新居を選ぶため複数の物件を内覧するのは、賃貸住宅で必ずおこなわれることです。
最近は現地にいかず確認できる方法もありますが、最終的に物件を決断するときには現地で確認するのがほとんどです。
内覧による成約率アップに効果がある、といわれるのが物件内に準備する各種アイテムです。
ここではアイテムのチョイスや演出などにより、成約率があがる効果を分析し、賃貸管理のノウハウづくりを考えていきます。
入居を決めるタイミング
複数の物件を内覧したお客さまが「よし! この物件にしよう! 」と決断する瞬間があります。
・居住性
・家賃
などいくつかの要素を判断し決断するのですが、家賃や立地条件など “数値” で評価できるものは、事前に判断しています。
現地を確認し決断をあと押しするのは “心理的” なものです。
つまり、この部屋に住んだ場合の自分自身を想像し、ここでよいかどうかを確認しています。
内覧アイテムによる演出は、お客さまの想像を豊かにする効果が考えられ、入居決定率を高める方法といえるのです。
ネット上にはたくさんの事例が紹介されています。
・ピクチャーレールがついているのでクリムトの絵が合いそうだ
・気の利いた便利グッズであふれたウェルカムバスケットは大家さんの心遣い?
などと、室内に効果的に配置されたアイテムが想像力を高め、ここで暮らすことが楽しくなりそう~と確信させる心の動きを生み出します。
内覧時に好感を得るための演出とコツを3つ紹介
滞在時間を長くするアイテムを活用する
人間は環境に左右されるといいます。
初めて訪れた環境の中では、慣れるまでに違和感を覚えることや方向感覚がつかめないなど、心理的に戸惑いを感じるものです。
しかし、しばらく同じ環境にいつづけるとじょじょに馴染めるようになり、普段の自分を取り戻し「ここは自分が住むに相応しいところだろうか?」と冷静に考えられるように心が変化していきます。
内覧の立会いをしていると、短時間で切り上げるお客さまがいますが、「ここに長くはいたくない!」などの心理的な働きがあると考えられます。
一方成功例などが紹介されるさまざまな内覧アイテムには、お客さまを長く滞在させる効果があり、その効果が決定率を高めているのではないかと考えられるのです。
・ウェルカムバスケット
・アクセントクロス
・POPやグッズ
POPやグッズはそれだけで長く滞在するキッカケをつくるものですが、アクセントクロスやウェルカムボードは、雰囲気を創りだすことにより生まれる心理的作用も期待できるのです。
ただし効果があるとはいっても、すべての人に同じように効果があるものではありません。
十人十色といいますが、人にはそれぞれ個性があり好みも違うものです。
いつも同じアイテム、空室すべてに同じような便利グッズが置かれていては、内覧者が興味をもつことはありません。一部屋ごとアイテムを変えるのが大切です。
アイテムによって内覧者の反応がどう違うのか、成約率が上がったのかなど、長い期間にわたってデータを蓄積し分析することによって、演出ノウハウが高まっていきます。
照明器具で演出力アップ
室内の演出方法は工夫しだいでバリエーションを増やすことができます。そこで必須といえるのが照明器具です。
大家さんによっては照明器具のない物件がありますが、演出的にはあり得ないことでしょう。
入居者が決まりお気にいりの器具に交換するなどのことはありますが、照明器具は設備としてつけておきたいものです。
照明のついていない物件の理由として多いのが、「照明器具は入居者が好みのものをつけるほうがよい」というものですが、実は設備に費用をかけたくないのが本音といっていいでしょう。
しかし照明器具がついていないほうが入居決定しづらい面もあるのです。
最近は「ホームステージング」により、演出効果を高める方法が増えています。
他の物件との差別化を図るために費用を惜しまないケースもあるのです。
おおがかりな演出はしないまでも、たとえばPOPやウェルカムボードをフロアースタンドで照らしてみる、ずいぶん部屋の雰囲気が変わります。
しかしメインのシーリングライトが付いていないとどうでしょう?ウェルカムボードだけが目立ってしまい、内覧の意味を失ってしまいます。
メイン照明が全体を明るくしているからこそ、効果が生まれるサブ照明の演出です。
メインの照明器具は是非つけておいてほしい設備であるといえるのです。
案内順を効果的に
管理会社は仲介業務を同時におこなっているケースも多いです。
部屋探しのお客さまがいらして希望条件を聞き、いくつか候補物件をピックアップし案内に向かうとき、案内の順番を戦略的に検討したいものです。
たとえば3つの物件を案内するとき、本命と考えられる物件の案内順は3とおりあります。
2.2番目に案内
3.最後に案内
どれがよいかの正解はありません。ただ漫然と案内を繰り返していては、案内順により変わる決定率を分析することはできません。
とくに上述の内覧アイテムを準備した物件としていない物件で、案内順により成約率が変化するかどうかなども興味のあるところです。
物件を決定する要素の最後は「心理的」なもの、と冒頭に述べたように物件の案内順も、内覧者の心理に影響を与えているはず。
今回は№1のパターンで、次回は№2のパターンなど、内覧者の属性なども含めたデータ蓄積と分析により、ここでも賃貸ノウハウが形成できるのです。
まとめ
アイデアにあふれた賃貸物件の演出方法はいろいろあります。
単に真似るのでなく効果を見きわめることが大切です。
効果といっても2~3回の案内で効果があったとか、なかったということではありません。
最低でも1年間かけて空室が生まれるたびに、試行錯誤で工夫しデータを蓄積し分析することが大切です。
“お客さまの心理に与えた影響” を把握できるようになると、管理会社にとって空室対策と成約率アップの大きな武器になるはずです。