ってからも住み続けられるという仕組みです。
「売っても住みたい」人にとっては便利なシステムですが、賃貸契約の期間が長期を及ぶと、逆に損してしまうこともあるのが1つのデメリットだといえます。
コロナ禍では、「急激に」「一時的(と考えられる)に」収入が減少してしまう人が増える見込みです。
こういった人の中の一定数は、「転居したくないけど、仕方なく不動産を売却せざるを得ない」状況に陥るでしょう。
そこが、リースバックの仕組みと合致すると考えられるのです。
リースバックを扱う業者は、コロナ禍から増加しています。
ただやはり、任意売却同様、事業として始めるのは準備が必要です。
つまり、リースバックについても、今後の需要拡大を見据え、扱っている企業と繋がっておくといいと考えられるのです。
既存住宅の「価値」が見直されつつある
不況の折には、価格が高い新築物件より、中古物件の需要が大きくなるものです。
(出典:国土交通省)
そもそもコロナ前にも、中古住宅の需要は長期的に上昇傾向にありました。
とくに2017年から2018年にかけては、既存住宅流通シェアが1.1倍近く上昇しています。
その背景には、市場ニーズの変化のみならず、国をあげて「リフォーム」と「インスペクション」の促進を図っていることもあるでしょう。
リフォーム需要はコロナ禍でも堅い
既存住宅流通に不可欠なのは、中古住宅の価値を維持・向上させることです。
近年ではとくに、「中古物件+リフォーム」がマイホームの1つの選択肢となっているといえます。
その要因は、リフォームへの融資が柔軟になったことや、リフォーム補助金制度の導入などが考えられます。
コロナ禍においても、リフォーム市場は底堅い需要があったようです。
withコロナ時代でもまた、不況による中古住宅のシェア拡大や“stay home”の風潮の継続により、一定のリフォーム需要が見込めるでしょう。
リフォームは、住宅購入と同時に行う方も多いため、仲介業者がリフォーム業者と繋がるメリットは、今後ますます大きくなると考えられるのです。
瑕疵担保責任が契約不適合責任になって「インスペクション」の需要が増える
既存住宅の価値を“高める”のみならず、“知る”需要についても、今後さらに増加していくでしょう。つまりは、住宅診断=インスペクションですね。
インスペクションは、2018年の改正宅建業法によって不動産業者に説明が義務付けられましたが、2020年4月の改正民法によってさらにその重要性が増したといえます。
(こちらは別の記事『【民法改正】瑕疵担保責任とは?契約不適合責任になって変わること』でも説明しています。)
2020年4月の改正民法によって売買仲介の現場で大きく変わるのは、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」なったこと。
このことによっても、今後ますますインスペクションの需要が拡大すると考えられます。
というのも、契約不適合責任に変わったことにより、買主はこれまで以上に、契約前の物件の状態と契約書の内容の“把握”が求められるようになったからです。
契約不適合責任における売主の責任範囲は、契約書と物件とで適合していない部分。
従来までは「隠れた瑕疵」という曖昧な表現だったものが、揺るがない“事実”に変わったわけですね。
買主は、従来にも増して、事実の1つである「物件の状態」のチェックを慎重に行うことでしょう。
そのため、インスペクション済物件の需要が拡大するとともに、買主からの実施の要望も増えることが予想されます。
インスペクション業者とはすでに提携済みという業者さんも多いでしょうが、多様性を持たせることを考えてみてもいいでしょう。
要は、顧客に複数の選択肢を与えられるだけの業者と提携するということ。
そもそもインスペクションは、「第三者」というところが一種の“売り”なわけです。
複数提示してインスペクション業者を選んでもらうことができれば、顧客により安心感を与えられることでしょう。
まとめ
これからの時代は、ますます不動産業者同士が「横」で繋がる重要性が増していくはずです。
不動産業界の繋がりは、まだまだオフラインが主流。
また、コロナによって希薄になっている側面もあるでしょう。
ただ、こんな時代だからこそ「人と人との繋がり」「業者間の繋がり」の必要性を再認識し、今後の業界での歩み方を模索してみてはいかがでしょうか。