お盆も過ぎ、不動産賃貸仲介業も例年ならば、徐々に忙しくなり、売上も上がっていく。
しかしながら、今年はそうではないようだ。
コロナ影響は、徐々に賃貸ユーザーの動きに影響を与えている。
但し、これはまだまだデータとして顕在化はされてはいない。
当然のことながら、一番先に市場の変化を感じるのは、賃貸ユーザーの動向である。
しかしこのあたりが統計データとして発表され、検証されるのには、半年程度の時間を有するだろう。
反響は底堅いが成約は厳しい
あくまで問い合わせの数だけを見れば、多くの不動産会社の反響数は、そこまでは減少してはいないようだ。
昨年対比で見ても、反響総数が大きく減少している企業は少ない印象を受ける。
しかし、成約数を見ると、厳しい企業が多いようだ。
つまり、反響はそれなりに獲得できていても、なかなか売上が追いついていない企業が増えている印象がある。
このあたりの理由は何であろうか?
空前の高稼働、管理は好調
まず、都心の賃貸管理会社は、今も変わらず好調だ。
これは、やはりこの数年続く物件の高稼働率が理由だろう。
物件が埋まっているので、当然、一定の管理手数料収入が入ってくる。
またさらに今年は、類を見ないほど、解約が少ない印象である。
コロナの影響もあり、入居者は引っ越しを控え、契約満期の際は更新をする。
このあたりが空前の高稼働の状態となっているだろう。
また、最近、物件が空室になっても都心部では、かなりのスピードで申込みが入る印象が強い。
これは、そもそも空室供給数が少ないがゆえに、ある意味、「物件の取り合い」をしている状態になっていると感じる。
コロナによって消えた顧客層
では、ユーザーの変化はどうだろうか?
反響が減らない理由としては、やはりテレワークに適した物件の住み替え、また結婚などの同棲、そして、単純に現在の部屋からの機能アップなどが挙げられる。
当然のことながら、物件を探すユーザーは一定数存在することは間違いないのだ。
おそらくこれからもこの「一定数」のユーザーは維持されるだろう。
しかしながら、そのいっぽうで「一定数」以外のユーザーは、減少しているという側面があることを忘れてはいけない。
代表的な例だと、「学生」の引越し、「転勤」を伴う引越しがそうだ。
このあたりの「急ぎ」で、かつ「部屋を探さなければいけない」ユーザーが、例年に比べて今年はほとんど動いていない。
最近の報道にあったような、大学がオンラインで運営されていること、そして下期に入る最近になっても、リアルな大学授業の再開の目処が立っていないことがあげられる。
成約率低迷の鍵は、急ぎではないユーザーの増加
ここまでをまとめてみると、下記のようになる。
2.コロナの影響により、更新する入居者が増加
3.とはいえ一定のユーザーは部屋探しをしている
4.しかし学生や転勤するビジネスマンなどの火急のユーザーは減少している
賃貸仲介業を経験した人であれば、基本的なことかもしれないが、不動産会社にとって、ありがたいユーザー、言い換えれば成約に至りやすいユーザーというのは、「入居時期がはっきり決まっていて」、「引越し理由が明確である」ユーザーであることだ。
例えば、転勤で来月までに引っ越さなければいけないユーザーというのは、非常に優良(成約に至りやすい)ユーザーである。
逆に、時期は明確ではなく、良い物件があれば引越しを検討するユーザーは、賃貸不動産会社にとっては、なかなかハードルの高いユーザーであるということになる。
おそらく賃貸仲介会社の成約数の伸び悩みは、このあたりに起因しているのではないだろうか?
つまり、反響数は一定数獲得できるものの、総数のなかで、急ぎではないユーザーの割合が増えていることが原因のひとつだと推測される。
賃貸仲介会社がとるべき対策
では、このような環境下で賃貸仲介会社は、どのような対策を打つのがベストだろうか?いくつかの選択肢がある。
1.営業力の向上
まず、ひとつは、単純明快に営業力を上げることである。
売買仲介であれ、賃貸仲介であれ、いかにオンラインが主流になったとしても、個々の営業力は健在である。
ヒアリング能力・クロージング能力を向上させることで、シンプルに「成約数」を伸ばすことができる。
しかし、忘れてはならないのは、反響数を増やしたり、接客数を増やしたりすることより、個々の営業力を上げることは、かなり難易度が高い。
以前のように、各メンバーに細かくロープレなどの営業指導が実施しにくい現状であることも留意しておかなければいけない。
2.追客方法の徹底
また、別の方法としては、追客方法の徹底だ。
これが一番、適切で確実な方法だろう。
引越し時期が急ぎではないユーザーは、一件だけ内見しただけでは、なかなか申込をしない。
やはりユーザーの心理としては、いろいろな物件と比較検討したいものだ。
その際に、やはり適切なタイミングでユーザーに継続的に連絡を行い、場合によっては、図面の提案をしていかなければいけない。
これは正直、かなり業務としては骨の折れる作業である。
しかし、ここがこれからの賃貸仲介業で重要な部分であることは、間違いない。
勿論、物件のマッチング登録の利用や、マーケティングオートメーションを駆使して追客を効率化することも、とても効果的である。
さらにそれと同時に、営業スタッフからのプッシュがあれば、より大きな成果が上がるだろう。
具体的な追客業務を向上させる基本方法は、大きく2つある。
逆に言えば、この2つのみを徹底することが全てかもしれない。
まず、当然のことだが、「次回のアクション日」を明確にしておく。
接客しても、その日に成約に至らない場合、次にいつ、どのようなタイミングで追客するのかを、接客した当日に、しっかりと明記しておく。
営業ツール使い、担当者個人にアラートを出すことも効果的だろう。
図面を送る、連絡を入れる等、簡単なことだが、「いつかやろう」では、実際には、殆ど手をつけられない仲介店舗も多いのではないだろうか?
そして、もうひとつの方法は、「マネジメント」である。
追客の徹底というのは、個人の力量ではない。
あきらかに店舗のマネジメント力が問われる業務である。
店長なり責任者が「追客の時間を確保する」、もしくは、「追客しないメンバーにアラートを出す」これが一番重要だ。
繰り返すが、追客作業というものは、面倒なものである。
たとえば売買仲介であれば、総数となる反響数がそもそも少ないので、マネジメントをしなくても、ある程度メンバーは、追客を自発的に実施する。
しかし賃貸仲介は、数の勝負だ。
反響数も多く、接客数もそれなりに多い。
その中で、追客を全体で組織的に行うことは、まさに、その組織の責任者の力量にかかってくる。
私も仕事で、不動産仲介会社様のコンサルタントをする際、まず注意して見るところは、「追客の徹底化ができているか否か」である。
これは、単純に売上が上がる要素がその店舗にあるだけではなく、「マネジメントが効いているかどうか」を判断する良い指標になる。
予定を決め、マネージャーがしっかりと管理する。
とても単純な方法だが、これを徹底している不動産会社は驚く程少ない。
これからの世の中、凡事徹底をいかに効率的に、しつこくやるのかが重要になる。
まとめ
是非今一度、自身の店舗の「追客状況」を見直してみてほしい。
必要なツールの導入とタスク管理、そして徹底したマネジメントを行うことで、追客効果だけではなく、それ以上の大きな売上効果に繋がることを忘れてはいけない。
そしてこれからは、「急ぎのユーザーが少ない」という前提を仲介店舗は、忘れてはいけない。
おそらく今年の繁忙期、この状態を認識し、しっかりと取り組んだ企業が、今後も成長していくのではないだろうか。
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