私の所属する朝日リビングは、一都三県11営業所があり正社員は約120名、パートタイマーなど含めると300名規模の会社です。
私は2000年に入社してから、4年目で「トップセールス」となり、8年目で「所長」へ昇進しました。ちなみに、所長になった後も営業マンとしての活動は継続しており、2017年と2020年には営業所としての成績1位もキープしながら、個人成績でもトップセールスを獲得しています。チーム・個人問わず実績を積み上げ、現在は11営業所を任される「統括指導者」という立場になっております。
この『トップセールスへの道』というシリーズでは、業界歴20年の経験を活かし、ありがちな「過去の栄光にすがる指導者」ではなく、常に最前線で成績を上げ続けたノウハウを伝授してまいります。
入社して6年目、この年は再びトップセールに返り咲きました。
※前回記事はコチラから
トップ営業マンには欠かせない重要課題とは
トップを維持するには、圧倒的な案件量を維持しないといけません。
社内ライバルには大型案件など決めて、トップになる営業も出てくるので、それらを負かすために圧倒的な営業案件数を常に維持しなければすぐにトップの座を奪われてしまいます。
そこで行ったのが日々のルーティンを確立させるという事です。
今回の記事では、「トップを維持するためのルーティン」を細かく紹介していきます。
野球界ではイチロー選手が代表的ですが、ルーティンを自分のものにできたら、仕事の質を高水準に維持できることが出来るのです。
プロ野球選手も約20年プレイヤーとして成績を維持しないといけませんが、社会人も営業なら20年、高水準に維持させたい所です。
営業マンにとって、より高水準を維持するための考え方として、このルーティンは必須といえます。
トップを維持するためにルーティン化した5つの事
1.空室・空家調査
私は一か月に一度、空室と空家の調査を徹底的に行っておりました。
深夜1時ぐらいから、朝方4~5時ぐらいにかけて調査し、毎月約50~100件の空室や空家を見つけてDMを発送しておりました。
成果としては、100件送って2~3件の専任媒介につながっていました。
市内のマンションは頭に入っているので、エントランスに車を横づけし、集合ポストを調べるのですが、
②チラシがポストから溢れている
という所を主に空室認定をしておりました。
一戸建は、まず庭木の荒れ具合から、置いてある自転車の埃具合、電気メータなどのチェックです。
一戸建ては夜だと雰囲気が分からないので日中によく調べておりました。
成果が出やすい地域としては、以下のようなエリアが狙い目です。
②少し下り方面の地域
逆に、駅前のタワーマンションや大型築浅マンションは成果が出ません。
これらは、大手不動産業者が全戸所有者を調べてDMを送っているため、競合が強く成果が上がりづらいと言えます。
2.購入客の追客
購入顧客に対する追客のルーティンですが、毎週月曜日に10件と決めて顧客を追っておりました。
1件に約30分時間をかけて資料を作成するので、トータルすると6時間程度、時間を割いておりました。
また、基本的に資料は郵送を心がけておりました。
郵送は月曜日発送だと遅くとも水曜日に到着します。
そこで追客日を木曜として、夕方から夜にかけてお客様にご連絡します。
何故木曜日かと言うと、不動産の案内は土日に集中してしまい、早いと土曜日の午前中に見たお客様で1番手が入ってしまうので、これはという物件を見つけたら、金曜日の夜にご案内出来るように、木曜日に追客を行うのです。
ご案内は「金曜日の夜」もしくは「土曜日の午前中」がおすすめです。
毎週、新規反響等は入ってくるので、ホットなお客様10件は都度クリーニングを行い、それ以外のお客様は中長期顧客として月に一度メールでの追客としておりました。
ホット客10件については、追客資料として以下の内容を送付します。
②物件の販売図面
③間取り図(寸法入り)A3×3
④間取り図の見本
⑤物件の詳細資料(マンションなどは重要事項調査報告書)
⑥物件の周辺環境
⑦お客様のニーズに沿った資料
30分ほど時間をかけて作成するのですが、丁寧に作ると仮に他社でご案内されても、お客様が再び戻ってくるので、お客様のニーズに沿った資料を重点的に作ってお渡ししておりました。
ペットを飼っている方は、動物病院マップを作成し添付
持病のある方は、近隣の病院マップを作成し添付
また、その地域特有の「安い生鮮販売店」「人気のあるお店」などを紹介した資料も添えることにより、他社では紹介しないであろう地域の紹介もでき、より親切な営業マンを演出する事が出来ます。
3.物出し営業
物出し営業では「3つのルーティン」を心がけており、これらを営業基本方針として行動しておりました。
①業者売主物件が登場したら
当日中にそのマンションや近隣に広告を配布、裏面にはそのマンションの限定求むチラシを入れていました。
表面:ライオンズマンション〇〇 4,300万円
裏面:ライオンズマンション〇〇 限定求む
これは、マンション内に住む賃貸のお客様や、居住されているお客様の親族などが業者売主物件を購入するケースがあるため、まずは表面で購入者用に向けてのチラシを作成します。
裏面の「限定求む」ですが、これは日本人の心理を突いた手法で、聞いたことのない不動産屋がいきなりそのマンションから物件を出そうとしても見向きもされません。
しかし、表面があることで「同マンションを売っている業者」と認識をされます。
そのお部屋が業者売主物件だとかは居住者の方は知りえないのです。
「そのお部屋を任された業者」という安心感と「私も」という日本人特有の気質から、物件をお願いされるのです。
また、業者売主物件は価格が割高なので「高く売ってくれる業者」という良い印象も与える事ができ効果的です。
この方法はスピードが命なので、レインズに登場したら即日に行う事で成果への期待値が高まります。
②他社から専任物件が出ているマンションにDM投函
これは1件売り物件が出ていると2件目が出やすいという法則に基づいて行います。
長年不動産を見ていると、1件売りに出ると立て続けに売り物件が出てきて、増えすぎると滞留し、はけだすと一気に売れてします。
このような流れも、日本人特有の問題で、「私も」「みんなが」という流れに従って営業をかけていくと、より効果的になります。
これは1956年アッシュという心理学者が同調現象(Conformity)という実験で実証されたのですが、日本では古くからは「長いものには巻かれろ」「出る杭は打たれる」などの諺が日本人の文化に根付いた資質だと思います。
またマーケティング用語だとバンドワゴン効果といい、「人が持っているから自分も欲しい、流行に乗り遅れたくない」と言う心理が作用し、他者の所有や利用が増えるほど需要が増加する効果を指します。
このような効果を利用した営業手法と言えます。
もう一つの理由もあるのですが、これは企業秘密になります。
DMについては、基本的には手紙型の「求む」が効果的です。
③一般媒介の参入
自分の任されている地域に出ている一般媒介物件は、すべてリスト化し、毎月DMを発送します。
マンションに限らず、土地や戸建て、ビル、アパートなども行います。
一般媒介参入として、入りやすいのは大手不動産業者が数社入っている場合です。
入りにくいのは、一社だけの一般媒介、また遠い業者の場合は、おそらく何らかの知り合いか親族の可能性が高く、一般媒介の参入はしづらいといえます。
一般媒介への参入は3回に分けて行います。
これは、大手不動産業者ではない知名度が低いので、しっかりした安心感がもてる
不動産業者ということを認識してもらうための資料になります。
(2)2回目のDMは完全に「個人」をアピール
自分がいかにその地域で頑張っているか、自分に任せてもらえれば成約する自信が
あるなどアピールするのです。必殺の決め文句があるのですが、それは企業秘密に
なります。
(3)3回目は・・・
ほぼ確実に取れる手法ですが、これも企業秘密になります。
4.旧客への追客
一度取引したお客様へは、本当は年に4回ぐらいはお手紙を発送したいのですが、当時個人的に行っていたのは年に2回の暑中見舞いと年賀状になります。
会社指定のものではなく、裏面はオリジナリティのあるものして、自分の近況報告などを書いて送ります。
一度取引したお客様を大切にしておくと、リターンや紹介が発生します。
不動産歴20年ですが、ここ5年のリターンはかなり多く、案件としては仲介手数料で1000万円から2000万円ほどの紹介を頂いております。
私の父はリフォーム屋さんでしたが、毎年お客様に年賀状を手書きで送っており、そこからの受注で年間の半分の売り上げを担いました。
そんな父の影響か、年賀状に対しては私も新人の時から力を入れており、入社3~4年目ぐらいからリターンも増えて、営業がより楽になっていったので、おすすめの営業手法になります。
5.自分新聞の発行
当時、毎月新聞を作成して配布しておりました。形としては「新聞」ではなく「チラシ」なのですが、半分以上は自分のコラムで、今でいう「ブログ」の紙バージョンです。
これはかなり効果的でございました。
このチラシには、自分の趣味の事や、子育ての苦労話など書いており、いつの間にかにファンが出来たのもうれしかった記憶です。
そのチラシだけでも親近感を与えることができ、初対面でも相手は自分の事をよく知ってもらっている状況なのでとても営業がしやすく、なんといってもお客様との距離感がとても近くなった事により媒介率も大幅にUPしました。
当時の媒介率は90%以上超えていたと思います。
また趣味を書くことにより、同じ趣味だとより親近感が出るので、当時はネタのためにいろいろな趣味に手を出して、広く浅い知識を持つことを心がけました。
そうすることにより、よりお客様とのトークに花がさいて、お客様との距離感がつめられます。
このような効果は「ザイオンス効果(単純接触効果)」といい、同じ人やモノに接する回数が増えれば増えるほど、その人やモノに対して好印象を持つようになる心理現象のことです。
ポーランド出身の社会心理学者、ロバート・ボレスワフ・ザイアンスが、1968年に発表した論文で明らかにした心理学理論です。
また趣味が一緒などの共通の話題などは、「類似性の法則」という心理学理論であり、人は自分と共通点のある人に親近感を抱くというものという理論に則っており、例えば、「出身地」が同じだとか「出身校」が同じだとか、あるいは「自宅の最寄り駅」が同じだとか。
初対面の人でも、何か共通の事柄を見つけると一気に心理的な距離が縮まる場合があるという理論に基づいております。
今はブログやSNSが発展しているので、それを武器としてお客様にアピールするのも手だと思います。
昔も今も、営業するにあたり「自分を知ってもらう」ことから「安心感」をお客様に与えることにより、営業がより楽になると思いますので、ぜひ試してみて下さい。