現在は膨大なデータを簡単に入手することができます。
ネットを叩けば世界中の情報が瞬時に集まるわけですから、住宅営業する身分にとってはこんな最高の環境はありません。
時代は変わっても、データを分析して攻めていく手法は何ら変化はないでしょう。
戦争でも話は同じです。
敵の傾向を分析し、レーダーで現在地を調べ、時には囮を使って誘導したりもするでしょう。
とにかく巷にあふれるデータを検証して活用することが、新築受注の助けとなることは間違いありません。
インターネットのない時代でも私はデータを必死になって集めて新築受注に生かしていたのです。
私が目をつけたこんなデータ
①雇用促進住宅の契約状況
これは公のデータではなく社内データの活用事例ですが、趣旨は同じですのでご紹介します。
若干参考になりにくいのは、私が在籍したのが積水ハウスが大手企業だったということにつきます。
例えば年間5棟の新築を受注する住宅会社が、自社で建築したお客さんを10年遡っても全体で50棟のデータしか検証できません。
しかし、100棟やる会社であれば、10年で1,000棟のデータを検証することができるのです。
あくまで積水ハウスという大手の話とお断りをしておきます。
私の営業エリア内にあった雇用促進住宅の話ですが、そこには6棟住宅が建っていて、全部で150世帯の方々が住んでいました。
そこに居住する方の過去10年間の契約状況を調べると、毎年ほぼ一定数の方が、積水ハウスと契約して新居に転居されていることがわかりました。
はっきりとした数字は覚えていませんが、積水ハウスだけで年間2~3人の方が必ず契約されていたのです。
このようにみると、他社で建築を決めた人数も含めて相当数の方が見込客として150世帯の中に存在していることが推測できたのです。
150件程度であれば何かしらのチラシを手配りで入れるにしても私一人であっという間にできてしまいます。
イベントがあれば、自分の名刺や顔写真を入れ込んだ紙をポストに投函したり、時間があけば飛び込み訪問などもしました。
このような活動を地道にやって行くと必ず 反響があるのです。
そこに見込み客が眠っていることが確実なわけですから、やる気も出ます。
やみくもの飛び込み訪問では疲弊する一方ですが、同じ飛び込み訪問であっても、この150棟を対象にすれば、絶対にヒットするわけですから、テンションを保つことができたのです。
②収納に関する満足度調査
この手のものは今でもよく見かけます。
その当時も同じようなものがありましたが、今ほど簡単に情報を入手することはできませんでした。
しかし、本屋に行けば雑誌は豊富にありましたので、家を建てた人に取ったアンケートなどを掲載した、その種の本を大量に買い込みました。
今でもはっきり覚えていますが、日本生命が収納に関する満足度調査を行ったデータを見かけました。
1位・・・ キッチン周りがこまごまとしたもので溢れかえる
2位・・・ リビングが雑多なもので溢れ返り収拾がつかない
3位・・・ 冬服の 収納場所
このような順位だった記憶があります。
さっそく私はこのページをカラーコピーして、自分の営業ツールファイルに入れました。
私はこのように考えたのです。
「今の住まいで困っていることのナンバーワンは、キッチン周りに塩や砂糖などの調味料を含めた雑多なものが収拾つかずに置いてあることのようだ。私が展示場で接客するお客さんもこれに困っている人が多いと推測できる。このデータをお客さんに見せながら、このような後悔がないように私は様々な提案をできるとアピールしよう。 また、積水ハウスもこの種のことが得意な会社であるとも忘れずに言い添えよう」
実際の接客現場では、この資料を見せるとほぼ100%の奥さんが大きく頷いて「確かにそうなのよね。今も流しの上に塩やなんやかんやの雑多なものがいっぱい置いてある状態で収集がつかないもん」 というのです。
ここでお客さんと共通認識を持った上で「積水ハウスはこの手のノウハウを豊富に持っています」とさらに話を進めます。
全て同じ論法で家に関するさまざまなデータを探し出し、その上位項目にあるアンケート結果に着目したのです。
③住宅営業マンに対する不満度調査
調査会社がどこかはとうの昔に忘れてしまいましたが、とにかくこのような趣旨のアンケート結果が掲載された住宅雑誌を本屋で見つけました。
お客さんが不満に思う項目がいろいろ上がっていたのですが、印象に残っている項目があります。
【営業マンとの打ち合わせ時にもっと私たちの要望をしっかりメモをしてほしかった】
お客さんと商談する時には、皆さんも当然ながらメモを取ると思いますが、問題はその分量にあります。
理想論を言えば、お客さんが話すことを一言一句漏らさずメモをすることが最良なのでしょうが、事実上そんなことはできませんし、 仮にできたとしても、お客さんの顔を見ずにずっと下を見たまま話を続けるという奇妙な光景になってしまいます。
しかしながら、一時間も話をしているのに簡単なポイントしかメモをせずに話が終わるようでは、お客さんにとっても不審点が残るところだと思います。
どこで線を引くか難しいのですが、このアンケート結果を見て私はその直後の商談から可能な限りメモを取るようにしました。
もちろん、それまでもメモを取っていたのですが、感覚的に言うとその二倍程度の記録を残すようにしたのです。
お客さんに聞いたわけではないから確かではありませんが、他社の営業と比べると、明らかにたくさんのメモをとっていましたので、お客さんにとってはそれが信頼感に繋がったと今でも信じています。
日本ハウスホールディングス( 旧 東日本ハウス)は 徹底的なメモでお客さんの信頼を得ている
今から20年前になりますが、 旧東日本ハウス時代に一年ほど営業研修などで会社に定期訪問していました。
主には当時の盛岡本社に足を運んだのですが、その時初めて知ったのが社内では筆談と呼ばれる商談時の徹底的なメモを取る習慣でした。
その当時の社長と直でやり取りをしていたのですが、このようにおっしゃっていました。
「うちの会社では筆談と呼んでいるのだけども、お客さんとのやり取りを徹底的にメモさせるのだよね。下にカーボン紙が敷いてあるのだけど、商談が終わったとき営業がハンコを押して一枚をお客様に渡すというルールにしている」
これが極めてお客さんの評価が高いので、会社としても自信を持って継続しているとのことでした。
現役時代を退いてからのこの話を聞いたのですが、心の中で「私がやっていたことは間違っていなかったんだ」とニンマリした記憶があります。
データを見る癖をつける
みなさんにやっていただきたいのはこれです。
ネットを見れば住宅に関するアンケートや調査結果などが山のように目に入ってくるでしょう。
その中で営業として使えそうなものをピックアップして、どんどんダウンロードし自分のファイルに収めてください。
あとは私が書いてきたような使いかたをしてもらえればOKです。
データが持つ説得力を認識して強力な武器に変えてください。
ポイントは利害関係のない第三者です。
大手ハウスメーカー10社を比較したリクルートのデータを見たことがありますが、これをうまく活用しているハウスメーカーA社の存在を私は知っています。
A社とは違う大人気のあるハウスメーカーB社があるのですが、ある項目に関してはこのB社が他の9社と比べて数字がかなり劣るという結果が出ているのです。
相手として手強い会社であることは間違いないのですが、A社の営業がこのデータをお客さんにさりげなく見せると「B社は評判が今ひとつだね」とほとんどのお客さんが指摘するそうです。
このように、営業が口に出せないことを利害関係のない第三者のデータに代弁させるのです。
データをうまく活用すると、このような競合対策にも有効に使えることを覚えておきましょう。
まとめ
アンケートやデータがこれほどまでに強力な営業ツールになると気がついた時には晴天の霹靂でした。
データを見せながら説明したのですが、それと同時にお客さんの顔がデータに引きつけられ「うんうん」と頷いている姿を見たときの衝撃を忘れません。
私は営業マンになりますので、いくら一生懸命アピールしても営業マンの枠から外れることはありません。
嘘やデタラメは全く言っていないのですが、お客さんからすれば「あんたは営業だからいいように言うよな」となって当然のことでしょう。
ところが、利害関係のない第三者のデータは違います。
数字には圧倒的なパワーが存在するのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。