不動産を適正な価格で売り出しているのに、どうしても売れないという経験はありませんか。
近年は、インターネットやSNSの普及によって、不動産会社ですら知らなかった貴重な情報を一般の人が把握していることがあります。この記事では、思わぬところに潜む売れない理由を探っていきます。
不動産物件はなぜ売れないのか?思わぬところにあった5つの理由
- 専用通路の上に隣家の軒先が突出していた
- 平成12年以前に建てられた木造住宅だった
- 幹線道路に通じるルートが1方向しかなかった
- 違反指導中の物件だった
- 市街化調整区域の農家用住宅だった
1:専用通路の上に隣家の軒先が突出していた
売地の接道長さが2mといった基準ぎりぎりである場合は、隣家の軒先が上空を占有していないかのチェックが必要です。
次の図は赤色の部分が軒先突出部分を示しています。
この場合、自己敷地の形状で建築確認申請を出せば、確認済証は交付されます。
しかし問題が発生するのは、工事が始まり、棟上げ後の中間検査の段階です。
検査員が現地に訪れて、隣家の軒先突出が判明すると、接道長さが2mないと判断をして中間検査が不合格になり、その時点で工事は中断を余儀なくされます。
このような物件は、現状は事実上の「再建築不可物件」となっていますから、相場の価格では売却できません。
これを解消するためには、軒先を切り落としてもらうよう隣家と協議を進める以外に方法はありません。
2:平成12年以前に建てられた木造住宅だった
建物の耐震性能は1981年(昭和56年)から「新耐震基準」が適用されています。
この基準により耐震性能に対する考え方が大きく変わりました。とくに鉄筋コンクリート造のマンションにおいては、新耐震基準の以前と以降では査定額が大きく変わってきます。
しかし木造においては、さらにその後大きな変更が加えられました。
2000年(平成12年)にホールダウン金物の取り付けが義務化されたのです。この金物は、地震の際に柱が土台や梁から抜けるのを防ぐ役割を果たすもので、大震災の教訓から採用されるようになりました。
つまりホールダウン金物の取り付けられていない木造住宅は、大地震の際に十分な耐震性能が発揮できないことを意味します。このため2000年(以前に建てられた木造住宅は敬遠されるのです。
3:幹線道路に通じるルートが1方向しかなかった
開発許可は都市圏では500平方メートル、それ以外は1,000平方メートル以上の土地を開発する場合に要します。
開発許可には、関係地権者の同意や公共施設管理者との協議が必要なため、これを避けたい業者は、開発許可を要しない規模の開発を進めることがあります。
開発許可を要しない宅地は位置指定道路を無計画に繋いでいくため、地域によっては幹線道路に至る道路が1方向しかない土地が存在します。そのうえ途中の道路が2項道路だと現実の幅員が4mに満たないこともあります。
こうした条件の土地に建つ家は、地震等の災害時にスムーズに避難できないばかりか消防車や救急車の緊急車両が現地に到着しないリスクを抱えています。
同じエリアにある住宅であっても、道1本違うだけで、避難上有効な敷地が存在すると、さらに売れゆきにも差がついてしまいます。
4:違反指導中の物件だった
建築基準法違反で指導中の建物であっても、外部の人間には知り得ることはできません。
違反である事実は重要な個人情報として、役所が公表しないからです。
ところが近所の住民は、何度も役所の職員が現地に調査にきている姿を目撃していますから、なんとなく違反だろうと察知しています。そのため、もし売りに出したとして、周辺エリアから購入希望者が現れる可能性は著しく低いものになります。
近年では、中間検査に合格しないと住宅ローンの融資をしてもらえないため、違反行為は中間検査以降に行われます。
違反行為の具体例
こうしたケースでは、長年違反指導を受け続けてきた建築主が嫌気がさして、突然売りに出されることがあります。
たとえ事情を知らなかったとしても、違反の事実を買主に伝えないままで売却すると、仲介した不動産会社も法的責任を問われてしまいます。
5:市街化調整区域の農家用住宅だった
市街化調整区域に建築できる住宅は「1970年前後に既存の宅地だった土地」か「建築主が農業従事者である」場合に限られています。
市街化調整区域においては、売主が農業従事者でない場合には注意が必要です。元々農業従事者が住んでいた住宅を何らかの事情で買い取った人が所有していることがあるからです。
市街化調整区域の物件を取引する時は、必ず建築確認済証に添付されている証明証等を確認して、建築できた根拠を押さえておく必要があります。
参考農家用住宅であれば「許可不要証明」が、その他の場合は「60条証明」が添付されています。
建築確認済証が存在しない場合には、建築計画概要書を閲覧すると都市計画法上の根拠が記載されています。
また地方自治体によっては、10年以上住んだ農業従事者であれば、一般の住宅への用途変更を認めていることがあります。しかしこの場合であっても、用途変更が申請できるのは居住者が農業従事者である場合のみです。用途変更をしないままで、一般の人が購入してしまうと、もう後から用途変更をすることはできません。
もし農家用住宅に農業に従事していない人が農家用住宅に住んでいれば、この段階で厳密には都市計画法違反ですが、実態はなかなかそこまで把握できません。
しかしこのような住宅を購入した場合、増築ができないのはもちろんのこと再建築は一切できません。事実上の「再建築不可物件」ですから、市街化調整区域の相場からさらに引き下げた価格でないと売却できません。
まとめ
不動産物件が売れない理由は思わぬところに潜んでいることがあります。
一方で現地調査や役所調査を入念に行うことで、未然に防げることも数多くあります。不動産を適切な価格で売却できるよう、リスクの根はしっかり把握しておきましょう。