競合で勝った実例の第二弾は、東京で住宅営業を行っているC子さんの話です。
喜怒哀楽をあまり表わさないC子さんですが、彼女に聞くと「昔からよくそれを言われるのですよね(笑) でも気づいたら工務店に就職して住宅営業をやっていました」
今回の事例は、分析型の彼女が競合相手の大手ハウスメーカーを徹底的に研究して、土俵際でうっちゃりを見事にかました事例です。
住宅業界は極めて特殊で、従業員が1万人を超える大手ハウスメーカーに対して、社員数5名の小規模工務店が対等に渡り合える土壌が備わっています。
工夫をすれば大手を食えるのです。
C子さんがどのような考えを持って大手ハウスメーカーを負かしたのか、具体的にご紹介して行きましょう。
C子さんの理論はいたって明快
彼女の営業理論は極めて筋が通っています。
言われてみれば至極当然のことですが、実際にこのような発想を持って行動している営業社員は少ないと言わざるを得ません。
「競合ってある意味簡単だと思いませんか?」
営業ウーマンのC子さん。
彼女が実際に競合した案件です。
① 競合先は大手ハウスメーカーB社
② 相手営業も女性
③ 当初は5社競合で 最終的に2社に絞り込まれた
④ 価格は250万ほどこちらが安い
⑤ 相手の女性営業は40代
⑥ C子さんは20代半ば
大まかなポイントはこの6点です。
ここからさらにポイントを絞り込むと、こちらは小規模な有限会社の工務店に対して、競合相手は全国大手ハウスメーカーということ。
それと、価格はこちらが250万ほど安かったということぐらいでしょうか。
女性という点については、年代は違うものの相手も同じ女性ですから、これについては特に考慮する必要はないでしょう。
このような状況でC子さんは、最終的にこの大手住宅会社を蹴散らしたわけですが、 C子さんの競合対策はこんな感じだったのです。
敵会社が自社より優っている点を考えてみた
最初に行ったのはこれ。
この競合ケースでは、知名度では圧倒的な差がありますし、それに伴って信頼度も、圧倒的に相手が上だと言えるでしょう。
さらにアフターサービスに関しても、ハウスメーカーであるB社はきっちりとそのスキームが決まっています。
この状況においてC子さんはこう考えました。
「一般的な知名度はB社に勝てるわけがありません。この差はひっくり返ししようがないのですが、高い知名度に対してこちらが勝てるのは何かと考えたところ、それは地域で親しまれているとか、その地域で〇〇年仕事をしているとか、もしくは顧客満足度の高さなどに置き換えればよいのです」
皆さんわかりましたか?
私はじっくりと彼女に話を聞いたのでその考え方が理解できましたが、この文章を読んだだけでは、なかなかピンと来ないでしょう。
具体的に解説します
彼女のこの言葉を私が解説しましょう。
敵会社は圧倒的な知名度があります。
これに対して、こちら側の有限会社工務店ではどう頑張っても勝てません。
しかし、これは全国規模でみているので、このような圧倒的な大差がつくのです。
極端な話をすると、この有限会社工務店の本社を中心として、半径500m以内での知名度で比較すれば、全国大手ハウスメーカーと比べてもそんなに遜色はないのです。
C子さんはある資料を見せてくれました。
この工務店は創業45年で、年間10棟ペースで新築案件を地域に根付きながら建築してきました。
単純計算で450棟に及ぶ累計実績になりますが、そのほぼ全ての方にアンケートをとったそうです。
【新築をご検討した時点で弊社のことをご存知でしたか?】
社名を知っていたかどうかの認知度調査を行ったのです。
そうしたところ、有効回答数250件に対して160件の方が、検討以前に社名だけは知っていたとの回答が寄せられました。
つまり、地域は限定ながら、その知名度は64%に及んだのです。
もちろん競合相手のハウスメーカーはこの知名度を上回るはずですが、超大企業対有限会社の比較で考えれば、その差はさほどないといえるのです。
C子さんはこのアンケート調査を資料として、自分のタブレットにしっかり収めていました。
相手がハウスメーカーのときは特にこの資料を使い、地元で45年も続けられていることと、地域での認知度が64%あることをお客さんに示して「弊社は地域ではよく知られた会社です」とアピールしたそうです。
お客さんの反応はどうだったか?
今回C子さんが契約したお客さんは、本社から三キロほど離れた地域の賃貸マンションに住んでいた方だったので、この工務店の存在はもちろんのこと、名前すら全く聞いたことがなかったとのこと。
しかし、この資料を見せられた時ご主人も奥さんも「私たちは知らなかったですが、地元でしっかりとやられている会社なのですね」と 非常に納得された顔をされたらしいのです。
そしてC子さんは、顧客満足度もしっかりと数値ではじき出していました。
顧客満足度調査を円グラフでしっかり示す
お客さんへのアンケート数は大手ハウスメーカーあるB社にはかなわないはずですが、お客さんの満足した割合は分母が違っても、ある程度は比較対象になると思います。
小規模工務店のホームページを見るとわかりますが、最近ではお客様の声を掲載していることが多くなりました。
よくあるのは2~3組のお施主さん案件をホームページに載せて、その声を拾ったものです。
もちろんその内容は「よく話を聞いてくれて満足しました」という当たり障りのないものばかりです。
ところがC子さんの所有していたデータは違いました。
社歴が45年あることが有利に働いているのは事実ですが、質問項目を事細かに分けてそれをお施主さん全員に聞いているのです。
その結果を円グラフにして、お客さんにしっかり提示していました。
【建築後の対応はどうでしたか?】
調査項目の一つにこのような質問があったのですが、これに対して不満がある、やや不満が全体の12%ありました。
この数字は実に絶妙ですよね。
もし50%程度がこの範疇に入るようであれば、こんな工務店に仕事を頼もうとは絶対に思わないでしょう。
また、1%であれば「この調査は怪しいよな」と思われても仕方がありません。
12%という数字が微妙ながら、この会社に信頼を置いていい許容範囲だと私は感じました。
お客さんからすると、気にはなる数字であるものの、ちょっとした行き違いや、お客さんの考えと工務店との意見の相違などがあったのかもしれないと考えてくれるラインだと思います。
事実C子さんが競合勝ちして受注したお客さんも、これと同じような感想を述べられてこう聞いてきたそうです。
「この12%はどんな内容だったのですか?」
C子さんが狙ったとおりの質問をお客さんがしたのです。
C子さんはこれに対してしっかりと答えを用意していたわけですが、内容を具体的に聞くと、それぞれ独自の問題があったに過ぎず、いわゆる会社としての致命的な欠点や問題点ではありません。
具体的な内容は控えさせていただきますが、なんとなくニュアンスは伝わったでしょうか。
自社が優っている点は徹底的にアピール
その逆に、今回は250万円も安いことは圧倒的に有利な点となります。
ハウスメーカー側からすれば、250万円は信用、デザイン性、虚栄心、 アフターサービスなどすべてを含めた物の価値であると説明するはずでしょう。
しかし、前述したように、さまざまな資料やアンケートを駆使して、Bが盛んにアピールする点を潰していったのです。
論点が潰れれば潰れるほど、この250万は大きくクローズアップされることになり、お客さんにとっては悪かろう安かろうではなく、内容的に大きな差はないのに価格差は250万円もあるという認識になるわけです。
これと同じ発想で、自社が優れているもろもろの点について、徹底的にお客さんに対してC子さんは訴求していったのです。
まとめ
今回ご紹介したC子さんのテクニックは、相手より劣っているところを埋める手段を考え抜いて探し出すところにあります。
知名度を埋めるにはどうしたらいいかを中心に今回はご紹介しましたが、デザイン力の差をどのように埋めたらいいか、ハウスメーカーならではのシステム化されたアフターサービス体制にどうやって勝つのかなども考えたのです
一般的には、アフターサービスなどについては「そんなもの大手に勝てるわけがないじゃない。無理に決まっているよ」で諦めることが多いのではないでしょうか。
しかし、いろいろと考えていくと、これらの溝を埋める手段がしっかりあることをC子さんが教えてくれたのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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