名古屋の話ですが、8月の下旬にある住宅会社の展示場に来場したお客さんがいました。
30歳前後の若いご夫婦だったのですが、対応した若い営業マンでは全く歯が立たないような質問をバンバン繰り出してきたのです。
たまたま対応に出たのが新卒営業だったこともあり、むちゃくちゃな接客になったのですが、昔のお客さんと比べると徹底的に下調べをしてやってくる人が増えたことを実感させられました。
しかし、住宅営業を生業としているからには、こうしたお客さんにもパーフェクトに対応していかなくては受注は取れません。
スタート時からやる気まんまんの客さん
この会社の住宅展示場は2階の事務所があるのですが、その中には展示場の隅々まで確認することができるモニターがあります。
昔と違って展示場にカメラをつけることがごく当たり前になりましたので、お客さんも特に不審に思うこともありません。
多くの住宅展示場で、営業とのやり取りを別室で確認することができるようになったのです。
また、10年前であれば、映像は確認できるものの、声まで拾えるシステムを使ってる会社は少なかった記憶があります。
しかし、最近は機器の発達によって価格も安価になったので、クリアな映像と音声でチェックできる時代になったのです。
「色々聞かせてくださいね!」
さて、このご夫婦は玄関に入るなりいきなりこう切り出してきました。
対応に出たのが男性新入社員のA君だったのですが、この一言を聞いてかなりビビった様子がモニター越しにもありあり。
モニターを見ていた私もこのシーンは聞いていましたが、入場するなりいきなりこう切り出すお客さんはめったにいるものではありません。
私が営業でも、このように宣戦布告されれば、それなりに身構えますし「間違いないように答えないとやばいな・・・」と思います。
全国の住宅会社を回っているのでよくわかりますが、以前と比べてお客さんの質問が随分と鋭くなってきました。
C値、Q値、UA値など他の会社の数字を出した上で「こちらの会社はどのような数字ですか?」と突っ込んできます。
この質問に口ごもったりすれば話になりませんが、間髪入れずに答えたとしても、他で見学した住宅会社の数値が上であれば、これまた対応に窮することになります。
こんな質問が実際に出た
①「30年保証とのことだが社歴が10年しかないのでは?」
この質問にはたしかに唸ってしまいますね(笑)
建物を含めて30年間は様々な観点からアフターサービスをすると高々に謳っているものの、社歴が10年しかないということは、この住宅会社で建てた家で10年以上経ってるものは何一つないということです。
A君がまごまごしていると、お客さんはさらに突っ込んできました。
「ひょっとしたら築20年ぐらいで急激に建物が劣化する可能性もありますよね?そのリスクを会社はどの程度と見込んでいるのですか?」
雰囲気はさほど険悪ではなく、半分笑いながらという感じなのですが、とにかくA君は答えに窮してしまったのです。
②「会社の財務状況を教えてください」
この手の質問をぶつけてくるお客さんはまずいないのですが、この時はストレートにきました。
A君は残念ながらこの質問には全く答えられず、完全に撃沈状態で完敗でした。
ただ、一般的に考えると新卒の住宅営業担当者が、会社の財務内容まで分かるはずがありません。
ですから、この質問には正直に「そこまでは分かりません」で構わないと思います。
しかし、A君の問題点は会社の資本金やグループ会社など、ホームページを見れば分かるような内容すら全く頭に入っていなかったことにありました。
お客さんはそれを調べた上で質問をぶつけていたのです。
「グループ会社に〇〇というのがありますけども、どんな会社なんですか?」
お客さんはこんな質問をぶつけてきたのです。
ホームページを下調べしなければ絶対に出てこない内容ですが、A君が答えられないのを確認すると、これ以上聞いても無駄だと思ったのかそれ以上は突っ込んできませんでした。
③ 「メーターモジュールと尺モジュールではどちらがいいの?」
これはよくある質問ですが、なぜかA君はまともに答えられませんでした。
A 君の会社は尺モジュールを採用しているのですが、そもそもメーターモジュールという言葉自体を知らなかったのです。
これには私も驚きました。
入社直後の4月であれば仕方がありませんが、この話は8月の末のことなのです。
このぐらいのことが答えられなければ、お客さんの信頼を失うのは明らかでしょう。
④ 「どんな家づくりの思想を持っているのですか」
最後はトドメとばかりにこんな質問を投げかけられたのですが、A君はやはり戸惑うばかりで大轟沈。
後で社長に聞いたのですが「確かにそんなこと教えていないし、そもそもその質問に答えるのはなかなか難儀だよね」と天を仰いで唸っていましたね。
これについては会社に責任があると私は考えています。
基本中の基本である質問だと思うのですが、皆さんはこれに対して的確な答えを出せますか?
会社の思想や理念を語れなくてはアウト
盲点とも言える見逃しがちなポイントなのですが、会社の思想や理念はもちろんのこと、どんな家づくりをするのかなども明快に話せなくてはいけません。
私のコンサルティング先では必ずこのことを確認し、明快にすべきだと助言をさせていただきます。
「毎日住んでいても飽きのこない家」
これをコンセプトにしている住宅会社があったのですが、例えばこのような文言で構わないのです。
ただし、耐震性、耐火性、アフターサービスなどもろもろのことについて、最低限のラインをクリアしているのは当然のことです。
全ての内容が一定のラインの上にあることを条件にして、その中で何が突出しているのか考えてください。
ちなみにこの会社は「毎日住んでいても飽きのこない家」のコンセプト通りのワクワク設計の住宅会社です。
思わぬところに収納があったり、子供が家の中でかくれんぼできるような設計思想もあり、とにかくワクワクドキドキがコンセプトになっています。
すっきりした大空間の家を求める方には全く支持されない住宅会社ですが、ハマる人はドハマりするような楽しい家づくりをする会社です。
そして、このコンセプトを口頭だけではなく、カタログや映像でアピールする準備を整えているのが特徴です。
展示場にある備え付けのテレビには、経費をかけて作り込んだコンセプト動画が準備されていますし、各営業マンのiPadの中にも様々な写真や動画が入っているのです。
お客さんは営業マンを試しにくる
このパターンが増えましたね。
会話の流れで質問をしてくるわけですが、明らかに営業マンの知識を試しにかかっているケースが本当に増えました。
「〇〇ホームさんの欠点は何ですか?」
この質問などは完全に仕掛けに来てますよ。
その場の雰囲気で出たというよりは、あらかじめ聞いてやろうと思って準備してきた質問です。
ただ、このような質問が出るのは、私のような人間の責任もあります。
エンド向けの Web記事や単行本などを私は書いていますが、その中「欠点は何ですか、と営業マンに聞いて試してみよう!」と書いているからです(笑)
5年前に書いたエンド向けのWeb記事ですが、こうした内容をあれやこれやと書いたところ、読者の方から「森先生の言われた通り〇〇ハウスの営業マンに聞いてみました。そうしたらはっきりした返事が返ってこないんですよね。こりゃだめだと思いました」
要約するとこんなメールが来たことがありました。
まとめ
つかみどころのないようなお客さんもいれば、営業マンに会話を合わせてくれる優しいお客さんもたくさんいます。
しかし、あらかじめ質問を準備し、営業マンに対して質問を機関銃のように打ち込んでくるお客さんが最近は非常に増えてきました。
これからの住宅営業は、事前に理論武装したお客さんに対応できる力量が求められるのです。
私の時代は楽でした。
お客さんの知識や情報量が営業マンを上回ることはまずなかったからです。
今の時代にこの仕事につくからには、この辺りを重々承知した上で日々の接客にあたってください。
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