「稀にこういう人っているよね」 皆さんもこう思ったことありませんか。
何千万円もの借り入れをして家を建てるわけですから、皆さん家にこだわりを持ってやってくると思うかもしれません。
しかし、現実には家に対してさほどこだわりのないお客さんも一定数存在するのです。
家の性能やデザインがどうのこうのではなく、マイホームを持つこと自体が大きな目標になっている方たちです。
私はこういう形を否定する気は微塵もなく、それどころか大いに賛同したい気持ちすらあります。
一定の基準をクリアしてさえいれば、家として問題ないともいえますし、そこにお金をかけるよりは、生活そのものに重点を置く考え方があるのも当然だからです。
住宅展示場にやってきたこんな客さん
主人「ネットでシミュレーションをしたことはあります」
営業「家づくりで何を重要視されますか」
主人「特にありません」
奥様「私も同じで価格が安ければ安いほどいいです」
終始この調子で、営業が繰り出すあの手この手は全て封殺されてしまいました。
これはレアケースではありません。
実際の接客シーンを私は数多く見ていますし、住宅営業マンからの個人面談ヒアリングも毎月10件ほど行っています。
その個人面談の中で、こんな感じのお客さんの報告はたまにあるのです。
もちろん、全体から見れば比率は非常に少ないのですが、必ず一定数存在する客層なのです。
この会社は中高級のお客さんを相手にしているので、価格だけで来られてしまうとお客さんと話が続きません。
このお客さんとはそれっきりになってしまったので、この方の年収層や職業というのは分からずじまいなのですが、営業が非常に困ってしまったのは事実です。
何を説明しても暖簾に腕押し
この会社の住宅展示場はかなりのハイグレード仕様にしてあるので、玄関タイルはもちろんのことを居室のクロスも2ランクから3ランクほど、すべてをアップグレードしてあります。
また、展示場内にある調度品や家具も基本的には有名メーカーを使っていて、家具に至ってはイタリアの直輸入ものなどをふんだんに配置してあるという凝りようです。
営業は自社のこだわりや様々なことをお客さんにアピールしたのですが、お客さんは見事に無反応でした。
そして途中で「何かこだわりは?」と切り出したところ、その答えは前述のように拍子抜けする内容でした。
お客さんとの会話を聞いていましたが、予算が少なくて資金計画もカツカツであるという雰囲気はどこに伝わってこなかったんですよね。
ひょっとしたら資金が極めて少なかった可能性はありますが、私の見立てとしては、純粋に家に対する高い要望や欲望がなく、ただの箱として捉えてる感じでした。
繰り返しますが、このような発想自体に対して私は批判的な意見全くもっていません。
ギリギリのローンを組んで、家に全精力を傾けることに対して私は大きな疑問を感じていますし、家に関するコストは極力抑えた上でその箱の中でゆったりと過ごせば何ら問題ないと思います。
とにかく、個人の考え方や思想があるので、営業マンはウイングを広げてどんな形にも幅広く対応していかなくてはなりません。
どんな対応は正解なんだろうか
①営業をしない
この考え方もありだと思います。
あなたの会社が高級レベルの仕様だとしましょう。
この前提でお客さんを取りに行くとすれば、仕様をどんどんと削ぎ落としていく必要に迫られるでしょう。
標準より2ランク上のクロスを使ってるとすれば、そこから3ランク落として標準を下回るようなクロスにするでしょうし、30万円程度の便器を付けているのであれば半額の15万程度に落とすことをしなくてはなりません 。
こうした努力の結果受注を取れたとしましょう。
しかし利益率が非常に少なくなるでしょうし、会社が目指す方針の住宅とはかけ離れたものになるはずです。
仕事がなければ取りに行かざるを得ないのですが、余裕があるのであれば、このようなお客さんは縁がなかったと思って追いかけないほうがいいのではないでしょうか。
②お客さんの要望を無理やり発掘する
雨露さえしなければ良い、は流石に言い過ぎかもしれませんが、地震で潰れることもなく、家の中が結露でベタベタになることもなく、 C 値 Q 値が驚異的な数字である必要などないという方であっても、こんな問いかけをすると折衝の糸口を見つけられるかもしれません。
お客様「そうなんですよ。どの住宅会社に行っても驚かれるのですが、極端な話、雨露さえしのげれば十分だと思っています」
営 業「ではこんな質問をさせてください。今はアパートとのことですが、今の暮らしで何が一番不満ですか。例えば収納が足りないでもいいですし、キッチンが狭いでもいいですし、もしくは朝起きた時に猛烈に寒いとか、何か該当するものはありませんか」
お客様「確かに冬の朝は起きると猛烈に寒いですね」
これは実際にあった会話です。
お客さんのこだわりが全くないことに困り果てた営業が、まさにこのようにお客さんに問いかけたところ、大きな不満点を聞き出すことに成功したのです。
たまたまこの会社が断熱に自信があり、この点を大きくアピールしていたこともあったので 、営業マンは断熱に的を絞って突いていきました。
最終的にこのお客さんとは契約できました。
この会話がキーポイントになったかどうかは断言はできませんが、営業に確認したところ、打ち合わせの最中、湿気対策や断熱性云々の話を熱心にしたところお客さんは大変興味深く聞いていたと話していました。
価値観の強要は危険
今回の話はレアケースですのでさほど気にする必要はないかと思います。
ただ私が普段から気になっているのは、会社や担当営業者が持つ価値観の強要です。
「家とはこうあるべきだ」「家の良し悪しが家族の幸不幸を決定する」何でもいいのですが、自分の価値観では素晴らしいかもしれませんが、他人にとってはどうでもいいことかもしれないのです。
お客さんの取材を行ってるとたまにあるのですが「〇〇ホームの営業さんは大上段から構えて何か押し付けがましいんですよ」と辟易した言われます。
これはあなたが考える以上にたくさんある反応だと考えてください。
あなたは良かれと思ってアドバイスしているかもしれませんが、お客さんにとってはそれが大きなお世話であるかもしれないのです。
まとめ
家のデザインや性能にほぼほぼ無関心な人もたまにはいる・・・これを頭に入れて欲しかったので、今回の記事のテーマとさせてもらいました。
一般的な話ではありませんし来場する頻度もかなり少ないのは事実でしょう。
しかし、 家に関する考え方は人によって千差万別です。
あなたの常識では、家を建てる以上こだわり抜くのが当たり前かもしれませんが、別の価値観を持った方もいるのです。
明日からの接客では「家にこだわりを持ってない人も世の中にはいるんだな」と頭に叩き込んだ上で接客に臨んでください。
心の準備がないと、このような方の来店に対して対応できずにまごまごしてしまいます。
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