賃貸管理は物件所有者の指示にしたがい、物件管理と入居者管理をおこなうことが主要な業務になっています。
管理委託契約書においては次のように業務の内容を規定しています。
・共用部分や屋外などの清掃業務
・建物や設備の維持点検などの管理業務
・特約業務
しかし実際の賃貸管理の現場において管理会社に求められる能力は、収益性を高める運営力といっていいでしょう。
不動産投資家と同等な視点に立ち、現状を把握し改善点をみつけだす能力を持つ、ビジネスパートナーといえる賃貸管理会社のあり方を考えます。
賃貸管理業界は二極化しPM指向がなければ生き残れない
これからの賃貸管理業においては、プロパティマネジメント(PM)の考え方にもとづく賃貸管理の必要性が大きくなってきます。
不動産投資家をはじめ賃貸物件オーナーは、安定した収益を継続する目的で、賃貸管理を委託するケースが増加すると考えられるからです。
人口減社会となった日本では現在、賃貸経営環境にとって悪い材料が増加しています。
・賃貸空室率の増加
・給与水準の低下
・高齢世帯の増加
需要の減少は競合物件との競争激化を招き、収益の安定性を見込むことはむずかしく、 “空室対策” を超えた積極的な収益性向上の戦略が求められるようになりました。
すでに大手賃貸管理会社はプロパティマネジメント(PM)を前面に出し、賃貸住宅オーナー開拓を展開していることはよく知られていることです。プロパティマネジメントの典型的な手法が「サブリース」です。
将来の賃料下落のリスクがあるとはいえ、サブリースがもつ “安定性” は、大きな魅力としてオーナーの目に映ることに変わりはありません。
「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の施行により、不当なサブリース契約の防止が図られるようになると、サブリースへの期待感は高まるとも考えられるのです。
管理戸数の少ない管理会社がサブリース事業に進出することは勧められませんが、プロパティマネジメントにもとづいた賃貸管理手法の導入は必要なことです。
賃貸業界の現状
賃貸管理会社は管理戸数1,000戸を超えるグループと、それ以下のグループとに二極化しています。
下のグラフは賃貸不動産経営管理士協議会の調査による、管理業者数を管理戸数別の分布です。
管理戸数1,000戸を超えるグループは1割ほどであり、残り9割の業者は1,000戸未満の管理戸数となっています。さらに100戸未満が6割を占める状態です。
次のグラフは管理戸数を同じく管理戸数別の業者グループに分けて分布をみたものです。
管理戸数1,000戸を超えるグループが占める管理戸数の割合は9割、残り1割を1,000戸未満の業者が管理している実態をみることができます。
つまり賃貸管理をおこなう事業者の1割が、賃貸物件の9割を管理しているのが現状です。
そして管理戸数の3割はサブリースであり、管理戸数の多い大手ほどプロパティマネジメントを導入しているのです。
そもそもプロパティマネジメントとは何か?
管理会社が変更される・・・・・・管理会社にとって有り難くない話ですが、すくないケースではありません。
オーナーが管理会社を変更する理由として、次のようなことが考えられます。
2. 対応が遅く入居者の満足度が低い
3. 清掃や定期報告など仕事の質が悪い
これらのことももちろん大きな理由ですが、もっとも大きな理由が「空室が埋まらない!」ことと考えられます。
空室を埋められない理由にはいろいろありますが、オーナーの空室対策に対する意識と、管理会社が捉えている空室対策に対する意識にギャップがある可能性があります。
つまりオーナーはプロパティマネジメントのひとつの大きな要素として空室対策を考えますが、管理会社は空室対策を媒介業務の一部と捉え、賃貸管理の重要業務と意識していない可能性です。
プロパティマネジメントは「賃貸運営管理」と表記し、賃貸管理とは区別する概念です。
では、「賃貸運営管理」とは何か?・・・・・・との問いに簡潔に答えると、前述したようにサブリースが典型的な形態といえます。
オーナーに代わり賃貸物件をトータルで管理しながら、オーナーが期待する収益性を確保することです。
しかし、サブリースには毎月の収入とオーナーへの保証賃料に逆ザヤが生まれた場合、管理会社に資金負担が生じるリスクがあります。
そのため、財務体質がぜい弱な小規模事業者では無理があるのです。
プロパティマネジメントはサブリースに限定するものではありません。
たとえば以下のような手法を考えてみましょう。
・需要を掘り起こすリフォーム
・効果的な集客方法と仲介ネットワークの構築
・賃貸保証会社の有効活用
・継続的な競合分析によるデータ管理
・市場にマッチした物件プロデュース
このような小規模事業者にも可能な手法は、プロパティマネジメントのひとつといえるでしょう。
弱小賃貸管理会社が生き残る道
小規模な賃貸管理会社が生き残るには、オーナーから指示されることだけをおこなうのではなく、数ヵ月後、1年後、2年後を見通した物件ごとの運営方針をオーナーに提案することが大切です。
仮に現在満室であっても数年後には必ず空室が生まれます。
2. リフォーム計画にもとづいた再投資計画を策定
3. 市場分析や競合分析にもとづいた退去後の家賃設定案を定期的に提案
4. 仲介会社からの情報収集を積極的におこない最新ニーズを常に把握する
5. 年間収支計画をオーナーと共有し実績を検証する
任せきりにされるのではなく、定期的にオーナーとの意見交換をとおして、事業目標を共有する姿勢が大切です。
賃貸管理はルーティン化された業務が多く、気づかぬうちにマンネリになっていることがあります。
特に安定した入居状況のある物件では変化が乏しく、経営状態をチェックし見直す機会はまったくないといえます。
しかしそのような物件において、退去が立てつづけに生じることがないとはいい切れません。
特定の業種や事業体の関係者が入居する物件では、突然入居率が50%を切ることもあります。
そのような急変がおきても準備ができていると、次の入居者募集戦略は容易に立てられるものです。
賃貸管理業はストックビジネスとして、厳しい経済環境にあっては注目される分野です。
競合相手の管理会社が、オーナーに接触し管理会社変更の機会を覗うこともあり得ることです。
これまでの自社の姿をふり返り、プロパティマネジメント的な視点があったかどうか、検証してみることが大切です。
まとめ
賃貸管理は受け身の仕事になりがちです。入居者・入居希望者の対応に追われ、賃貸借契約書を合間に作成し、契約業務と退去立会が繰返される日々が管理業務です。
多忙ななかで見落としがちな “オーナーの視点” 。
日常的に接する機会のすくないオーナーですが、管理業務の依頼者はオーナーであり、仕事への評価を下すのもオーナーです。
プロパティマネジメントはけしてむずかしいことではありません。
自身がオーナーになったつもりで、すべてを考えることが重要です。