現在の年収の数倍、数十倍もの価格の商品を販売するという点で、不動産業界の営業マンとは非常に特殊な職業です。
不動産業界に飛び込んだばかりの若手営業マンは、その金額だけではなく、学ぶべき知識の多さにも圧倒されていることでしょう。
また、日々の業務はとても地味なものばかりで、外から見ていたときのような華やかさを感じられないと不満を募らせているかもしれません。
この記事では、不動産業界に入ってから2年以内程度の若手営業マンが知っておくべきことを、必要最低限の内容に絞ってまとめて紹介します。
中長期の視点から若手営業マンが今、何に取り組むべきであるかを確認する機会になれば幸いです。
投資用不動産や個別株式など特定の金融商品にこだわらず、幅広い投資に関する記事を執筆。
外資系金融機関の日本進出をサポートするなど、金融業界のマーケティング戦略パートナーとしての業務も行う。
不動産業界がなければ経済は上手く回らない
内閣府が毎年発表している国内総生産(GDP)によると、日本経済全体に占める不動産業界の割合は、毎年の上下があるものの押しなべて8%前後です。
つまり、経済大国日本のGDPの約12分の1は、不動産業界が生みだした付加価値です。
不動産にはマイホームや店舗、オフィス、工場などのあらゆるものが含まれますので、不動産業界は全世帯・全産業にとって必要不可欠な存在です。
ちなみに全産業との関わりを持っている業界としては広告業界も挙げられますが、電通が発表している「日本の広告費」によると最新の2019年が7兆円程度で、40兆円に迫る不動産業界には遠く及びません。
農業というものが生まれ、人々がムラに定住するようになって以来ずっと不動産というものは価値を持ち続けているわけですから、業界としての歴史の長さが違います。
戦国時代には多くの武将たちが「地位と名誉のために戦った」とされていますが、実際のところは戦いに勝つことによって領土や城、豪邸を分け与えられたのですから、人々は不動産を得るために夢中で戦っていたと言っても過言ではありません。
今も昔も、不動産業界とは日本の経済にとって必要不可欠な存在であり、不動産業界で働く営業マンというのは経済を回すための大切な役割を担っているのです。
若手営業マンは、どうしても目の前の業務に夢中になって視野が狭くなりがちですが、ときには俯瞰的に経済全体を見渡し、自分の仕事について考える時間も必要です。
古くて新しい不動産の営業マンという仕事
歴史と伝統ある業界である一方で、時々刻々と新しい変化が生まれ続けていることも不動産業界の面白いところです。
木造から鉄筋コンクリートへの大きなトレンドの変化でさえ過去100年程度の間に起こったことですし、10年前と現在を比べてみても、工法や素材などには数々の変化があります。
また、不動産の売買とは深い関係にある税法も、年を追うごとに変化を続けています。
このため、勤続数十年というベテラン営業マンであっても、常に新しい知識を学び、不動産業界の変化に対応し続けなければなりません。
このような環境だからこそ、不動産業界の若手営業マンには常にチャンスがあります。
積極的に学び、少しずつ経験を積み重ねることによって、変化に対応できないベテラン営業マンを追い抜く可能性が十分にあります。
特にこれから数年で起こる不動産業界の変化は激しいです。
詳しくは「カスタマーサクセス」について解説した3回の連載で説明した通りで、多くのベテラン営業マンが変化に対応できない可能性が高いです。
常日頃からお世話になっている先輩たちを敵視する必要はありませんが、常に“下克上”の気持ちを心に抱きながら、日々の営業に取り組んでいただけたらと思います。
自分の得意なパターンを作ってオリジナルの営業を
営業活動にインターネットを使いこなせていない若手営業マンを見ると、本当に不思議でなりません。
プライベートの友人たちや彼女との連絡にはLINEを活用し、個人の情報発信にはFacebookやTwitterを使い、その中から新しい出会いが生まれているにも関わらず、仕事に活かせていない営業マンが多いです。
不動産に関する個人ブログやメールマガジンを立ち上げて、日々の学びを書き綴っているだけでも読者から不動産購入の問い合わせがあるかもしれません。
ブログやメルマガが大変ならTwitterでも良いでしょう。
自分の正体を明かさず無料で使えるツールも多いですから、新しい顧客との出会いが生まれる可能性のあるアンテナを立てるためにインターネットをフル活用すべきです。
顧客との出会うためのアンテナの重要性については、「カスタマージャーニーマップ」を解説した記事で詳しく説明しています。
不動産業界に入った直後には、どうしても先輩社員のアドバイスを聞いたり、先輩の真似事をして仕事を学んだりする期間が必要であることは分かります。
しかし、ひとつの会社のなかで同じ顧客層を対象にして営業をしていれば、先輩営業マンの方が知識と経験で勝ります。また、アドバイスそのものが時代の変化に追いついていない可能性さえあります。
自分の得意な不動産を売るという点では、営業マン個人の「プライスゾーン戦略」が役立ちます。
こちらも別の記事で解説していますので、合わせて読んでみてください。
さまざまな変化に対して即座に対応して、新たな顧客層を取り込んでいくのは、いつの時代にも若手営業マンです。
自分だけのオリジナルの営業スタイルを見つけ出してください。
不動産業界の若手営業マンが知っておくべきことまとめ
日本経済から戦国武将、Twitterに至るまで、様々な視点から不動産業界で活躍するために若手営業マンが知っておくべきことについて解説しました。
営業マンの評価はすべて「売れているかどうか」に集約されるため、売れていないときのプレッシャーや焦りがあることは十分に理解できます。
継続すれば必ず結果に繋がります。ただし、さっき出会ったばかりの顧客が明日すぐに契約してくれることは極めて稀です。学ぶこと、アンテナを立てることをコツコツと続けてください。
中小の店舗や工場が年間に上げる売り上げよりも大きな金額を、たったひとりで売り上げるという不思議な業界に飛び込んだのですから、仕事が大変なのも当然です。
環境の変化に対応し、オリジナルの営業を身につけるように日々、少しずつ努力しましょう。