住宅展示場がある会社であれば、土曜日、日曜日、祭日などに黙っていても新規のお客さんがバンバンやってくるのでは、と思っている方も多いでしょう。
しかし、近年は展示場来場者も減少の傾向にあることに加えて、住宅総合展示場ならまだしも1社だけで単独で建っている展示場の場合は、そもそも来場が少ないという問題点があります。
また、 営業マンが4人詰めている住宅展示場に対して、1か月に4組のお客さんが来場したとすれば1人当たりの新規名簿はたったの11件ということになります。
しかも、その一件が全く建築計画のない方であったり、家を建てたばかりの方が純粋な見学でやってきたというケースだってありうるのです。
運が悪いと2~3か月営業活動をしても、新規客をほとんど引っ張れないということも珍しくはありません。
だからこそ工夫を凝らした源泉営業を積極的に行う必要があるのです。
自社の建築現場の周辺に挨拶を兼ねた飛込み訪問する
自社で施工する住宅現場の情報は当然わかります。
例えば7月1日にある現場が着工するとしましょう。
順当に行けば2ヶ月もあれば上棟します。
この時期を見計らって、建築現場の周辺のアパートや、古そうな一軒家にこんな感じで訪問します。
営業「こんにちは。すぐそばで工事をしています〇〇工務店と申しますが、工事で何かお困り事とかないですか?」
住人「いえ、特には何もないですよ」
営業「そうですか、安心しました。ところで弊社は〇〇工務店と申しますけども、今回のお宅が完成した時に新築現場見学会と銘打ちましてお披露目会を行います。その際にはご近所さんにも是非色々ご覧頂きたいので、またお声かけするかと思いますのでよろしくお願いいたします」
住人「でも、 うちは家を建てる予定なんかないわよ」
営業「いえいえ、建築のご予定とは関係なく、我々の家づくりをぜひご覧いただきたいという企画ですので、それこそ新築したばかりの方でもお越し頂きたいんですよ」
「建築を考えていますよ」を期待する必要はない
こんな感じで周囲を数十件訪問してみてください。
時間がなければ古めの戸建てや、アパートなどの賃貸住宅を回ってみましょう。
もし時間があるならば、明らかに新築直後と思われるようなお宅でも構わないので、同じように声をかけてみるのです。
「実はちょうど考えているんですよ」
こんな返事を期待するのではありません。
とにかくたくさんの人に声をかけて、現場見学会に誘うのです。
チラシを撒いただけではなかなか集客はできませんが、このように一度でも顔を合わせると話は変わります。
しかも、口頭で「家を建てる予定などなくても構いません」と明確に言い切ることがポイント。
家を建てたばかりの人や、絶対に新築をすることがない人が来場したら無駄ではないか?
こう考える人がいますが、明らかに間違っていると私は断言します。
工務店の立場からすれば、 自社の建物を見学してもらってそれが口伝で誰かに伝われば御の字と考えましょう。
そして、もう一つこんなことが考えられます。
訪問した時には「家を建てるお金なんかないわよ」と言っていた人が、 いざ実物の建物を見ると風向きが急に変わるということが頻繁に起こります。
住宅展示場勤務経験者はこの法則を知っている
展示場を所有していない工務店の営業の皆さんは気づきにくいかもしれませんが、ハウスメーカー営業マンのように住宅展示場でたくさんの接客をこなしているとこの法則に気づくのです。
営業「いらっしゃいませ。住宅のご予定は結構固まっていらっしゃるんですか?」
客 「いつかはマイホームが欲しいなあ、とは思っているんですけどね。あと5年はしっかりと自己資金を貯めてそれからなんて考えてるとこです。ですから現状では全く予定がありません、すいませんね(笑)」
このような感じで始まったお客さんが、見学をしているうちにだんだんその気になっていくのです。
特に、うまく着座をしていただいて資金計画の話などをすると、奥さんから「うちだって今いけるんじゃないの?」という声が漏れたりするからこの仕事は面白いのです。
展示場へ来た時は、建築計画が本当に希薄であっても、 実際に建物を見てしまうと気分は高揚します。
しかも、資金計画をした結果、現状でもできるということが見えてくると、俄然その気になってしまうのです。
とにかく自社の建物を見てもらうことを目指す
これに尽きるでしょうね。
ハウスメーカーなど住宅展示場を所有している会社と、展示場を基本的に持っていない地元の工務店の違いは、このようなふわふわしたお客さんとの接点があるかないかなのです。
地元の工務店に足を運んで話をするということは、それなりに話が固まっていることがほぼすべてでしょう。
競合会社はあるかもしれませんが、商談の土俵にはしっかり乗るお客さんしか来ないはずです。
見極めをするという作業がないというのはメリットかもしれませんが、数多くのお客さんと接点を持てるハウスメーカーはそのぶん有利といえます。
現場見学会に来てもらう
まずは現場見学会を企画してもらわないと話にならないのですが、イベントを立案をした上でその現場の周辺のお宅を、飛び込み訪問チックな手法で回ってみるのです。
純粋な飛び込み訪問は大変ですが、このやり方であれば精神的にもものすごく楽でしょう。
そして型通りの挨拶や告知をした後に、現場見学会の話を切り出すのです。
話を切り出したらそこに来てもらうよう要請してください。
キーポイントは、家の建築予定がなくても構わないことですよ。
このようにお話をしてくると 現場見学会を企画すること自体が源泉営業の一つということが分かってくると思います。
リフォームも同じ理論が働く
読者の方にはリフォーム営業の方も多くいらっしゃるでしょう。
リフォーム営業の経験者は経験的に分かっているかもしれませんが、外壁のリフォームなどが発生すると、近隣の古い家でも外壁のリフォームが始まったりします。
訪問販売専門の外壁業者になると、一軒の工事現場が発生すれば軒並み周囲の古い家を訪問営業します。
そして驚いたことに、それなりに受注を取ってしまうのですよね。
東北地方であった実際の話
建築後7年程度しか経っていない新築の家でしたが、施工に問題があったのか、外壁のコーキングがボロボロになり外壁そのものも傷んだ家がありました。
このお宅の斜向かいの家が、外壁リフォームの工事をしていたらしいのですが、ある時その工事業者の営業マンが突然自宅にやってきて「外壁に問題があるように見えるので、急いで外壁リフォームをやった方が良い」と言われたのこと。
そして、通常よりは明らかに高い、200万円を越すような金額をその場で提示されたのですが、なんとそのままハンコを押して契約をしてしまったのです。
私の手元にはこのお宅の奥さんを取材したビデオがあるのですが、奥さんがどうして飛び込み訪問の業者と簡単に契約をしてしまったのかという理由が詰まっています。
②気になってはいたが工事のお願いをするところまでは行かなかった
③気になっていたところに突然外壁リフォームの訪販営業がやってきた
④値段が適正かわからなかったが熱心だったので押し込まれた
⑤はす向かいでの工事を見て「うちも考えた方がいいかもしれない」という気持ちになっていた
この他細かいことはいろいろお話をされていましたが、注目してほしいのは⑤になります。
もともと外壁が気になっていたのは事実ですが、 目の前の家で外壁工事をしていたということが大きな原動力になったんです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。