中高層建築に進出する木造建築と木造準耐火賃貸住宅

木造耐火建築物とした5階建てマンションが完成するなど、中高層建築では木造建築の活用がすすんでいます。

背景には木材資源の活用は持続可能な循環型社会を目指し、地域の活性化を図る有効な手段であり、木材産業と建設産業の結びつきを活性化させようとの政策があります。

ここでは最近の共同住宅における木造建築の法規制などを解説し、賃貸事業における木造建築の可能性について紹介します。

木造3階建てアパートの法規制

アパートは建築基準法では「共同住宅」と呼びます。

共同住宅は「特殊建築物」に該当し、一定条件に該当すると「耐火建築物等」にしなければなりません。

一定条件とは「3階以上の階を共同住宅として使用する場合」をいいます。

つまり3階建て以上のアパートは「耐火建築物等」としなければなりませんが、耐火建築物等とはどのような建物をいうのでしょうか。

耐火建築物と似たような言葉に「準耐火建築物」があります。「耐火建築物等」とは平成27年の建築基準法改正により生まれた用語で、準耐火建築物も含みますが、木造3階建て共同住宅の場合は「避難時倒壊防止建築物」とされ性能規定がおこなわれています。

しかし実質的には「1時間準耐火構造」となるので、これまでと同様に1時間準耐火建築物と捉えていて問題ありません。

以上のように3階建て木造アパートは1時間準耐火建築物とするのですが、通常の2階建て木造アパートとは異なり、主要構造部や開口部は基準を満たす防火性能が必要です。

すすむ木造建築の高層化

木造建築は「燃えやすい」と考えられますが、上記のように耐火性の高い建築物とすることができ、高層建物にも多くの実例があります。

以下はすでに供用されている木造高層建築や工事中の物件です。

1. 17階建て高層オフィスビル
2025年には東京都中央区日本橋に17階建ての木造高層オフィスビルが竣工予定です。

2. 11階建てのうち9~11階が木造のホテル
ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園は、高層ハイブリッド木造ホテルとして2021年9月開業しました。

3. 11階建て木造耐火建築
大林組の研修施設は純木造による耐火建築であり、2021年11月現在、内装の木仕上げや外装へのガラス設置工事が進行中です。

4. 三井ホームの木造マンション「モクシオン」
三井ホームは木造による5階建てマンションシリーズ「MOCXION」の第1号物件を東京都稲城市に建設し入居者募集を開始しました。

木造建築の耐火技術

木造建築は「木三共」と呼ばれるいわゆる1時間準耐火建築物以外にも、耐火構造にすると階数の制限はなくなります。

建築基準法施工令第107条では耐火性能に関する技術的基準を定めており、最上階から数えた階数が15階以上の階について、次のように耐火性能時間を指定しています。

・外壁と間仕切壁(耐力壁):2時間
・柱:3時間
・床:2時間
・はり:3時間
・屋根:30分
・階段:30分

つまり柱とはりを3時間耐火、床と耐力壁を2時間耐火とすると、構造性能は別にして階数の制限はありません。

なお実例であげた三井ホームの木造マンションは5階建てなので、1階部分は2時間耐火が要求されます。

そのため木造ではなくRC造としていますが、木造で2時間耐火とすることも可能です。

木造を耐火構造や準耐火構造にするには、主に構造部材を石膏ボードなどの建材により耐火被覆するか、柱やはりの部材断面を大きくして外側に「燃え代」を設計する方法があります。

「燃え代設計」は木材を室内側に露出させ、木材のもつ素材感や風合いそしてインテリア要素として活用でき、木造建築のよさをストレートに表現できる方法です。

以上のように今後の賃貸事業においては、木造耐火建築の選択肢が広がり3階建てばかりでなく、4階・5階といった中層賃貸物件にも木造建築が採用されるケースは増えていくと思います。

木三共の設計ルール

木造3階建ての共同住宅を業界では「木三共」と呼んでいます。

高層の木造耐火建築は増えていくと予想されますが、賃貸事業ではやはり準耐火構造で建てられる「木三共」に注目しなければならないでしょう。

木三共を建てるための法規制など、設計ルールについておさらいしておきます。

主要構造部を1時間準耐火構造とする以外に次の3つの条件を満たす必要があります。

木三共を建てられる敷地の条件

木三共を建てるには敷地を真っ先に検討する必要があります。

準耐火建築物の要件として、居室の開口部のある外壁面には、建物周囲に3m幅の通路を設けなければなりません。

通路を設ける目的は火災などのさいに、避難を確実にできるようするためと、消防活動のためのスペース確保です。

避難や消防活動のためなので道路に面する外壁面には必要ありませんが、隣地に面する外壁には必要になります。

そのため建物配置計画によっては敷地内通路を設けることができない場合もあります。

敷地内通路を設けることができない場合は次の緩和要件があり、要件を満たせる場合には敷地内通路を設けることを免れます。

1. 各住戸に避難上有効なバルコニーがある
2. 各住戸から地上に通ずる廊下、階段そのたの通路が外気に直接開放されている
3. 各住戸の通路に面する開口部に防火設備がついている
4. 外壁の開口部と上階の開口部との間に庇があり延焼をふせぐことができる

木三共は規模の小さい共同住宅で採用されることが多く敷地は狭くなりがちです。

そのため以上の緩和要件を設定することにより、狭小地であっても木三共が建てられるような配慮がなされたと考えられます。

避難上有効なバルコニーの設置

敷地内通路の緩和要件としてある「避難上有効なバルコニー」ですが、敷地内通路が確保できる場合であっても「避難上有効なバルコニー」の設置が求められています。

ただし「避難上有効なバルコニー」の設置に対しても緩和要件があり、以下の場合はバルコニーの設置が免れます。

1. 各住戸から地上まで通ずる廊下、階段そのたの通路が外気に直接開放されている
2. 各住戸の通路に面する開口部に防火設備がついている

と、敷地内通路の緩和要件としても設定されていた条件がここでも登場します。

つまり廊下・階段が外気に開放されており、通路に面する開口部には防火設備がついていることが、設計上非常に重要なことになってきます。

準防火地域の場合の3階住戸の開口部

木三共は防火指定のない一般地域と準防火地域では、1時間準耐火構造で3階建てが可能になっています。

ただし準防火地域内では3階の住戸について開口部に防火設備を設けるよう定められています。

木三共は狭小敷地に建つことが多く、ほとんどの開口部は延焼のおそれのある部分に該当するので防火設備は必須となります。

ただし敷地が広く延焼ラインの外側であれば、緩和要件があり防火設備の設置を免れることが可能です。

まとめ

耐火建築・準耐火建築については仕様規定から性能規定への移行があり、建築基準法の解釈は非常に複雑でむずかしいものになっています。

ここでは賃貸管理会社などがオーナーから相談を受けたさいに、最低限知っておきたい建築知識について紹介しました。

木造建築はこれまで、地震に弱くしかも燃えやすい建物というイメージがありましたが、現代は高層建物としても活用される工法に代わっています。

狭小敷地での賃貸物件企画では、機会があれば木三共も検討する必要があるでしょう。

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