商談時のメモを取る姿が重要なプレゼンテーションになっている

「新入社員でもあるまいしメモの話なんて・・・」
話は最後まで聞いてください。
その気持ちはわかりますが、実は大手ハウスメーカーも含めてこのメモをしっかりと営業戦略に取り入れている事例もあり、鼻で笑うことはできない大事なノウハウでもあるのです。
また、新卒を含めて若手の営業マンにとっては、是非そのまま読み進めていただき、自身の営業ノウハウとして身に付けるようにしてください。

メモをしている姿自身がプレゼンテーションになっていることに気づこう

私は23年にわたってお客さんの取材を続けてきました。

お客さんと60分程度は必ず話をするのですが、毎回の定番質問がその中には多数あります。

「営業マンはメモをしっかり取っている様子でしたか?」

この質問は必ずします。

答えはほぼ見えていますが、メモを取らない営業マンは皆無です。

どんな営業マンもメモを取っていたというのですが、その差がものすごくあるというのが取材で得た実感です。

メモを取るものの、文字通りたまにメモをちらっとする程度の営業マンを非難するような意見はけっこうあります。
もちろんその逆に綿密なメモを取る営業マンをびっくりするくらいの好評価を与える場合があるのです。

静岡県で家を建てたJさんの話をしましょう

Jさんのご自宅に伺ったのは真冬の2月。

ある住宅フランチャイズの加盟店と契約をしたのですが、ご自宅の2階寝室からは富士山がドーンと真正面にそびえるという素晴らしい眺望。

挨拶もそこそこにビデオをセッティングして取材スタート。
驚いたのがその第一声でした。

「私たちは3年間も住宅メーカーを探し回ったんですよね。そしてその間にたまった住宅営業マンの名刺が・・・ほらね、こんなにたくさんあるんですよ(笑)」

と見せてもらったのが、おそらくは100枚近い名刺の山。

この手の方がたまにいますが間違いなく営業マン泣かせ。

でも、最終的にはこの住宅フランチャイズに決めたわけですから、担当の営業マンの腕が良かったということです。

ただ、ここで取り上げるのは、この担当営業マンの話ではありません。
結果として競合で負けたある会社の営業マンの話です。

東日本ハウス(現日本ハウスHD)の営業マンへの評価が高かった

高評価な話なので会社名を出させていただきます。

何年か前に名前が変わりましたが、この世界が長い人にとっては東日本ハウスのほうがなじみがあるでしょう。

この東日本ハウスの営業マンは残念ながら惜敗したわけですが、お客さんが折衝当時のメモをしっかりと捨てずに残していたのです。

その当時のメモを私に見せながらこんなことを言うのです。

主人「これが東日本ハウスの営業さんとのやり取りを記録したメモなんですけどね」
私 「びっちりと書いてありまし、膨大な量ですね」
主人「そうです。2か月くらいやり取りしましたが、毎回毎回のメモを取る量が半端ないんですよ。しかもこんな感じでびっちり丁寧に書いてくれるんですよ」

話の続きは私がまとめましょう。

東日本ハウスはカーボン用紙でメモ書きを複写し、その1枚をお客さんに渡して両者の行った言わないを極力なくす努力をしていたのです。

このお客さんはその徹底ぶりと完璧さを非常に高く評価していたのです。

ですから、本来であれば捨てるべきメモ書きも、大事にそれまで取ってあったということ。

この取材の様子はビデオで撮影してあり、ビデオにははっきりこのメモ書きを映してあるのと同時に、ご夫婦ともにこの営業マンと会社の体制をべた褒めするシーンも録画しました。

余談を少し・・・

実は今から20年も前になるのですが、私が書いた本を新聞広告で当時の東日本ハウスの社長が見つけてくれ、自宅に電話をもらったことがあります。

全国区ハウスメーカーの社長から直で電話が入るとは想定していませんので、さすがにその時は驚きましたが、たまたまその本を気に入ってくれ「研修をしてくれないか?」という依頼を受けたのです。

岩手の本社まで出向いたのですが、そこでいろいろと話をしながらこのメモの話になりました。

社長「この徹底したメモを取る行為をうちはでは筆談と呼んでいるんだけど、これがお客さんにはすこぶる好評なんだよね。ただ、しっかりと証拠も残るので大変なこともよくあるのは事実だけど(笑)」

つまり、社を上げて取り組んでいたのです。

この話を私は社長から直接聞いていたので、取材でこのメモ書きを見せられた時「これがあのとき東日本ハウスの社長が言っていたことだったんだ」と腑に落ちたのです。

メモにも取り方の工夫と見せ方の工夫がある

メモ,営業

ポイントになると思った時のメモの取り方

ただ漫然とメモを取っていてはだめです。

①ミスをしてはいけない注意事項
②お客さんが強く要望した事項

この2点だけは絶対に押さえるのです。

もちろんメモですから自分のためにメモをするのですが、大事なのはあなたがメモをするところをお客さんに見せることなのです。
例えば奥さんが「食洗器はミーレが欲しいのよね。あれだけは譲れないわ!」と身を乗り出して強い要望を出したとしましょう。

こういう場合はあなたも「わかりました!」と言いながら手元でしっかりとペンを走らせ、できれば赤いボールペンでアンダーラインを引いて下さい。

それを見た奥さんはどう思いますか?

「私の要望はちゃんと伝わったわ」と安心してくれるはずです。

これと同様にお客さんの強い要望や「お隣さんへの挨拶だけは忘れないようにお願いしたいのですよ」といった心配事を口にしたら、同じような行動をとるのです。

メモをするところを見せるとはこういう意味なのです。

要望ヒアリング時のメモにもコツがある

この話はどんな研修でも話しますし、どんな単行本やWEB記事にも必ず書くことです。
間取りの要望をヒアリングするとき、お客さんから出された要望を手元のノートやPCにどんどんと書いていくでしょう。
そして、事務所に帰ってからそれらの要望を見て、設計にぶん投げるかもしくは営業マン自らがラフプランを書いていく事になるはずです。

ただ問題がここで発生します。

予算も同時に聞いているはずですが、通常は要望をすべてぶち込んだプランを書いていくと予算に収まらないことが圧倒的でしょう。

こうなるとどれをどう削っていくかという壁にぶち当たるのです。

つまりヒアリングした要望のどれかを削らざるをえなくなるのです。

ここで、あなたならどんな基準で要望を削っていきますか?お客さんの気持ちを簡単に忖度はできませんし、電話やメールで「どれか削りたいのですが」と聞くのも間抜けです。

ヒアリングをするときに重要度別にメモをする

この意味は分かってもらえるでしょうか?

会話形式にするとこんな感じです。

奥さん「キッチンはアイライド型にしたいけどあれって高そうだから厳しいのかな・・・でもあこがれはあるんだけどね」

この場合は夢としてアイランド型キッチンを欲しい気持ちがあるものの、予算がひっ迫すればあきらめると推測できます。
ですから、私であればメモに【アイランド型キッチン△】などと記載するでしょう。

そしてこの逆に「アイランド型キッチンは譲れないのよね! ほかの予算を削ってでもいいからほしいの!」
こうくれば私のメモは【アイランド型キッチン◎】といった記載をするでしょう。

まとめ

メモをバカにすることなかれ。

結論はこうなります。

お客さんとの折衝でメモを取るのは当たり前ですが、そのメモには取り方や見せ方のコツがあると覚えておきましょう。
メモを取る営業マンの姿をお客さんは見ているのです。

何気ないことですが、メモを取る行為そのものが新築営業の成果を伸ばすための大きな営業手法となることを是非頭に叩き込んでください。

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