コンサル現場で見た小規模工務店の抱える問題点⑤・・・新築の事例が少なくて四苦八苦

今日のコラムも実在する工務店の話です。

正確にお話しすると実在する不動産会社となりますが、不動産がメインのこの会社(T社)が新築事業に乗り出た実話をご紹介しましょう。

表題のように様々な場面で四苦八苦しているのですが、今日取り上げたいのはこれまでの建築事例がないことです。

ゼロではないのですが、新築案件は事実上ありません。

展示場来場者からは「過去にはどんな家を建てたのですか?」と当然聞かれますが、その質問への対応がなかなか難しく現場では苦労の連続なのです。

何とか対応をしているものの、お客さんによってはこれが原因で引いてしまうケースも多々ありました。

「どんな家を建ててきましたか?」

恐れていた質問です。

当然といえば当然ですが、お客さんとしてはその会社がこれまで建ててきた家の外観や内観、インテリア、エクステリアを見たいと思うのは当然のことでしょう。

通常であればお客さんのこうした要望に対し、営業社員はタブレットを出してそこに現れる自社の建築事例を次から次へと見せるでしょう。

ところがT社にはその事例がなかったのです。

厳密に言うと3棟事例があるのですが、見せられる案件はそれしかありません。

地主からの要望で知り合いの家を建てたりした物件なのですが、見せるにしてはあまりにも少ないですし、お客さんからすれば、不安を覚えるには充分な話でしょう。

ただその3棟の家に関しては、どれもそれなりにオシャレな外観ですし建物自体もしっかりしています。

私はこの会社を知っているので、作りがしっかりしてるのはもちろんのこと、社長の考えも筋が通っているし、新築に対して真摯な姿勢で向き合っていることもよくわかっています。

しかし、初見のお客さんにとってはそんなことは関係ありませんし分かる由もないのです。

正直に経緯を話して分かってもらう

会社がとった営業戦略はこれでした。

嘘を言うわけにいきませんし、妙に取り繕ってもボロが出ますので、 会社が新築事業に乗り出した経緯を正直に話すと同時に、自社の建築レベルが高いことをお客さんに説明したのです。

不動産業がメインですので社内大工がいるわけでもありません。

実際の工事は、昔から知っている腕の良い大工にふる形にならざるを得ないのですが、設計陣は極めて優秀な人材を揃えています。

誰もが知る東京の有名高層マンションを設計した人物も役員として揃えているのですが、商談にはその役員が立会い、設計も自分が責任をもって行うとお客さんに話しています。

大手信仰をどうやって潰すか

これはすべての小規模工務店の課題でしょう。

積水ハウスやミサワホームといった全国大手と競合することはなくても、地域のパワービルダークラスと競合するケースはたまにあるでしょう。

競合相手が従業員100人程度だとします。

住宅会社としては地域でかなりの競争力を誇っている会社だと思いますが、この会社に対して従業員10人の工務店が競合した場合、お客さんからするとどうしても信用不安が頭をよぎります。

住友不動産は徹底した企業アピールをする

大手企業はその知名度で簡単にこの問題をクリアできます。

しかし、中には知名度があり信頼性がある企業でも、必要以上に企業の安定性をアピールする住宅会社も存在するのです。

その代表格が住友不動産と言えるでしょう。

ある方が住友不動産の営業とウェブ上で初回面談をするという情報を聞きつけたので、商談の様子をこっそり横で見たことがあります。

住友不動産ですから名前には圧倒的な信頼性がありますし、中身についてもあれやこれやと聞かなくても「住友なら大丈夫だろう」と誰しもが思うはずです。

この時住友不動産は、会社の説明を当然のことながら行ったわけですが、私が驚いたのはその徹底ぶりにありました。

総合マンションデベロッパーの信頼性

とにかくこの辺りを強くアピールするのです。

特にこの先10年後に新築が半減することが見込まれているというデータを提示して、たとえ大手であっても経営不安や撤退することもあり得ると主張するのです。

横で聞いて非常に納得する説明でしたし、大手だからといって手放しで喜んではいけないことが、よく伝わってきました。

住友ブランドを背負いながら、これだけ徹底的に企業の信頼性をお客さんに説明するのです。

小規模工務店が会社の安全性を適当に説明しているようでは、話にならないことがお分かりになるでしょう。

住友不動産で印象的だったのは、総合マンションデベロッパーであることの信頼性です。

新築の建物を建てるだけではなく、マンションもやるし、不動産もたくさん持っていて、そこに入る店子からの賃貸料も莫大な金額になると説明してくれました。

あらゆる指標を使って小規模工務店は抵抗すべき

T社も地元では30年にわたって地元に根を張り着実に事業を続けてきた不動産会社です。

地域の人はそれなりに知っているでしょうし、賃貸マンションを借りた方は契約時にその名前を聞いているので、頭に入っていることでしょう。

しかし、賃貸で借りるのであれば全く問題ありませんが、家を建てるとなると話は違ってきます。

「30年地元でやってきました!」

と胸を張って主張しても、お客さんからすれば

「それで?」

で終わることもありますし、

「そんなこと言っても一年後に倒産するかもしれないじゃない」

と思われても不思議ではありません。

住宅完成保証制度

徹底的な数値を示せと言いましたが、現実的な話としてはお客さんに対して住宅完成保証制度のことをアピールするのが一番有効だと思います。

ただし、資料を作りこんで時間をかけて説明してください。

「完成保証制度に入っていますから安心ですよ」

さすがにこれだけで済ます工務店いないと思いますが、お客さんにとっては、その保証制度の信頼性はどうなんだということに当然なるでしょう。

第一義的には完成保障制度の話を資料を作りこんでしっかりするのと同時に、それ以外の会社の安心材料を説明するためにも、取引銀行の話、資本金やキャッシュフローの話をするのも手です。

T社ではありませんが、茨城県のある工務店が金融機関に勤めるお客さんと話をした時に、キャッシュフローなど突っ込んだ話をしたところ、一発で信頼してくれたという話を直接聞いたことがあります。

大手には真似のできないデザイン性を主張する

T社がまさにその戦略をとっています。

新築をこれまでやったことがなく、しかも会社の規模は地元では30年間根付いた会社とは言え、地域の小規模会社です。

そこで、T社は徹底的に大手のデザインを研究しました。

たまたまこの会社には、インテリアの凄腕プロがいたことも幸いしたのですが、前述した設計のプロとさまざまな点から話し合い、大手ではできないようなデザイン空間とインテリアを作ることに成功したのです。

まとめ

今日お話をしたT社は、まだ滑り出し始めたばかりなので、このまま順風満帆に行くかもしれないし、途中でいろいろとつまずくかもしれません。

しかし本文に書いたように、これまでの新築実績がないことを正直に話した上で、なぜT社は信頼できるのかをお客さんに丁寧にアピールしています。

① デザインがなぜよいのか
② インテリアがなぜよいのか
③ しっかりとした会社の財務基盤
④ 筋のとおった社長の考え方
⑤ 唯一無二の 設計力

大きく分類するとこのようなところでしょうか。

進展があればこのコラムでご報告いたします。

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積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。

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