開発許可物件で要許可と非該当の違いはどこにあるのか

広大な建築敷地は開発許可に関する調査を行う必要があります。

土地の面積が1,000平方メートル超であれば必ず開発許可申請がいるというわけではなく、状況によっては開発非該当として取り扱われることがあるからです。

その判断の分岐点は、いったいどこにあるのでしょうか。

この記事では、開発許可申請物件と開発非該当物件の違いについて解説します。

開発許可の対象になるのはどんな物件か

開発許可の対象になるのは、建築目的で1,000平方メートル以上の土地において区画形質の変更をする場合です。

まず建築目的であることが開発許可の要件になります。建築目的が対象ですから、青空駐車場や露天の資材置き場として土地の整備をするのであれば、開発許可申請は不要です。

次に土地の面積に要件があります。1,000平方メートル以上が対象になるのは、全国一律の基準ですが、首都圏、近畿圏、中京圏の都心部では、さらに厳しく500平方メートル以上が開発許可の対象になります。

しかし開発許可は単に土地の面積だけで判断しているわけではありません。「土地の区画形質の変更」の有無が大きな要因となります。区画形質とは「区画」「形状」「質」の総称です。このいずれかを変更した場合に開発許可を要することになります。それぞれどのような変更なのかをみていきましょう。

土地の区画の変更とは

土地の区画の変更とは、敷地内に道路を造成したり拡幅したりすることで、土地の利用範囲が変わることをいいます。一つの土地を単純に複数の宅地として分譲しても、土地の利用範囲は変わらないので土地の区画の変更には該当しません。

土地の形状の変更とは

土地の形状の変更とは、地盤となる土地の盛土をしたり切土をしたりする場合を指します。ただし工事中に一時的なスロープを設けたり切土をしたりする行為は形状の変更には該当しません。

たとえば建物を建てる際には、必ず基礎工事として土を掘る根切をしますが、完成までに埋め戻して、元の地盤高で完成させれば土地の形状の変更には該当しません。つまり工事前の地盤形状と工事後の地盤形状が同じであれば、開発許可は不要だということです。反対に地盤形状が異なるのであれば開発許可申請が必要です。

工事前と工事後の地盤高の誤差の許容範囲は自治体によって異なりますが、多くの自治体では30センチメートル程度の差であれば変更とは見なしません。

土地の質の変更とは

土地の質の変更とは、「宅地以外の土地」が「宅地」になる場合を指します。宅地以外の土地とは、次のものが該当します。

宅地以外の土地
田、畑、池沼、山林、原野、用水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、駐車場、資材置場、工作物用敷地

ただし土地の質の変更だけで、ただちに開発許可の対象になるわけではありません。

前面道路が6m未満であるといったケースにおいて開発許可の対象になります。

開発許可が必要なのはこんなケース

ここまでの説明を整理してみましょう。たとえば、1,000平方メートル以上の土地で次のような行為を行うと、開発許可申請が必要です。

  1. 土地内に道路を設置して宅地分譲をする(区画の変更)
  2. 道路面より1m以上低いレベルにあった宅地を道路面まで盛土をしてマンションを建築する(形状の変更)
  3. 前面道路幅員が4mの青空駐車場をコンビニエンスストアーにする(質の変更)

開発非該当になるのはこんなケース

1,000平方メートル以上の土地を建築目的で利用しても開発非該当として扱われることがあります。たとえば次のようなケースであれば、土地の区画形質の変更がないと扱われるので開発許可申請をする必要はありません。

  1. 古くからある邸宅を二つに分割して分譲する
  2. スーパーマーケットの跡地をマンションにする
  3. 前面道路の幅員が6m以上ある資材置き場をコンビニエンスストアーにする
  4. 相続のため土地を分筆する

開発許可の対象になった場合のデメリット

土地の利用法を考える際に、開発許可申請をするべきか非該当を選択するべきかについて悩むこともあるでしょう。

ここでは、開発許可申請をした場合、どのようなデメリットがあるのかについて探っていきましょう。

許可を取得するまでに時間を要する

開発許可の対象になると、当該土地所有者の承諾や周辺土地所有者の同意が必要になります。さらに道路、水道、水路などの公共施設管理者との協議も必要です。開発許可申請書の書類審査ばかりでなく、こうした関係者との調整で多大な時間を費やすことになりますから、開発許可申請をした場合、工事着手まで時間を要することになります。

土地の一部を道路として提供する必要がある

開発許可を要する土地の前面道路の幅員は原則6mとされています。このため前面道路が6m未満の場合、次の図のように自己敷地の前面道路を6mに拡幅する必要があります。

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さらに敷地面積が大きくなると、前面道路の幅員を9mとする場合や公園用地を公共施設として提供する場合もあります。

開発許可が認められないことがある

開発許可を取得するためには、幹線道路から原則として6m以上の道路で接続する必要があります。一部小区間であれば、4m道路でも認められることもありますが、途上に2項道路のような4m未満の道路があれば許可の対象外となります。このため計画自体がとん挫することもあります。

開発許可を取得した場合のメリット

手続きが煩雑な開発許可ですが、実際に開発許可を得て土地の整備をすると、さまざまなメリットがあります。

ここでは、開発許可のメリットを解説します。

公共施設が充実している

開発許可を取得した土地は前面道路が6m以上確保されているとともに、幹線道路からのアクセスもスムーズに行える土地が対象になっています。

公共施設管理者との協議済であることから、ライフラインもしっかり整えられています。

開発区域内の道路は公道

開発区域内の道路は開発道路して整備されますが、完成後は速やかに地方自治体に寄付されることになっています。

このため開発区域内の道路は、原則として道路法上の道路である公道です。万が一道路陥没した場合でも、地方自治体が早急に補修を行います。

一方、開発許可申請を要さない規模の宅地の場合、位置指定道路を設置します。位置指定道路の多くは、私道として管理するため、道路の維持管理も所有者の負担で行います。

長期的に見れば査定は有利

開発許可によって開発された土地は、道路等の公共施設が充実していることから、長期的な展望で見ると周辺の物件よりも評価が高くなる可能性があります。購入希望者も開発許可物件のそうしたプラス面を評価して購入を決断することがあります。

まとめ

開発許可は都市計画法に基づく手続きであるため、都市整備の観点からさまざまな条件が付けられます。このため買主にとっては、快適な環境で暮らせることが一定保証されています。

開発業者によっては、手続きに時間を要すうえに土地の一部を公共施設として提供するといったことがあるため、開発許可申請を回避することがありますが、長期的な展望においては、開発許可物件は査定が高くなるといった利点も考慮しながら、将来の土地利用を検討しましょう。

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