「〇〇年間一括借り上げ」「賃料収入を保証」などと謳われているCMを見たりすることで、「サブリース」に興味を持ったオーナーからそういった契約を希望されることがあります。
ただ「空室保証すること」だけが先走ってしまい、オーナーが正確に理解されないまま契約し、トラブルになっているケースも見られます。
ここではオーナーがサブリースにきちんと認識いただいた上で契約締結するために、サブリースが一体どういう契約なのか、どんなメリットやデメリットがあるのかを詳しく説明します。
サブリースのしくみ
サブリースは、主にマンション・アパートの集合住宅の管理方法の一種です。
オーナーは所有物件の全住戸を管理会社に対し貸し付けます。
管理会社は一括で借り上げた住戸を入居者へ転貸(又貸し)を行います。
オーナーは管理会社から、契約で定められた、一定の金額を「保証賃料」として受領します。
管理会社は物件のオーナーに対し、入居者から受領した賃料から、空室の有無や賃料未収にかかわらず保証賃料を支払います。
物件オーナーと管理会社で取り交わす賃貸借契約を「マスターリース契約」と呼び、管理会社と入居者で取り交わす転貸借契約を「サブリース 契約」と呼びます。
このシステム自体の特徴を捉え、サブリースと呼ぶのが一般的です。
サブリースのメリット
サブリース契約には、「契約期間内での賃料が空室有無にかかわらず保証されていること」と、「一括貸付・入居者への転貸を行うことで、管理会社が貸主になること」という特徴から、オーナーにとって様々なメリットがあります。
(1)契約期間中の収入の安定
不動産投資の一番の不安は、空室や未収などによって収入が予想通りに推移せず、将来的な収益予想ができないことです。
その点において、サブリースですと契約期間中の収入は確定しているので、収支管理がとても楽になります。
銀行の融資を利用していて、毎月賃料収入から返済しているオーナーも多いため、より安定した収入が見込まれるサブリース 契約は物件オーナーにとって大きな魅力です。
(2)管理手間が少ない
不動産運営にトラブルはつきものです。
募集の仕方がわからない・空室が長引いてしまう・入居者が賃料を払ってくれない・部屋の設備が故障したなどなど・・・。
サブリースの場合、入居者に対しての貸主はあくまで管理会社です。
募集〜退室まで、賃料や設備管理、入居者のクレーム対応全てを行います。
また、共用部管理も併せて管理会社に委託している場合、エントランスやエレベーター等共用部の故障なども含めて管理会社が行います。
賃料未収が重なり、入居者と裁判沙汰になったとしても、出廷義務は貸主にあります。
したがって管理会社の担当が出廷することになります。
サブリースのデメリット
サブリースはメリットだけではありません。
どんな契約にもデメリットもあります。ここでは失敗事例をデメリットとして紹介します。
失敗事例
メリットに記載した通り、管理会社の裁量権が大きいのがサブリース契約の大きな特徴です。
そのためオーナーの手間は少ないのですが、その代わり、「物件がどういう状況なのか(空室・未収・賃料変動・設備の劣化など)、オーナーに気付かせにくい」という欠点があります。
例えば、新築時から2年間同一の保証賃料を管理会社から受領し続けており、更新の時期を迎えたとします。
管理会社は現況から今後の満室賃料予測を導き出し、新たな保証賃料を提示することになります。
そのため、現契約の2年間で景況が悪化していた場合、更新後の契約では保証賃料を減額しなければならなくなります。
このことがオーナーにとっては大きなデメリットですが、オーナーと定期的に連絡をとって現況を共有していないと、オーナーとしては「こんなに下がるはずじゃなかった」と理解を示されずに、円満な更新ができない場合があるのです。
最悪は保証賃料の更新が合意されず契約解除に至り、オーナーは「失敗だった」と後悔する事例が少なくありません。
オーナーからサブリースの相談があった場合には、このような失敗事例を知らせることも大切です。
海外在住オーナーの源泉徴収
現代では個人投資家が不動産投資を行う場合に、海外に住んでいる場合も珍しくありません。
もしくは契約途中で海外に移住してしまうというケースもあります。
そこで問題になるのが「非居住者の貸付物件に対する源泉徴収」です。
ここで言う「非居住者」とは、日本国内に住所がなくかつ現在まで引き続いて1年以上国内に住むところがない方のことを言います。
外国法人、海外に1年以上転勤中の日本人、外国に住んでいる日本人・外国人がこれにあたります。
したがって、海外在住のオーナーも「非居住者」です。
非居住者である海外在住オーナーは、日本国内にある賃貸物件を貸す場合、受け取る賃料から源泉徴収されることになります。
この場合の源泉徴収義務が発生するのは、法人の入居者です。
そのため、法人が入居物件を探している場合、オーナーが非居住者の賃貸物件を借りたがらない傾向があります。
ここでサブリース契約が有効になります。
この「非居住者」が貸付した物件の借主は、サブリースであれば管理会社です。
つまり、管理会社が源泉徴収義務者ということになります。
したがって、入居者が法人であろうが個人であろうが、入居者に納税義務は発生しません。
オーナーにとっては法人が入居を避ける懸念がなくなり、募集への安心材料の一つになります。
まとめ
説明したようにサブリース契約は、オーナーにとっては、不動産投資のリスクである「空室リスク」避けられ、管理会社にとっては裁量権が大きく物件運営がしやすい契約形態ですが、前提としてオーナーと管理会社がどれだけ密にコミュニケーションをとっているかが、この契約成功の肝になります。
オーナーから希望した場合は、この契約形態のメリット・デメリットをきちんと説明することを心がけましょう。