最近は、仲介業務はかなり効率化されてきた。昔のようなカウンターでの接客の機会は大幅に減少し、多くの紹介は、物件現地で行うようになってきた。また多くの募集物件は、ポータルサイトに掲載されるようになり、不動産会社が「隠している物件」なども殆ど無くなってきた印象だ。
昔と比べてユーザーにとって、かなり部屋探しをしやすくなっていることは間違いない。
また、このような状況になってくると仲介会社の「営業力」というのは、一見すると必要なくなってきているように感じる。あくまで営業メンバーはユーザーが問い合わせした物件の鍵を開け、現地で口頭で物件を紹介するだけで事足りるようになると考える人も多いだろう。
しかしながら現実は、なかなかそう簡単ではない。不思議なことにこのように業務が標準化されてきても、はっきりと売上数字の上がる営業メンバーとそうではない営業メンバーとに分類される。これはひとえにやはり「営業力の差」としか言えない。同じような業務を行っても、成果の出るメンバーとそうではないメンバーが発生してしまうのだ。
最近、複数の仲介会社様からこんな要望を頂いた。「メンバーの営業力を上げるには、何が必要でしょう?」
これまで返信率アップの方法やクロージング方法など細かい業務テクニックを紹介してきたが、今回はそもそもの「基礎的な営業力の上げ方」を紹介してみたいと思う。
仲介の営業力を上げるために必要な5つの基本的なスキルとは?
1.ユーザーの理解を深めるように意識すること
営業力で何よりも重要なことは、「ユーザーの希望」をしっかりと把握できているかどうかだ。
いくら口が達者でも、頭の回転が速くても、物件の知識が十分にあっても、ユーザーの希望条件や課題を把握していなければ、営業力は上がらない。
ユーザーを理解するためには、何よりも「聞く力」(傾聴力)を身に付けなければいけない。
そのためには、しっかりとユーザーが信頼して話ができるような状況を作れるのかが鍵になる。
身だしなみや挨拶など、基本的なことから始まり、頷き方や適切な質問など、細かいところも気を付けなければいけないだろう。こうした「聞く力」が身について初めて最適な物件提案やクロージングができるようになる。
2.コミュニケーションスキル向上させる
聞く力があっても、物件の魅力を伝える力がなければ営業力は向上しない。
たとえば自分がプッシュしたい物件を強引に進めたり、また延々とその魅力を必要以上に説明しても、効果はないだろう。
重要なことは、明確で簡潔な説明だ。物件の長所や短所を短く、簡潔に答える。そして当然のことかもしれないが、それをユーザーに感じ良く伝える。
多くの仲介会社のロープレを見てきたが、なかなか数字が上がらない営業メンバーは、このあたりの「伝えること」が苦手なメンバーが多い。仏頂面になったり、声が小さかったり、いっぽうで必要以上に早口だったりなど、なかなかユーザーが納得できるような伝え方ができていないケースが多い。
コミュニケーションスキルを向上させるためには、第3者のはっきりとした指摘が必要である。
いきなり他人が指摘をするのも難しいので、ロープレなどを実施し、メンバーのコミュニケーションスキルの課題を伝えていくのもひとつの方法かもしれない。
3.柔軟な対応(問題解決能力)ができるようになる
内見の際に思ったより物件の印象が悪かった場合などに、その問題点を特定し、他物件を提案したりする柔軟な対応も重要になる。
まさにこのあたりは提案力の強化をしていくことが、ポイントになるだろう。
いくらマニュアルを覚えても、営業現場では突発的なことが良く起こる。提
案物件が急に募集終了になったり、提案物件の賃貸条件が変わったりなど、予期せぬことが仲介現場では多い。
その際にごまかしたり、上手く丸め込もうとせず、他の物件を上手く提案できるかが重要だ。
こうした対応力を磨くためには、現場での場数も大事だが、ひとつひとつの接客をしっかりフィードバックし次に活かす方法を考えることも、柔軟力、提案力を身に付ける近道になる。
4.目標設定と進捗管理
優秀な営業メンバーの大きな共通点として、明確な目標設定と細かい進捗管理があげられる。これは多くの仲介会社で共通しているものだ。
いくらヒアリング能力、提案力が高くても自身の数字目標がなければなかなか営業力は向上しない。
とある不動産会社では、全営業メンバーの目標設定が曖昧になっていたり、ほぼ全メンバーが自身の目標を把握していなかった。
そこで新任の統括リーダーがとにかく目標数字を全体に浸透させ、売上進捗を日次で見える化した結果、業績がとても大きく伸びた。
実際に週間の目標を立て、達成に向けた計画を立てたり、自身の営業を振り返ることは、何よりも数字達成に必要なポイントになる。
5.自己成長を続けること
営業力を高めるためには、何よりも本人自身が「営業力を上げたい」と思うことだ。
会社として、こうした自己成長の機会を増やすようなセミナーの参加や書籍、動画などの紹介なども行うこともとても重要になる。また、こちらも当たり前の話だが、基本はポジティヴに物事に取り組んでいかなければ、なかなか自己成長はできない。
組織としてこうした機会を提供すること。またそれがない場合でも、また営業メンバー自身が仕事自身の「考え方」を変えていくこと。このあたりも営業力のベースになるだろう。
以上が営業力を上げるために必要な5つの項目だ。クロージングなどの営業のテクニックは、今回紹介した5つの項目をクリアして初めて活用ができる。是非、責任者の方は部下にこの5つの観点で教育してみてほしい。また営業メンバーの方は、この5つの項目を改めて意識してみてほしい。