仕事柄、仲介営業スキル向上の研修を行うことが多い。確かに仲介業では営業力がものをいう。
どんなに反響を多く獲得したとしても、申込を獲得できる営業力が無ければ数字は上がらない。またこうした研修を行ういっぽうで、「営業の標準化の確立」のような相談を受けることもある。なるべく営業メンバーの個の力に頼らず、全員がそれなりに数字を立てることができるようになるための社内システムを確立することが狙いだ。
実際、最近はこうした「仲介営業のシステム化、標準化」を推進している仲介会社が増加している印象だ。これまで個人の営業メンバーの力に頼っていた「営業力」がウリだった仲介会社が、こうしたシステム化に切り替えることは、珍しくなくなった。
このような背景には、業界全体の働き方や時代の流れなどが関係しているのだろう。
そこで、今回は仲介営業のシステム化、標準化をするために何が必要なのかを紹介したいと思う。
仲介営業を徹底的にシステム化するには?
スタートは業務の可視化から
まず営業のシステム化を行うにあたって何よりも重要なことは、「業務の徹底的な可視化」だ。当然ながら詳細な業務を把握できなければ、標準化をすることは不可能である。
物件入稿から引き渡しまで全体の業務を俯瞰して、大枠の自社の業務を可視化してみる。そしてその大枠の業務をさらにかなり細かく可視化していく。
実際、頭ではわかっていてもこうした実業務を可視化する作業は意外と社内で実施したことがない仲介会社が多いだろう。業務改善にも繋がるので是非一度試してみてほしい。
既存の販売されているシステムで解決できるものの導入検討
可視化した業務のなかで、現在販売されているシステムで解決できるものとそうではないもののを切り分ける作業を行う。
たとえば物件入稿システムや自動追客システムなどは今でもかなり精度の高いものが販売されているので、このあたりの導入を検討してみても良いだろう。
勿論、コストのバランスを見なければいけないが、その際は、現在発生している人的コストと比較しなければいけない。
わかりやすく言えば物件入稿の作業にどれだけの人数が、どれだけの時間を使ったか、そしてその発生した人件費を算出して比較検討する必要がある。
マニュアル、トークスクリプトの制作
ここまでが仲介業務の効率化のステップだが、これだけでは「営業のシステム化」とは言えない。あくまでゴールは営業をシステム化し、売上の底上げを図り、営業メンバーの数字のムラを減らすことだ。
次のステップは、「ベストな対応」を徹底的に可視化することだ。可視化するべき業務は以下のようなものである。
- 反響の追客電話
- メールチャット対応
- 来店時の応対
- ヒアリング方法(ヒアリングの順番)
- 物件の提案方法
- 物件の絞り込み
- 内見時のトーククロージングトーク
- 申込時の注意点、契約の進め方
などである。
一見気が遠くなる作業に見えるがこれらの業務のマニュアル、そしてトークスクリプトを作成する。
ちなみに上記の業務のマニュアル、トークスクリプトを制作するために、およそ1年近くかけて要した仲介会社もある。とても長く感じるかもしれないが、しかし、それほど価値のあるものである。
実際、マニュアルやトークスクリプトは、かなり細かいところまで作り込まなければいけない。
たとえば、問い合わせをしたユーザーに対して、「どのような内容の電話をかけるのか」をしっかりと言葉としてマニュアル化し、さらにユーザーの答えの内容を何パターンか想定し、それの返答内容もパターン毎に作り込んでおく。またトーク内容だけではなく、声の大きさや喋り方のスピードなども基準を設ける。
また内見時には、ユーザーの反応に応じた顧客対応方法を網羅しておく。さらにクロージングのタイミングや話す内容などもマニュアル化しておく。
繰り返すが、かなり細かい作業になるが、「営業のシステム化」を作り上げてしまえば、その後の多くの課題が解決に向かう可能性が高い。
もし全ての業務のマニュアル化、トークスクリプト化が難しい場合は、強化したい業務の部分から優先して進めて良いだろう。
チェック機能を実装させる
営業をマニュアル化することで、大枠の営業のシステム化は完成するが、重要なことは、これを「運用」できるかどうかだ。
そこで各マニュアルを営業活動のなかで、実行できたかどうかをチェックするシートなどを作成し、それを各営業メンバーにチェックしてもらうようにしておく。
実際にこうしたマニュアルやトークスクリプトを作ったものの、運用されていないケースも多い。
必ずシステムを作るうえでそれを実行できたかどうかを確認する体制を構築しなければいけない。
各メンバーへの周知と育成
最後は各営業メンバーへの周知とシステムを運用するための育成である。
当然、こうしたマニュアルやトークスクリプトの運用を何の説明もなしに営業メンバーに知らせるだけでは、逆効果である。こちらもかなり細かくケアをしながら徐々に運用をしなければいけない。
なかにはこうした営業システムの制作と同時に社員の評価制度を見直す不動産会社も多い。あくまで使うのはメンバーのため、フォローを忘れてはいけない。
メンバーが退職をして新しいメンバーが入社しても、営業力が落ちない。これが仲介会社の理想の形のひとつなのは、間違いないだろう。
そのためには強固な営業システムを構築することは避けられない。なかなか骨の折れる作業だが、是非参考にしてみてほしい。
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