有効な空室対策は平均居住期間の分析から

管理会社には “空室を作らない” という重要な役割があります。

オーナーが管理会社に対しもっとも期待するのは「空室対策」といっても過言ではありません。

空室を増やさない、空室はできるだけ早く埋める、いろいろ対策をとってもうまくいかないこともありますが、空室対策には居住期間を延ばすことも有効な方法です。

平均居住期間をデータ化することにより、見えてくる居住期間延長の方法について解説します。

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有効な空室対策は平均居住期間の分析がおすすめ

入居率と居住期間

入居率は健全な賃貸住宅経営の重要な指標です。入居率が高ければ収益性は高まり、逆に入居率が低下すると赤字経営におちいることもあります。

入居率は経営状態を端的に表します。 そのため “現在の入居率” ばかりに関心が集まりますが、将来の入居率を考えることも大切なことです。

たとえば10年間の経営期間を想定し、次のようなシミュレーションをしてみると、平均居住期間の重要性が理解できます。

居住期間 居住月数 居住率
2年 108 90.00%
4年 114 95.00%
6年 117 97.50%
8年 117 97.50%
10年 120 100.00%

上の表は平均居住期間を2年~10年の期間で5つのケースを設定し、たとえば居住期間2年の場合は、2年ごとに入居者が入れ替わり、退去から入居までの空室期間を3ヶ月と仮定した居住率を計算したものです。

入居者の入れ替わりで発生する空室期間は防ぐことができません。退去後のクリーニングや原状回復工事は必ず必要であり、短くても1週間~10日間の空室期間が生まれてしまいます。

また新規入居者が内見できるのは退去後になるので、内見から契約締結そして引っ越し準備をして入居まで、順調にすすんでも1ヵ月近くかかるものです。

居住期間が短いほど居住率が低下することは一目瞭然といえるでしょう。

平均居住期間のデータ

6年以上 4~6年 2~4年 1~2年 1年未満
学生 0.7 8.1 78.7 11.8 0.7
一般単身 0.7 21.2 65.1 12.3 0.7
一般ファミリー 16.8 56.6 25.9 0.7 0.0
高齢者(65歳以上) 70.8 21.9 7.3 0.0 0.0
法人 2.1 17.4 61.1 19.4 0.0
外国人 2.5 15.1 49.6 31.9 0.8

出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第23回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2019年10月~2020年3月」

上の表は日本賃貸住宅管理協会が調査をおこなった、賃貸住宅居住期間の全国平均です。

属性ごとの最も多い居住期間は次のようになります。

・学生は[2~4年]がもっとも多い
・一般単身者は[2~4年]がもっとも多く[4~6年]]が次に多い
・一般ファミリーは[4~6年]がもっとも多く[2~4年]が次に多い
・65歳以上になると[6年以上]がもっとも多く[4~6年]が次に多い
・法人と外国人は[2~4年]がもっとも多く[1~2年]が次に多い

学生の[2~4年]は在学期間との関係もあり、これ以上の延長は望めませんが、一般単身者の[1~2年]は2年を超える居住期間に延長できる方法が求められます。

一般ファミリーは[4~6年]のさらなる延長と、[2~4年]の延長対策を望みたいものです。

法人や外国人は勤務先の関係もあり、とくに対策の必要はないように思えます。

居住期間を長くする方法

単身者とファミリー層を対象とした、居住期間を延長させる方法として次の方法が考えられます。

単身者向け ファミリー向け
契約時 短期契約解除違約金の増額
更新時 4年目以降の更新に特典を付ける
更新時の賃貸保証料をオーナー負担にする
更新時に賃料の低減をおこなう

短期契約解除違約金の増額

短期契約解除違約金は一般的に1ヵ月とすることが多く、契約終了により返還する敷金との相殺をおこない、敷金の返還をせず処理するのが一般的です。そのため契約時に支払った敷金の返還を放棄すると、中途解約しやすい心理が入居者には生れると考えられます。

そこで、短期契約解除違約金を2ヵ月とすると、退去時には別途1月分の違約金が追加され、中途解約をしづらくできる効果がでてきます。

この方法により学生と単身者の2年未満の中途解約、それぞれ11.8%と12.3%の退去率を抑えることが期待できます。

ただし実際に中途解約の申出があった場合、違約金2ヵ月を適用するかどうかは、消費者契約法に抵触する可能性があり慎重に判断することが必要です。

4年目以降の更新に特典を付ける

居住期間が4年を超えるようになった入居者に対して、特典をつけて感謝の意を表するのも、もっと長く住んでもらえる効果的方法です。

・新しい設備に更新する
・部分的な内装カスタマイズ要求に応じる
・退去時の清掃料を不要にする
・駐車料金を割り引く

他にもいろいろアイデアがあると思いますが、2年目の更新ではなく4年目以降で特典を設けることが効果的です。さらに契約時にアナウンスしておくと、長期居住しようとする動機が自然に生まれてきます。

4年目以降の特典なので6年目の特典も当然必要です。ただし6年目の特典は4年目の更新時にアナウンスするほうが、ゲーム感覚のようにも捉えられ効果が期待できそうです。

更新時の賃貸保証料をオーナー負担にする

賃貸保証を利用する賃貸借契約では更新時の保証料が必要です。金額としては大きなものではないですが、更新のたびに保証料の支払いがあるのは、入居者にとって心理的な負担にもなっています。

保証人が用意できない場合は止むを得ないですが、一般的に通用するような保証人がいる場合、オーナーの方針で賃貸保証を利用しなければならないのは、納得のいかない面もあります。

賃貸保証そのもののメリットはオーナーに大きくあるので、費用である保証料はオーナーが負担するほうが当然と考える入居者もいるはずです。

滞納歴のない入居者に対しては、更新保証料をオーナー負担にするほうが、入居者との信頼関係が生まれるキッカケになるのではないでしょうか。

更新時に賃料の低減をおこなう

更新ごとにわずかでもよいから賃料を減額する方法です。

月額10万円の家賃で、更新時に1,000円を下げた場合のシミュレーションが以下です。

更新期 月額家賃 期間家賃 低減率
初期契約期間 100,000 2,400,000
3年目 99,000 2,376,000 99.0%
5年目 98,000 2,352,000 98.0%
7年目 97,000 2,328,000 97.0%
9年目 96,000 2,304,000 96.0%
11年目 95,000 2,280,000 95.0%

10年居住後は契約時の95%になります。一般に家賃は10年で1割下落するといわれます。

空室になり新規募集で決まった案件のなかには、賃下げが条件の場合もあります。
そこで値引きに応じることを2~3回繰り返し、10年もたって計算すると1割ダウンになっていたというケースですが、このような事例は多いと考えられます。

逆に長期居住者は契約時の賃料設定のまま入居しているケースもあり、計画的に賃料の低下をおこなうことにより長期居住率を高めると、長い目でみて値下げ率を少なくすることができるといえるのです。

まとめ

居住期間が短くなると原状回復工事の頻度も増加し、家賃の減少に加え経費の増大を招くのです。
できるだけ居住期間を長くする対策は、空室率だけでは捉えられない収益性の向上にもつながります。

本記事でとりあげた居住期間に関するデータは全国平均のものです。実際に管理をおこなっている物件のデータにもとづいた分析をおこなうと、特性やエリアによる違いなどが見えてきて、物件ごとの対策がより具体的になってくると思います。

居住期間延長対策をオーナーに提案し、是非実践してみてください。

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