賃貸借契約の締結時、保証会社を付けて契約するケースが増えています。
平成22年には39%程度の利用率でしたが平成26年には56%と、賃貸借契約の半数以上は既に賃貸保証会社を利用しているのです。
中にはグループで賃貸保証事業を行い、活用しているケースも見受けられます。
では、賃貸保証会社とはどのような役割を担っているのでしょうか?本記事では、保証会社の比較や活用方法などを詳しく解説していきます。
賃貸保証会社の役割
賃貸保証会社の役割とは、賃貸人に家賃収入が安定的に入り、滞納のリスクを無くすことです。
賃貸経営におけるリスクのひとつに家賃の滞納があります。
賃借人が家賃を長期間滞納してしまい、明け渡し訴訟にまで発展してしまった場合、滞納家賃に合わせて訴訟費用まで負担しなければいけません。
一般的に賃貸借契約は、連帯保証人を付けて契約します。
しかし、家賃の滞納が続くと「連帯保証人も滞納家賃を払わない」といったケースも多く、家賃滞納は賃貸経営を行う上で大きなリスクとなっていました。
そこで、賃貸保証会社が台頭してきたのです。
賃貸借契約を交わすときに、保証会社と賃借人が保証契約を交わすと、家賃の滞納があった場合、賃貸人には保証会社から家賃が支払われます。
また、管理会社が代理契約しているケースでは、滞納した家賃は管理会社に入金されるといった流れになっています。
ちなみに、何度も滞納が続くような場合は、保証会社の費用で明け渡し訴訟を行い退去してもらいます。
こういった保証会社の普及により、家賃の滞納があったとしても、賃貸人には大きな影響がなく、入居中に家賃収入がないといった事態がほとんどなくなりました。
賃貸保証会社の種類と特徴
保証会社は、基本的には家賃の保証を行うといった点では共通の事業ですが、保証の範囲や保証料などが保証会社によって異なります。
家賃だけではなく共益費や駐車場まで保証するケースもあれば、家賃のみということもあるのです。
そして近年では保証会社の利用率が高まっていることから、多くの賃貸保証会社が起業していますので、保証会社ごとの特徴をしっかりと把握することが重要です。
場合によっては、複数の賃貸保証会社を使い分けて利用するケースも考えられます。
デメリットとしてオペレーションが複雑化することが挙げられますが、保証会社の働きが満足できないときの切り替えや、倒産してしまった場合などのリスク対策、審査傾向の違いによる使い分けなど、様々なメリットが得られますので、複数社の利用も視野に入れ検討すると良いでしょう。
大手保証会社5社の比較
賃貸保証会社は、国土交通省が平成28年10月に発表した「家賃債務の現状」によると全国で約135社。
10人未満の社員数で業務を行っている小規模の会社もあれば、300人超の会社もあり、事業規模は異なります。
賃貸保証会社大手5社(2019年売上高上位5社)の比較をしてみましょう。
日本セーフティー株式会社 | 全保連株式会社 | 日本賃貸保証株式会社(JID) | 株式会社Casa | 株式会社オリコフォレントインシュア | |
保証上限 | 24ヶ月 | 24ヶ月 | 賃料等24ヶ月分相当以上 | 24ヶ月 | 48ヶ月 |
法的手続費用 | 有 | 有 | 有(※保証上限とは別枠で保証) | 有 | 有 |
残置物撤去 | 有 | 有 | 有(※保証上限とは別枠で保証) | 無 | 有 |
特徴 | 年間売上100億円超の規模 | 年間30万件以上の申込件数 | 賃貸保証のパイオニア | 東証二部上場企業 | オリコグループの実績十分 |
大手5社だけでも保証内容にそれぞれ違いがありますので、十分理解してどの会社を選ぶのかを決めておきましょう。
保証上限というのは、最大何か月分までの家賃保証が可能なのかという項目です。
4社が24ヶ月に対して、株式会社オリコフォレントインシュアは48ヶ月と他の賃貸保証会社の2倍の保証上限で大きな開きがあります。
法的手続費用とは、明け渡し訴訟があった場合の法的費用を保証するかどうかという点です。
法的手続費用についてはどの保証会社も負担するので、大きな違いはありません。
残置物撤去とは、明け渡しを行ったときに残置物があった場合の撤去費用を保証するのかといった点ですが、株式会社Casa以外は全て負担します。
保証料や更新料は、賃貸保証会社ごとにいろいろなプランがあるので、賃借人の状況によって異なります。
このように大手5社でも、保証の上限などの保証内容に違いがあります。
自分の管理会社が利用する保証会社についてはしっかりと把握しておくべきでしょう。
活用方法と選び方
賃貸保証会社にはどのような活用方法があるのでしょうか?
・連帯保証人を付保することにより、トラブル防止策として活用する。
・連帯保証人を付保せずに、入居促進手段のひとつとして利用する。
など、いくつかの活用方法が考えられます。
また、自社の求める活用方法から、どの賃貸保証会社が適しているのかを選ぶことも可能です。
例えば、安心感を求めたいのであれば保証の上限が多い賃貸保証会社を選んだり、入居促進の場合は、手数料や更新料の安い会社を選んだり、といった選び方になります。
備えておきたい賃貸保証会社の倒産
賃貸保証会社を選ぶときに最も重視しなければいけないのはどのような点でしょうか?
それは、「倒産リスクの低さ」、つまり経営基盤が安定していることです。
というのも、過去に賃貸保証会社の倒産により、管理会社や賃貸人が混乱したケースがあります。
賃貸保証会社が倒産してしまうと保証契約が消滅してしまうので、保証が受けられなくなってしまうのです。
連帯保証人を付けていない場合などは、保証会社が倒産してしまうと家賃の滞納があったとしても請求できるのが賃借人のみとなってしまい大きなリスクを負うことになります。
賃貸保証会社の倒産は過去に何度かあり、2008年には負債総額325億円という大きな倒産があり、送金遅延などのトラブルが起こりました。
このようなことがないように、資金力や事業内容が安定した会社を選ぶことをおすすめします。
まとめ
賃貸保証会社は、近年多くの賃貸借契約で利用されており、これからも賃貸保証会社をセットとした契約が中心となっていくといえるでしょう。
しかし、連帯保証人を付けずに保証会社のみを利用した賃貸借契約を行っている場合、保証会社の倒産リスクは頭に入れておかなければいけません。
保証会社が倒産してしまうと、保証契約が消滅し、賃借人と賃貸人だけの賃貸借契約が継続する管理面でのリスクが現れます。
資金力がしっかりした賃貸保証会社を選ぶことが必須です。
また、それぞれの保証会社によって特徴があるので、状況に合わせて使い分けることもできます。保証会社ごとの特徴は日頃からきちんと把握しておくようにしましょう。