入居率アップは季節ごとの促進戦略がおすすめ|具体的な手法を解説

空室対策はオーナーが管理会社に求める最優先事項です。

空室の多い管理状態がつづくと競争の激しい賃貸管理業界では、悩んでいるオーナーに対し、競合他社が接触し、いつのまにか管理業務が移管されます。

オーナーとの信頼関係や人間関係が深いといえども、空室の多い状態をオーナーが容認することはありません。

管理会社にとってもっとも重要な「空室対策」の考え方を、 “季節” という視点で解説します。

入居率アップは季節ごとの促進戦略がおすすめ

入居率を上げる対策、つまり空室対策は季節ごとに考える必要があります。

1年中おなじ考え方や方法では効果がないこともあり、季節ごとの特性や賃貸市場の状況などを考慮し、対策を立てなければなりません。

空室対策はすべての物件に共通するテーマです。

そしてほとんどの場合、似たような対策をおこないますので、何も意識せず競合との差別化を図るのは困難です。

似たような空室対策が、多くの物件で実施され、競合物件を含めたエリア内の全ての物件で平均化が進んでしまうのが一般的な空室対策と言えるのです。

また、入居率を上げる空室対策は物件ごと、一部屋ごとに異なるともいわれます。

たとえば「フリーレント」を設けたとしても、まったく需要の見込めない物件では、内容のよくない入居者しか集客できないことがあります。

フリーレントよりは間取りを変更するなど、物件そのもののエリアにマッチしたリノベーションが必要なこともあるでしょう。

閑散期の8月に「フリーレント」を設定することも疑問です。

フリーレントは初期の契約期間内の退去では「違約金」が発生するのが一般的です。

そのため短期間の入居を予定している人には訴求しないインセンティブであり、より多くの入居希望者が対象になるような「敷金ゼロ」の方が間口は広くなります。

これはほんの一例ですが、画一的に考えがちな空室対策に一工夫を加える、季節ごとの対策を提案します。

入居率アップは季節ごとの促進戦略がおすすめ|具体的な手法を解説

2月~4月の入居率アップ

3月は新入学や新入社など1年のなかでもっとも人が移動する時期であり、賃貸物件の退去と入居がほぼ同時におこなわれます。

最近は3月末の引越し繁忙期の費用が高くなり過ぎ、引越しを4月になってからという動きもありますが、賃貸業界においても、この期間を逃すと入居率向上が図れないともいえる大事な時期です。

この期間の特性は次のようにまとめることができます。

・退去する人が多くなり競合物件が増加する
・入居希望者が増加し人気物件ほど早く決まる
・退去は卒業や転勤などの防ぐことができない理由である

これらは管理会社やオーナーからの視点ですが、部屋探しをするお客目線で考えると次のようなことがいえます。

・条件の良い物件が多くなる
・早く決めないとよい物件ほどすぐ埋まってしまう

たくさんの物件が候補となりますから、「いかに見つけやすく、条件のよい物件」と感じてもらえるかが鍵となるでしょう。

また物件の選択は本人ばかりでなく、親の意見も反映されることが多く、親目線での評価も大切なことになります。

具体的な対策としては次のようなことがあげられます。

1. セキュリティ面の充実
2. フリーレント
3. 入居時費用を安くする
4. 設備などの仕様を一新

5月~8月の入居率アップ

春の引越しシーズンが終わり秋の転勤時期までのこの時期、引越し業界では閑散期といわれますが、特に8月は “夏枯れ” といわれ賃貸業界でも動きが鈍くなります。

動きの悪い時期なので、入居促進策を考えても意味がないといった考えもありそうですが、実はこの時期だからこそ効果のある入居促進策があります。

それは「退去抑制策」です。

つまり空室を埋めるのではなく、空室の発生を抑える方法です。

閑散期は “住み替え” を考える人にとって、じっくり時間をかけて住みやすそうな物件を探す絶好のチャンスになります。

住み替えを考える人には次のような動機があるものです。

・長く住みつづけた物件の賃料が割高に感じるようになり、もっと住みやすくて安い物件があれば引っ越したいと考えている
・あわてて探した物件だったので、もっと自分の好みの物件に移りたい
・住宅設備が古く生活もしづらいため、もっと暮らしやすい物件を探している

などのように入居者の生活スタイルや価値観に合わない物件の場合、機会をみつけて引越しを考える人は必ずいるものです。

2月、3月の繁忙期はゆっくり探すこともできません。

秋になると再び訪れる転勤シーズンや本格的な冬が来る前に物件を探す人も多く、5月~6月は物件探しには意外といい時期なのです。

入居者が “住替え” を考える前に先手を打つ対策を考えてみましょう。

具体的な例をあげると次のような方法があります。

1. 賃料の値下げ

賃料は一般的に新築時からの経過年数が長くなると、じょじょに低下します。

10年以上前から入居している方と最近入居した方とでは、賃料の差が10%程度生じていることがあります。

同一タイプの現在賃料まで値下げをする提案は、退去を思いとどまらせることのできる効果的な方法です。

2. 水廻り設備の交換やグレードアップ

10年以上も居住をつづけた物件の水廻り設備、例えば便器や洗面化粧台などは型も古く、汚れも落としきれないほどになっていることもあります。

住宅設備の交換は最新仕様へのグレードアップにもなり、アメニティの向上は住み替え動機を薄める効果も生むでしょう。

3. 劣化や汚損の目立つ部分の内装工事を提案

玄関や居間など来客者の目に留まりやすい壁の汚れなどは、入居者にとって気になるものですが、自ら内装工事をすることもできず我慢して生活していることもあります。

細かな部分のことですが意外とストレスの原因になっており、転居を考えるキッカケになることもあります。

管理会社からの提案があると、喜んで工事に協力しくれるケースも少なくありません。

費用としても目立つ部分の壁一面程度なので数万円の出費です。

アクセントクロスの効果も生まれ、入居者の満足度は高くなり転居の可能性は少なくなります。

9月~11月の入居率アップ

9月から10月は企業などの転勤時期であり、春の次に人の移動がある期間になります。

春の対策と同様におこなうのも効果はあると思われますが、需要の絶対量がすくなく費用をかけた場合無駄に終わることもあります。

部屋探しをする人にとって春ほどの焦った気分はないので、冷静に比較検討されることも多く、対策を考える管理会社はデータにもとづいた対応が必要です。

まずデータ分析したいのが競合物件との差です。

1. 賃料格差
2. 設備のグレード
3. 初期費用の差
4. 間取り・広さの差
5. 管理グレード

お客さん目線で自社の管理物件と競合物件を冷静に比較し、劣っている点があれば改善し、優っている部分があればアピールポイントとして訴求方法を考えることです。

仲介会社の活用についてもこの時期に検討したい要素です。

これまで自社だけの仲介業務だった場合は他社活用を、すでに活用している場合は仲介会社別の実績を分析し、広告料の設定を見直すなども方法のひとつです。

まとめ

入居率を高めるには空室を埋めることと、空室が生まれないことの両方を考えなければなりません。

入居者が退去する理由にはやむを得ないものと、防げるものがあります。

また入退去が多くなる季節は競合物件でも同様のことが起きており、入居促進メニューや賃貸条件の競合比較が重要です。

同じような空室対策であっても、他の物件より優れたメニューがひとつでも多いと効果が見えてきます。

マンネリにならず常に工夫することが空室対策の基本です。

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