ひと昔前まで、各不動産会社に1人は圧倒的な成績を残す不動産営業社員がいた。
彼らは他の社員と倍以上の売上金額を達成し、幹部からも一目置かれている。
不動産会社に勤めているこれを読んでいるかたも、一人二人は思い浮かべることができる顔があるのではないだろうか。
また別の話として、ユーザーが物件を内見する数はどれぐらいだろうか。
一般的に1社あたり3件程度の内見をイメージするのではないのだろうか。
これも昔よく言われたことである。
最初にイマイチな物件を紹介して、次に云々というものである。
以上のような圧倒的な成果を残す営業社員の存在やユーザーが内見する物件数などは、不動産賃貸仲介業としては「鉄板」の共通認識であった。
ただ、しばらく前まではではある。
現在、この2つの概念は大きく変わりつつある。
まず、数字を突出して残す営業社員の存在はどこの会社でもかなり少なくなってきている。
これは一社二社の話ではない。
かなり多くの不動産会社で、各メンバーの営業成績の数値というものが平準化されている。
仮に一時的に爆発的な成績を残すメンバーがいたとしても、たまたま成約単価が高い物件の成約を多く取れたり、顧客の「当たり」が良かっただけのケースが多くあり、決してその人物のスキルに依存しているわけではなさそうだ。
また、物件の案内数も2.3件内見するユーザーは減っているようだ。
圧倒的に1件のみ内見を希望するユーザーが増えてきている。
1件のみの現地待ち合わせの対応。
こんなケースが大半になってきているのではないだろうか。
このような変化の原因はいくらからの理由によるだろう。
まずひとつは、「業務の平準化」があげられる。
今までは反響獲得段階から、その営業社員に顧客を割り当てる仕組みを導入している不動産会社が多かった。
しかし、最近は反響対応、追客、接客、案内、申込契約手続きまで細かく分業している企業が増加してきた。
これにより営業のスキルというよりも、どれだけ「スムーズにストレスなくユーザーの部屋探しを提供し、引き渡しまで終わらせられるか」が重要視されるようになっていきている。
ユーザーからしても、あまりこういったご時世で不動産会社の営業社員とリアルでは会いたくないだろう。
電話やメールのやりとりもなるべくシンプルなほうが喜ばれることは間違いない。
また、数年ほど前まではユーザーは、不動産会社に赴き条件を伝え、最適な物件を紹介してもらうというフローが一般的であった。
しかし、これも大きく変化している。
何よりも大きく変化したのが、ネットの情報リッチ度の大幅な向上である。
当然、今や多くのサイトで多くの不動産情報をユーザーは閲覧することができる。
以前から問題であった「終了済物件」が多く掲載されている点も、物件のデータ連動システムの導入で改善されつつあるようだ。
また、物件数の向上と精度の向上のほかに物件単体の情報もリッチになってきている。
多くの物件写真や360度カメラでのリアル感。
そして諸費用項目の記載などひとつの物件の情報の多さと精度も以前とは比較にはならなくなってきた。
このような状況になってくると、ユーザーは、自分自身でしっかりと物件を吟味し、そしてかなり明確な意思を持って問い合わせを行う。
以前のように、「とりあえず問い合わせして見て、その他の物件は不動産会社に紹介してもらおう」というユーザーは、大幅に減少した。
こうしたことを考えると、複数物件を内見するより、「一点を絞った」ユーザーが増加しているということも腑に落ちるのではないだろうか。
最近、とある不動産会社様の成約状況の変化にとても驚いたことがある。
創業が約10年程度のその不動産会社は、今までは営業メンバーによって営業成績に大きなバラつきが生まれていた。
また、平均の内見物件数も3件程度とまさに従来の仲介業のイメージに近い状況だった。
しかし、この2年程度で大きな変化が起こった。
営業メンバーの数値は平均化され、スーパープレイヤーはいなくなった。
また、内見も1件のみの内見を希望するユーザーが激増し、それに合わせて「問い合わせた物件」でそのまま申し込みするユーザーが大半を占めるようになった。
これは、非常に象徴的な出来事である。
ユーザーは、不動産会社にヒアリングするというよりも、ネットで情報を取得し、効率的に内見を依頼するようになっている。
また、不動産会社も無理強いな提案をするよりも、そのユーザの意向を受け止めて迅速な対応を心がけるようになった。
もしかしたら、今も不動産店舗にユーザを呼ばなければいけない、または「問い合わせした物件」以外の「不動産会社が提案した物件」で申し込みを取らなければいけない、というコンセプトの不動産会社は多いかもしれない。
しかし、時代は変わっているのだ。
誰もができる運用フローの構築、そして、なるべく不動産会社側から無理強いをしない仕組みを作ることが今後の生き残る仲介会社なのかもしれない。
是非、今一度、これまでの成約されたユーザーの分析をしてみても良いかもしれない。
意外な変化に気づくことができるだろう。
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