招かれざる展示場来場客

住宅展示場には一戸建てを建てたい方がやってくるわけですが、総合住宅展示場のようにたくさんの来場客があると、中には変わった人や困った人もちらほらとやってきます。

今日ご紹介するのは困った人の実例です。

家を建てたい夢があるのは本当かもしれませんが、少し話を聞いているとどうやら現実的な話ではなく、単なる時間つぶしをしに来たとしか思えないケースがごく稀にあります。

私が目の前で見た話や接客した営業から得た情報などをまとめて、皆さんにご紹介して行きましょう。

福岡県の某総合展示場で有名な妙齢女性

妙齢が女性とだけ言っておきましょうか。

福岡県内のある総合住宅展示場で、顔と名前の知れた大変有名な女性がいます。

最初にご紹介したいのがこの女性なのですが、結論を先に申し上げますと、住宅会社の営業マンが世間話に付き合わされたケースです。

昨年末にぶらりと展示場にやってきたこの女性

ちょうど一年ほど たつのですが、福岡県内のある総合住宅展示場に私は足を運びました。

若手営業社員五人との面談をリアルで行っていたのですが、三人目が終わった頃に、来場者を知らせるチャイムがなったのです。

私はちょうど新卒の男性営業社員と話をしていたのですが、その彼がさっそく接客に出ていきました。

私はリビングにいましたので、彼の接客を見ようと考え、リビングの片隅に立って玄関で交わされる会話を聞くことにしたのです。

「これはSランクのお客さんだ!」

リビングにいても玄関先の声は聞こえるので、聞き耳を立てて話を聞いていたところ、営業とのこんなやり取りが聞こえてきたのです。

女性「土地は市内のあちこちにあるのだけども、建築地をまだ決めかねているのよね。住宅ローンを借りるつもりもないし、主人も他界して私一人だから、そんなに大きなお家は要らなのんだけどね。でも、どうせだったら、早くきれいな家にして住みたいじゃないの」
営業「いろいろと住宅会社を回られたのですか?」
女性「かなり回ったわよ。もうそろそろ具体的にプランを書いてもらって、見積もりを出してもらおうかなぁ~なんて思ってたところなのよ」
営業「そうですか! ぜひ弊社の展示場をご覧いただきたいので、まずは、どうぞお上がりください・・・」
女性「それでね、ちょっと聞いてほしいのだけども、私が持っている土地というのがね、100坪のもあれば300坪もあるのだけども・・・」

最初の5分ぐらいだったと記憶していますが、このような形で住宅会社としては最高の情報をどんどんと自己開示してくれるのです。

営業はもちろんですが、この私も心の中で「最高のお客さんが来たな。彼ひとりでは厳しいかもしれないから店長でも呼んでこようかな」 と考えていました。

ところが、なぜかこのまま10分たっても15分経っても 一向にリビングにお客さんは上がらないのです。

営業もお客さんに「さあ、お上がりください」と誘導するのですが、営業にほとんどしゃべる隙を与えずに、自分の話を延々と続けたのです。

嫌な予感がしてくる

さすがに15分もこの調子だと、私も「これはちょっとおかしくないか?」と思い始めました。

結局このまま40分程度靴も脱がずに玄関の椅子に座って、ほぼ一方的に女性が話し続けたのです。

営業も最後の方は頭がボーっとしてクラクラしたと話をしていましたが、その後、女性もさすがに疲れたのか「今日はこれで帰るね」と言い残し展示場を後にしました。

実は各メーカーで有名な世間話好き女性だった

接客を終えた後に担当営業と話したのですが「いやぁ、参りましたよ。 最初はすごいお客さんに当たったと思ったのですが、延々と自分の話を一方的に話すだけなのですよね。あの人はこれからどうしたらいいですか?」

ひとまず、女性が書いたアンケートを手にして二階の事務室に二人で戻りました。

そこにいた店長にそのアンケートを渡したところ、彼の口から出たのは意外な内容だったのです。

「あっ、この人だめですよ(笑)」

名前を見た瞬間に気づくぐらいの有名人だったらしく、ふらっと展示場にやってきては、展示場の中を見学することなくすぐに座って自分の話を一方的にまくしたてる女性だったのです。

一年位前にこの店長自身も接客したことがあるようで、その時の話を聞くと今回と全く同じ状況だったのです。

私もこんな人に騙されたことが

注意,ビジネスマン

私の現役時代なので少々古い話になりますが、とんでもない人に引っかかった経験をお話ししましょう。

私は2年生でしたが、電器店を営む自営業の男性が一人で展示場に来場しました。

いつもの接客を私はしたのですが、トントン拍子に話が進んでアポも簡単に取れたのです。

更地を所有していて、建物は60坪程度の二世帯でしたので、接客した私はもちろん意気揚々とアポイント奪取を店長に報告しました。

2年生ということもあり、先輩による同行もなく私一人で淡々と折衝進めたのですが、途中で何かしらのトラブルやストレスも感じることなく、話はグングン前に進んでいくのです。

ファーストプランを提案すると「なかなかいい感じだね・・・あの・・・もう少しだけ直してくれる?」こんな感じで次回のアポイントもすぐ取れました。

再度プラン提案をして、あとはクロージングだけでしたが、ここでお客さんから予期せぬ言葉が発せられました。

「一回ここで考えたいので、その気になったら連絡するね。それまであなたからコンタクトしなくていいから」

冷たい感じであっさりと言われた感触を、今でもはっきり覚えていますが、それまですんなりと進んでいた商談がいきなり断ち切られたのです。

営業課長に相談してみた

連絡するなと言われたので私も動けずにいたのですが、時間はあっという間に1月ほど経過してしまいました。

そんな時にあった営業会議で、この案件を目ざとく見つけた営業課長が「この人どうなっている?そろそろ返事もらえよ」と詰めてきました。

営業課長だから当然のことですが、商談の経緯を私がすると営業課長は私を止めてこう呟いたのです。

「あれ・・・この名前は見覚えがあるな。あっ、思い出した、この人電気屋さんだよな。17~8年前だけど、まんまといっぱい食わされたことがあるよ。この案件は終了だ、次に行け」

なんと全く同じ経験を、営業課長もしていたのです。

どうやらハウスメーカーに無料でプラン提案をさせて、間取りのアイデアをパクったわけです。

こんな信じられないような経験を私はしたのですが、総合展示場で何十人何百人と接客をしていると、いろんな人が来るものだな、とその当時も感じたものです。

調子が良すぎる人は気をつけろ

住宅営業における鉄則の一つです。

私が現役時代に経験したケースでは、折衝はどんどん進むのですが なんともよそよそしい雰囲気が実は気になっていました。

話が進んで煮詰まってくれば、私との人間関係もこなれて温かい空気感になるのが普通です。

暖かくはならなくても、シビアな目でプランや見積もりを精査する張り詰めた雰囲気になるなら理解できます。

しかし、そのどちらでもなく、微妙な距離感をとりながら目を合わせることもあまり無かったのです。

それについては、私も違和感を抱いていました。

もう一つは、お客さん側に悪気がなく、折衝がどんどん進むパターンです。

無料で図面を引くと言っているのはこちら側ですが、ほとんどのお客さんは、無料とは言いながらやる気もないのに図面を描いてもらうのは気が引けるのが普通でしょう。

しかし、人は色々です。

「図面を無料でお出ししますよ」

この言葉を額面通りにとって、せっかくそういうんだったら図面を書いてくださいとニコニコしながら同意するお客さんも結構いるわけです。

この場合お客さんには全く非がありません。

今すぐ建築するとは言っていないのです。

我々営業マン側が、心の中で勝手に「プラン出したらなんだかんだ言って契約してくれるんじゃないかな」と都合よく解釈しているに過ぎません。

まとめ

今回は二つの事例を話しました。

いずれもお客さんではありません。

前者の女性はお客さんである可能性を全て否定はできないのですが、 諸状況を考えればお客さんではないでしょう。

後者に関しては100%お客さんではありません。

営業社員もそうですが、上司の皆さんはこのような来場ケースもあることを念頭において、部下指導にあたってください。

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