このコラムの読者は不動産業の方が多いと思います。
「不動産会社のミカタ」さんサイト内にあるコラムですから、当然といえば当然のことでしょう。
ただ、私はいつも不動産の方々向けではなく、主にハウスメーカーや工務店の営業マン向けに記事を書いています。
しかし今回のコラムは、不動産専門の方に向けて執筆させてもらいます。
おそらくは苦手としている、苦手としているというか苦手と気づいていない分譲住宅など建売住宅の接客術や販売術について書いていきましょう。
建物の接客は新築営業マンが得意
2年前になりますが、神奈川県のある分譲地であったことを題材にお話をしていきましょう。
最高気温が39度という異様に熱い日でしたが、私はこの会社が分譲した20区画前後の建売現場に顔を出しました。
新人営業が現場に詰めていたので、そこで実践的なロープレを実施するつもりだったのです。
販売代理会社の不動産営業マンが客を案内するために現地にやってきた
ロープレをいつものようにこなしながら30分も経ったころ、新人営業マンの携帯電話が鳴りました。
新人君は「今から販売代理店である〇〇住宅販売の営業さんがお客さんを連れてここに来るそうです」と私に話すのです。
これは好都合。
新人のロールプレイングを行った直後に、実際の接客を目の前で堂々と見ることができる機会です。
そして電話があってものの5分で営業マンとお客さんはやってきました。
目の前で接客が始まったが・・・う~ん・・・今一つ
販売代理店の不動産営業マンが建売を接客するシーンを生で見る機会はなかなかありません。
これは面白そうだな・・・と思った私は接客する営業マンにつかず離れずで距離をとって耳をそばだてていました。
そこであった会話を再現してみましょうか。
客 「なるほどね・・・なかなかいいですね」
営業「収納もたくさんありますし光も十分に入ります」
おおむねこんな接客が続いていきました。
何も間違ったことは言っていません。
ただ、新築をやってきた私としては、この接客が文字通りの「物件案内」に見えたのです。
淡々と物件の概要を説明していく営業マンを見て「新築営業とは世界が違うんだな」「そもそも接客フローが違うからこうなるんだ」と再認識したのです。
接客フローの違いとは?
①構造的な問題
建売物件を案内する流れが新築とは違うのです。
もちろん全く同じ場合もありますが、ここでは自社の住宅展示場があり、それに加えて自社分譲地に建つ建売を抱えていると仮定しましょう。
【新築営業の接客フロー】
電話問い合わせの後に現場で落ち合うことも当然ありますが、まずは展示場にお客さんが来場してそこで初対面。
そこでこんな会話がされるのです。
客 「〇〇駅近辺で50坪くらいですかね」
営業「そのあたりなら弊社の建売分譲がありますよ」
客 「そうなんですか。総額でいくらですか?」
営業「4000万円程度ですね。場所も近いですし今から見学されませんか?」
話を思いっきり短くしていますが、要約するとこうなります。
しかし、せっかく展示場に来ているわけですから一通りは見学。
そしてその間にいろいろな雑談をすることになります。
30分も雑談をすれば家族構成はもちろんですが、家に対する趣味趣向といいますか、いろんなことをヒアリングできるので、初対面ながらそのお客さんのことをある程度は理解できるのです。
【不動産接客の業務フロー】
こちらも一概には言えませんが、新規のお客さんの場合は電話やメールの問い合わせがあり、現地で落ち合うケースが多いのではないでしょうか。
会社から同じ車で移動するケースもあるかもしれませんが、不動産営業マンと比較すると、新築営業マンは展示場で接客して話を聞き出せる時間が業務フロー的に挟み込まれることになり、その分だけ顧客情報を蓄積したうえで建売案内に臨むことができるのです。
②普段の仕事内容が違う
不動産営業マンは土地の仕入れや売買を普段から行っているはずでしょう。
そして、建売なども販売協力の形で手を貸すこともあるでしょうし、自社の分譲地案件もあるかもしれません。
しかし、新築住宅営業マン(展示場があるケースですが)の普段の業務は、展示場に来場するお客さんの接客業務です。
しかも注文住宅を基本的には想定しているので、お客さんの要望などを細かくヒアリングする癖が染みついているのです。
この癖がついていることが建売物件の案内にも影響をもたらします。
建売販売は注文とは違いますので、目の前にある物件そのものを売らなくてはなりません。
ですから、事前に得たお客さん情報が「この物件はあなたにあっていますよ」と持っていくのに役立つわけです。
客 「そうだよね。このスペースはいいかもしれないね」
営業「そういえばご主人が釣りをやられると先ほどお聞きししましたが、サッカーボールと同じようにここに釣りボックスも置いてください。どうしても濡れ物になるのでこういう場所は必須ですよ」
客 「なるほどね・・・」
営業「この建売は玄関脇収納が他物件より特に広くとってありますので、アウトドア系のご趣味が多い方に取ってはうってつけの物件と言えます」
こんな感じの話を展開できるのです。
私が現在指導している住宅会社の中の一社に、辣腕注文営業マンのG君がいますが、彼は本来注文住宅メインの営業マンです。
しかし、この会社は自社分譲地も多数抱えているので、G君は建売も数多く販売をします。
しかし、注文住宅販売の癖がついているG君は、建売見学の電話問い合わせが入っても「せっかくなので弊社の展示場もご覧になりませんか?」と自社展示場へと誘導します。
そして、その間様々な情報を聞き出してこう考えます。
【G君の独り言】
家族構成もわかったし思っていた以上にメンテナンスを気にしていることも分かった。
うちの建売は外壁が基本的にメンテナンスフリーを謳っているので、そこは徹底的にアピールしていこう。
リビングは20畳以上を欲しいといっていたが、今から案内する建売は16畳だ。
ここを何とかうまく説明しきらないとダメ出しを食らう可能性がある。
家事動線に関しては奥さんが強い要望をもっていたので、この物件であればそこそこにアピールはできそうだ。
でも、家事動線が素晴らしい!とまでは言えないので、なんかうまいアピールの仕方を急いで考えないとな。
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いかがですか。
これがG君の独り言です。
注文の営業マンはこのように深く要望を聞いてプランニングをするのが通常業務。
ですから、建売を紹介する場合も、こうして要望を事前収集して該当案件をいかにアピールするかを前もって考えておくのです。
これを不動産営業の皆さんが身に着ければ、分譲地の建売販売に関しては大きく成績がアップするはずです。
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