「良ければいくらでも出すよ」のNさんと契約した営業マンは〇〇な男だった

ごく最近仕入れたネタをお話ししましょう。

工務店やハウスメーカーには様々なお客さんがやって来ますが、当然のことながら最初は初対面です。

年収が厳しくて何とかして住宅ローンの審査を突破することが全ての目標であるお客さんがいらっしゃる反面、お金に糸目をつけず「気に入ったらいくらでも出すよ」という層の方も、もちろんいらっしゃいます。

今日お話したいのは、こうしたアッパー層の方の実例です。

建物本体価格が1億円を超えるような案件ですが、最終的にこれを受注した男性営業マンからじっくり話を聞きました。

土地建物込みで数億円

とにかくお金持ちということでいいでしょう。

営業によると「予算は特にありません」と言われ、初回面談で面食らったとのこと。

最初は少し訝しげに感じたこともあったと話していましたが、ものの十分も話すうちに「この人は本物だ」との結論に至ったとのこと。

相当の年収があるので、勤め人ではなく自営業で、社員もかなり抱えている社長さんです。

仕事柄、細かい数字を扱ったりデータを見たりするので、とにかく家の数値や性能を徹底的に聞きこまれたとのこと。

その他、こまごましたこともたくさん聞きましたが、要は非常に難しいお客さんということです。

結果的には紹介した土地に自社が設計したプランを建て、数億円という金額になったわけですが、契約に成功した理由がなかなか興味深いものだったのです。

「ロイズのこと知っているんだ」

ロンドンに本社がある保険会社のロイズをご存知でしょうか。

私はたまたま知っていたのですが、一般的な保険会社ではなく再保険の世界最大手です。

営業マンの自己分析にはなりますが、彼は確信を持ってこんな話をしていました。

「仕事関連の雑談の話になったのですが、その時お客さんが大きな事故があったら保険会社も潰れてしまうので、再保険会社というのが存在するんだよね、と話したのを受け、私がロイズみたいな会社のことですよねとすぐに切り返したのです」

ふむふむ、と懐く私に彼はこう続けました。

「ご主人が私の顔をふっと見て、よくロイズっていう名前知っていたね、と感心したように話したんですよね」

つまり、一般的にはこんなことを知るわけもない、ロイズという再保険会社の名前をさらりと出した営業に対して「この男はなかなかレベルが高い」と判断したのだろうということでした。

ただ、営業の彼も私もロイズの中身などは全く知りません。

テレビか何かでたまたま耳にしたのを記憶していただけで、門外漢である保険のことなど知る由もないのです。

しかし、営業によるとどうやらこの一件から、お客さんの信頼度が上がったのは間違いないとのことでした。

競合会社の〇〇工務店は途中で脱落

この受注合戦には当然のことながら競合会社が存在していました。

小さな工務店から全国会社まであったのですが、その中の一つが〇〇工務店です。

誰もが知るこの有名な会社ですが、この家の性能のよさに惹かれたご主人は、最初はどっぷりとはまっていたとのこと。

特に緻密な視点を持つ方は、住宅会社が発表している数値を徹底的に研究して比較するのです。

「データは素晴らしかったですよ」

営業から聞いたのですが、ご主人も奥さんも〇〇工務店の提示しているデータには、最初からかなり惚れ込んでいたらしいのです。

ほぼほぼこの会社で契約を決めようと思っていたらしいのですが、 営業担当者のちょっとした動きが気になりはじめ「もう一社ぐらい見ておこうか」とのことで動き始めました。

そこで出会ったのが、結果的に受注を取った営業マンなのですが、どんなに性能が良くてもやはり担当営業のレベルが低いと受注が取れないということがよく分かる一件でした。

〇〇工務店の営業は自滅した

ビジネスマン,下向き矢印

単なる御用聞き営業マンだった

ご主人は営業に対してどんどんと要望を出すわけですが、〇〇工務店の営業マンは、希望の間取りはきっちり描いてくるものの、それを上回るプロの意見が皆無だったらしいのです。

ご主人の考える設計は凝りに凝っていて、実にユニークだったらしいのですが、〇〇工務店はお得意の設計力でこれをかなり満足させるようなプランを持ってきたものの、それ以上の提案がなかったようです。

お客さんの提案を具現化させるだけで、それに対するダメ出しがほぼ出てこなかったのが大きな不満の原因となりました。

ご主人の本音としては「プロの意見が聞きたかった」ということでしょう。

話をしていて面白くなかった

これはご主人も奥さんも明快に話していたらしいのですが、〇〇工務店の担当営業は、引き出しもあまりないし、幅も感じられないし、いわゆるつまらない営業マンだったらしいのです。

それに対して受注を取った営業マンは、地方の進学校を卒業した後にプロボクサーとしてデビューしたと、かなりユニークな経歴を持つこともあり、ご主人も奥さんも家の話はそっちのけで、ボクシングの話やスポーツの話をよくしていたといいます。

その流れの中で奥さんから出た言葉が「〇〇工務店の営業さんは家の話しかしないのよね。だから、ちょっとつまんないというか、面白みがないかな」とのこと。

これは非常に大事なポイントで、いくら優秀な営業で設計に対する知識もあり、営業として抜かりなく完璧であっても、話をしていて面白くない人間とは、誰しもがあまり付き合おうという気にはならないのです。

「私は熱く訴え掛けましたからね!!」

レベルが高く、一見すると家の価格や性能などのデータだけですべてを決定しがちに見えるお客さんがいますが、判断を誤ってはだめです。

「こういうタイプの人は情に訴えかけてもダメなんだろうな」と一瞬思ってしまうのですが、これは大きな間違いだと私は断言します。

どこまで行っても、当たり前ですがお客様も人間です。

感情があり、情を持っているわけです。

商談であれプライベートであれ、熱い気持ちで訴えかけられれば、その話を真剣に聞いて受け入れようとの気持ちが高まるのは当たり前のことでしょう。

受注をとった会社の営業マンは、表情も豊かだし、身振り手振りを使って話をする癖があります。

人によっては若干ウザったらしいかもしれませんが(笑)、悪い人間だとは誰も思わないでしょう。

結論は熱意

今回のケースに限ってはとの注釈がつきますが、担当営業マンの自己分析と私の客観的分析では「熱意が相手を圧倒的に上回った」から契約を取れたと結論づけられます。

彼が一番驚いていたのは、折衝当初はデータや数字だけを見て住宅会社を決めるお客さんだと思っていたのが、途中からそれだけではないことに気づいたということでした。

先入観を持ってはいけないとの、誰もが若いころに注意されたことを思い出さずにはいられない一件でした。

まとめ

この手の話はいくらでもあります。

事例を入手したらまたご紹介したいと思いますが、今回のお客さんは、土地建物合わせて数億円というアッパー層の方。

ところが、アッパー層だけに、値段以外の部分を冷静に見る余裕があった方なのでしょう。

予算が本当に厳しい方であれば、営業担当者の性格や人柄が大事だとは分かっていても、まずは安いということが絶対条件にならざるをえません。

ところが余裕のある方は、お金に対してシビアなのは当然ですが、 営業マンの人柄や奥深さを重要視する考えを持つのと同時に、じっくりと観察する余裕もあるのです。

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