賃貸仲介業と賃貸管理業のバランスの取り方

賃貸仲介を専業としている不動産会社の幹部のかたからよく「賃貸管理業をゆくゆくは始めていきたい」というお話を聞くことがある。

たしかに賃貸仲介業は、月々の売上が変動的であるが故に、運営が難しい部分がある。

いっぽう賃貸管理業は、月々の売上の収入が安定しており、事業の収支の見立てが立てやすい。

こうした理由から仲介事業一本から管理業に参入することは、とても頷ける内容だ。

いっぽうで、賃貸管理会社のかたとお話ししていると、ごくたまに「仲介業も力を入れようかな」という声も聞く。

賃貸管理専門の不動産会社からすれば、自ら自社の管理物件の仲介を行うことは、オーナーへのアピールにもなるし、管理にも繋がる。

こちらも一理ある内容だ。

賃貸関係の業務をメインにしている不動産会社の特質は、大きく分けて3つに分類される。

ひとつめは、賃貸仲介、賃貸管理の両方の業務を行なっている不動産会社だ。

ふたつめは、賃貸管理業のみの会社。

そして最後は賃貸仲介業のみの会社だ。

個人的に感じることは、多くの不動産会社は、仲介と管理の両方を行なっていきたいという要望が強い印象だ。

たしかに、それで成功している不動産会社も多く存在している。

しかし、実際には賃貸仲介と賃貸管理を同時に行っていくのは、なかなか大変な部分も多い。

管理業が上手くいっても、仲介業では伸び悩んでいる会社もあれば、仲介業の売上が伸びていても、なかなか管理物件を増やすことができていない会社もある。

そこで、今回は社内の賃貸管理業と賃貸仲介業のバランスの取り方について紹介してみたい。

ベストは役割を明確化すること

組織的に可能であれば、それぞれ仲介業と管理業の専門組織、専門チームを作ることが、かなり効果的である。

役割を明確にすることで、それぞれの目標数字や指標が明確になり、業務を行いやすい。

しかし、なかなか人員的にもコスト的に難しい場合は、当然のことながら、「兼業」で実施していくしかないだろう。

それぞれの事業の割合を決めて業務を確定させる

家,チェック

実際に仲介店舗で管理業との兼業を行う場合は、それぞれの業務の割合を決めなければいけない。

例えば、仲介が7割、管理が3割であれば、その業務の大半は集客活動や接客活動に充てられる。

残りの3割で、オーナーのアプローチやPM業務を行う。

逆に管理業7割、仲介業3割の場合は、メインが管理業になる。

物件獲得のアプローチを強化し、オーナーとの面談機会を増加させる。

また修繕業務などにも力を入れ、その売上向上なども図っていかなければならない。

そのなかで行う仲介業としては、掲載管理が可能な範囲での物件を掲載し、反響対応や内見を実施する。(おそらく自社物件の掲載がメインになるだろう)

重要なポイントは、しっかりと業務の割合を決めて、それを確認していくことが重要だ。

管理業に比重を置いていて、思いのほか問い合わせの反響が多くなった場合などは、上手くバランスを取って業務をこなしていかなければならない。

またそれぞれの行動指標を設定することも忘れてはいけない。

仲介業であれば、物件入稿数や追客の頻度、管理業であれば、オーナー訪問数や巡回スケジュールなど、「結果」の指標よりも「行動」の指標も設定しておいたほうが良いだろう。

それぞれの業務のシナジー効果を生み出す

たとえば物件写真撮影と巡回を同時に行ったり、管理物件を内見した際のユーザーの反応をオーナーレポートに記載するなど、それぞれの業務の相乗効果を図り、効率化を目指す。

どうしても仲介と管理の業務をバラバラに行うと、工数はかなり多くなる。

しかし、それぞれ補完できる業務を行うと、工数をかなり削減できる。

例としては以下のような業務だ。

・反響対応時にリーシングレポートに入力をしておく
・自社管理物件の内見時に気づいたポイントを巡回時に改善
・巡回と写真撮影を同時に行う
・申込のオーナー報告の際に、次回の募集賃料の相談や現在の募集状況の報告を行う

細かいところだが、こうした業務を上手くマネジメントして効果を出している店舗もあるので、是非実践してみてほしい。

トラブルの対応方法をマニュアル化し、効率化を図る

仲介業であれ、管理業であれ、時間を取られてしまうのは、トラブルの対応である。

仲介業でのユーザーとのトラブル対応もあれば、管理業における入居中のクレーム対応などもある。

勿論、アウトソーシングでコールセンターを導入するのもひとつの方法だが、実際の具体的な対応は、現場で行うことが多い。

とある不動産会社では、仲介業で想定されるクレーム対応方法と管理業での入居者の要望の対応やクレーム対応方法を全てマニュアル化していた。

これにより、大幅な工数の削減が図れたそうだ。

実際に、漏水や騒音などは、比較的に起こりやすいクレームだし、仲介でのトラブルも「伝えた、伝えていない」が原因のトラブルが多い。

共通のトラブルを型化するだけで、かなり業務改善が図れるだろう。

規模や目的によって、仲介業と管理業を両立する方法は、変わってくるが、今回紹介したように、「組織的に役割を明確にすることが可能かの検証」、「店舗やひとつの組織内で行う場合は、その業務比重の確定」、「効率的に同時に行える業務の整理」、そして「トラブル関係のマニュアル化」を図ってみて欲しい。

仲介業、管理業をうまく両立できれば、不動産会社にとって、大きな成長の機会になる。

是非、試してみてほしい。

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