私の仕事は工務店やハウスメーカーなどへの営業指導です。
営業指導に特化していますので、とにかくそこに的を絞った仕事を24年間やって来ました。
基本的にはこのコラムを読んでいる皆さんの業界と密接に手を組んで仕事をしてきたのですが、実はエンドユーザー向けの仕事も10%ぐらい行っています。
その多くはエンド向けのウェブ記事執筆ですが、その記事を頼って直接私のもとにコンタクトを取り、相談を持ち掛けてくるエンドユーザーの方が毎月2~3人は必ずいるのです。
もちろん経費はいただくのですが、ほぼ気持ちというか手弁当のようなもの。
それよりも、エンドユーザーから直接聞ける意見が私にとっては極めて有効で、大変興味深い仕事内容なのです。
「優良住宅営業マン紹介は信用して良いのか?」
ここ2~3年のことだと思いますが、住宅系ユーチューバーがある一定の勢力を誇り、住宅会社選定に関する大きな役割を担い始めています。
例えば有名YoutuberA氏が某住宅会社の内容を取り上げたyoutube動画12分にわたって作成しアップしたところ、その翌日には会社のホームページのアクセスが10%以上増加しました。
さらには、その会社が持つ会員サイトの登録者数も、一気に100件増えたと社長が話していたほどです。
半年前に飛び込んだ相談事例
ちょうど半年前になりますが、私のメールにある方からの相談が入りました。
住宅関連の有名WEBサイトで私が書いた記事をご覧になったらしいのですが、私が積水ハウスの営業出身ということを見て、相談をしたいという内容でした。
連絡を取り合った後にズームでお話を伺ったのですが、冒頭にも書きましたように、住宅営業マン選びで失敗したくないから、某ユーチューバーが配信していた、有料営業マンを紹介するサービスに申し込もうかどうか迷っているとのことだったのです。
正直なところ私としては何とも答えようがなかったのですが、少なくとも私が把握している成功事例と失敗事例をお話しました。
成功事例に関しては紹介してもらって大満足な話ですので何も問題はありません。
それよりも失敗事例が大事でしょう。
この時お話しした事例は、お客さんが検討しているユーチューバーとは別のユーチューバーが紹介するシステムだったのですが、その営業マンがどう考えても一定の水準には達していないレベルだったらしいのです。
受注実績は素晴らしいのですが、問題はその中身ですよね。
お客さんが納得した上で契約し、契約した後も「この営業マンを信頼してよかった」と言われるような営業マンなら良いのですが、ブルドーザーのような強引な営業で積み重ねた数字をもって、優秀営業マンと認定していたふしがあるのです。
皆さんも疑問を感じているはずですが、優秀営業マンを紹介するといっても、それを判断して選別するのは至難の業だと思います。
ただ、この時はこれ以上私もお話ししようがないので、成功事例と失敗事例だけを淡々とお伝えして相談を終えました。
最終的には【人対人】となるのが住宅営業
これまでにもこのコラムで幾度となく触れましたが、同じ会社であっても、その担当者によって成否が大きく分かれます。
大手ハウスメーカーになれば、営業マンは3,000人、4,000人という凄まじい数がいるわけですが、とんでもない受注数を誇る営業マンがいるかと思えば10年経っても全く数字数字の伸びない営業マンもいます。
大手の看板を背負っているわけですから、その信用度をもってすれば多少のばらつきはあれど、こんなに差が出るのはおかしいと思いませんか。
つまり、営業マンの知識や人間性など、総合力がお客さんによって評価される世界であることの証左なのです。
「何を言ってもよどみなく 営業が即答するんですよ」
お次は一年ほど前に受けた住宅相談です。
私 「意中のメーカーの担当営業マンについてお話をお聞きしたいということでしたよね?」
この方ともズームで打ち合わせをしたのですが、私の問いにご主人と奥さんは口を揃えてこう答えたのです。
お客様「メーカーの信頼性は申し分ありませんし、担当である男性の営業社員も実にいい人で、知識も豊富で安心できるんですよ」
私 「 それでしたら、そのまま契約されても良いのではないですか?」
お客様「確かにそうなのですが・・・我々がどんなに難しい質問をしても、その場ですべて返答してくれるんですよ。その淀みのなさになんだか不安を感じているんですけども・・・私たちって妙ですかね?(笑)」
完全な真顔で言っているわけではなく、自分たちも少し笑っている状態でしたが、本当にこんな相談内容だったのです。
これについても、私としては答えようはなかったわけですが、結論としては「その営業の方は信用してもいいと思いますよ」と丁寧にお伝えしました。
ところが、同じようなことが今から20年前にもあったのです。
場所は千葉県でしたが、あるお客さんの取材をしたところ、今回と まったく同じような不信感を、営業担当者にもったとの感想を頂いたのです。
ただし、これは契約した後の取材でした。
ですから、最初は不信感を持った営業担当者が、この取材のアポをとってくれたのです。
お客さんに対して営業との初対面時の感想をいろいろと伺っている時に、こんな話が飛び出したのですが、こうして考えてみると営業マンは100%を目指すのではなく、たまにはわざと困ったふりをするのも営業テクニックではないかとすら思えてきます。
この時の営業担当者は現在40代の半ば付近なのですが、若かりしその当時の印象としては、実によく勉強していて歯切れのいい営業マンだったとの記憶があります。
「お客さんそんなこと言っていました?」
この取材を終えた後、当然のことながら担当営業マンには内容をフィードバックしました。
この時の映像を使って、幹部を含め注文住宅部門の営業社員が一堂に会した研修を開催したのですが、その時に当該営業マンの彼に色々と意見を聞いたのです。
彼は当惑していましたね。
自分の答えは完璧であり、お客さんも100%納得していたと自信を持っていたはずです。
それは当たり前でしょう。
お客さんが納得して自分と契約してくれたわけですから、そのような不信感を持たれているとは微塵も思うわけがありません。
「お客さんそんなこと思ってたんですね・・・」
彼としてはこういうのが精一杯で、これ以上は何も答えようがないですよね(笑)
しかし、この取材以降、彼は営業スタイルを若干変えました。
即答できる質問であっても「念のためにお調べしてからお答えします」もしくは「それで間違いないと思うんですけども、確かに微妙かもしれませんね」などと判断を避けるような対応を、わざと挟む込むようにしたそうです。
お客さんの心理はじつに難しいことがこれで分かるでしょう。
詐欺を考えてみれば分かりますが、詐欺に遭った被害者が一様に口にするのが、詐欺犯人の自信を持った対応やどんなことについても即答する知識の豊富さをあげます。
つまり、あまりの淀みのなさが、お客さんに対して不信感を与え「この人は口からでまかせを言っているのではないのか?」
このような猜疑心を与えることもあるのです。
まとめ
お客様の相談事例ご紹介しましたが、今回は営業社員に的を絞った内容でした。
次回はそれ以外の相談内容をご紹介します。
会社に対する信頼性や、Q値、C値などの住宅の性能も当然出てきますし、その他私のような専門家が思わず唸るような質問もたまにはあります。
今回もそうでしたが、営業マンの知識がありすぎることが怪しいなど、完全想定外の質問でした(笑)
我々業者が考えていることと、お客さんが考えていることには乖離があると認識すると、新築受注にまた一歩近づくことになるのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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