2019年4月に発表された「平成30年住宅・土地統計調査」において、全国の空き家は846万戸あり空き家率は13.6%という結果でした。
5年前の調査から0.1%増加と、予測より増加幅はわずかでしたが過去最高の割合になっています。
空き家を所有する人にとっては大きな悩みになることもありますが、資源と捉えることも可能であり、賃貸管理会社だからできる空き家の有効活用方法もありそうです。
具体的に考えられる活用方法について、成功するポイントを探ってみます。
空き家管理受託が入口
管理会社が空き家活用を事業として考える場合、まず必要なことは所有者から「空き家管理の委託」を受けることです。
「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」が2014年に制定され、空き家などの所有者に対する管理責任を明確に規定し、空き家の適切な管理を義務づけしました。
空き家の所有者は、法律が定める「特定空家等」に認定されることのないよう、定期的な点検をおこない維持管理に務めなければなりません。
遠隔地に空き家を所有する場合は、自ら管理をおこなうことがむずかしく、空き家管理を依頼できるサービスをはじめる事業者も増加しました。
空き家管理業務の具体的な内容は次のようなものです。
・建物周囲のゴミや不法投棄物の確認と処分
・庭の落ち葉や周囲への散乱と庭木のはみだし状態を確認
・室内の通風や換気と通水点検および雨漏り確認
・郵便受けの投函物回収
・不法侵入の有無を確認
管理会社が通常おこなっている空室管理に近い業務であり、このような管理業務の受託により「空き家ビジネス」のキッカケを作りだします。
特定空家等に認定されると
「特定空家等」に認定されると、所有者にはどのような義務や責任が生まれるのでしょう。
まず「特定空家等」に該当するかどうかの調査が市町村によりおこなわれます。
そのうえで特定空家等に対して市町村は、次の措置の助言や指導をすることができます。
2. 倒壊の恐れや保安上危険な状態といえない場合は修繕して適切な状態を保つ
3. 越境している立ち木や竹などを伐採
4. その他周辺の生活環境を守れるような措置
これらの措置について助言や指導を受けた所有者が、改善しようとしない場合は市町村から勧告を受けます。
さらに勧告にも従わない場合は命令を受けるようになります。
命令を受けても所有者が従わない場合には、所定の手続きを経たあと市町村は強制的に措置を実行することができます。
またその措置に要した費用について請求を受けることは当然です。
このようにきわめて強い権限によって、空き家の対策を可能にしたのが「空家等対策特別措置法」です。
さらに市町村は特定空家等に対する「住宅用地の特例」を除外することも可能になっており、具体的には固定資産税の軽減措置が受けられなくなります。
空き家管理を含めた空き家活用術
空き家とひと口にいってもさまざまな状態の空き家があります。
ケース別に空き家活用方法をみていきましょう。
季節により空き家になるセカンドハウス
別荘やセカンドハウスは一年をとおして居住することがなく、空き家状態になっている期間があります。
そこで使用しない期間をマンスリー賃貸物件として活用する方法です。
セカンドハウスといっても別荘地だけの物件ではありません、最近はデュアルライフ(二拠点生活)の人も増えており、大都市圏とその周辺都市にはそのような物件があると考えられます。
頻繁に行き来していた二拠点の片方が、事情によりしばらく利用することがなくなったという場合、居住しなければ建物の傷みはすすみ、維持保全状態が低下する可能性もあります。
そのようにして生まれる空き家は、ある程度の規模の地方都市であればマンスリー賃貸の需要が見込め、家具家電付きの物件として有効活用できるでしょう。
立地条件によっては「民泊」としての活用方法も考えられます。人気の高い観光地における民泊需要は高いものがあります。
最近は「ワーケーション」という働き方も注目されるようなりました。
空き家のなかにはワーケーションに適した物件もあることでしょう。
利用予定のない留守宅
故郷にある実家を相続し家財道具はそのままで、倉庫代わりなっている空き家など、利用予定のない物件もあります。
その場合でも、いつかは故郷に戻り再利用を考える方もいるでしょう。
法人契約による社宅用であれば、数年後には転勤により退去時期が必ずきます。
定期借家契約でもよいし、普通賃貸借契約であっても、将来の再利用予定に合わせた活用方法が考えられます。
ポイントは再利用の計画がもちあがる頃と、退去のタイミングが合わせられるかです。
・入居中に退職した場合は入居資格を失う
・全国規模の企業や公務員など限定
このような募集条件であれば可能なことと考えられます。
所有者の事情によっては物件売却の可能性があり、宅建業を兼務する管理会社ならば、媒介業務の機会を得ることも可能です。
売却後はオーナーチェンジにより、ひきつづき管理物件として継続できる余地も残っています。
改修費用の出せない築古物件
築古物件でかなりのリフォームが必要な物件、所有者は資金負担をしてまで貸したくないというケースです。
立地条件がよく需要が見込める場合にはサブリースを前提に賃借し、リフォームをして賃貸物件にする方法です。
所有者とのマスターリース契約は、現状の物件を前提に借りるのでかなり割安な賃料となるでしょう。
転借人への賃料設定は、リフォーム費用の回収と残存耐用年数を考慮して決定することは言うまでもありません。
築古住宅はもうひとつ方法があります。カスタマイズ向けの物件とする方法です。
リフォーム費用は入居者負担とし、退去時の原状回復は免除します。
立地条件や物件そのものの魅力によって、需要が見込める物件があるでしょう。
商店街の活性化を図るまちづくり
シャッターの降りた商店街を活性化するプロジェクトに係るのも意義のある仕事です。
廃れた商店街では空き店舗の新規出店が少なく、ますます「シャッター街」増加に拍車をかけています。
商店街の活性化は地方自治体も頭を悩ませる問題ですが、行政だけの力では解決できる問題ではなく、地域の人的ネットワークに根差したさまざまな取り組みが必要です。
商店街組合や自治体も係わり、国の補助金を活用するなどの活性化事業が各地でおこなわれています。
なかにはタウンマネージャー・建築家・コンサルタントなどとの連携による取組みもみられます。
賃貸管理の立場からサジェストできることも多々あり、積極的な係わりを持つべきではないかと考えます。
空き家活用の提案にさいしては、決断をオーナーに委ねることがほとんどですが、管理会社がある程度のリスクを取ってオーナーを牽引することも必要です。
商店街活性化においても同様で、賃貸管理や不動産仲介の専門家として、空き店舗情報の発信機能や賃貸条件の調整機能など、担える職能をフルに発揮して “まちづくり” に貢献できる機会が多くあるのではないでしょうか。
まとめ
空き家活用として考えられる具体策について例示してみました。
空き家はひとつとして同じ条件のものはなく、それぞれで活用までにクリアしなければならない要素はたくさんあると思います。
管理会社のルーティンワークとしては位置づけられないテーマかもしれませんが、需要を掘り起こし資源の活用を図る視点は、これからの管理会社には必要なことといえるでしょう。
また、最後に触れた「商店街の活性化」については、地域密着型の管理会社にとって、ネットワーク形成に格好のテーマといえるのです。