前回号でお約束したとおり「新築一辺倒からリフォームも取り始めてリスクヘッジをした工務店」のお話をしましょう。
B工務店がある地域は、東北地方とさせていただきますが、企業規模としては零細工務店ではありません。
しかし、県のトップテンに入るような会社でもありません。
まあ、それなりに着実な業績を積み上げている工務店だとお考えください。
社長とは10年以上前から面識がありますが、知り合った当初はリフォームなど全く眼中に無い状態だったのです。
こんなアウトラインの会社ですが、今ではリフォームの比率1割を超え、さらにこの比率を上げようと社長は考えています。
「新築激減のニュースを見てから不安になってきた」
数年前から目立ち始めたニュースですが、大手の経済研究所などがこぞって「新築激減」「中小工務店の半分は淘汰」などと伝え始めました。
B工務店の社長もこのニュースを耳にしたわけですが、漠然たる不安を感じたものの、現実的には新築を狙い続け、リフォームをやろうなどという気には全くならなかったのでした。
ただ、心の片隅では「やばいかな~」と思うのも当然のこと。
そんな気持ちはありながらも、具体的なリフォーム受注にはなかなか踏み切れない毎日が続いていたのです。
「とりあえずOB施主を回ってみませんか?」
私はことあるごとに社長にこう声をかけていたのですが、ある時やっと重い腰を上げてくれました。
小規模工務店が、いきなり新規のリフォームを取りに行くのは相当無理があります。
リフォーム専用の会社がいくらでもあるわけですから、真っ向から彼らに対抗するのは得策だとは言えません。
それよりも、自社で建築をしたお客さんを回った方が、営業的な側面から考えれば圧倒的に有利なのです。
ごく一部のお施主さんとは仲良くしていたものの・・・
社長はOB施主さんをほったらかしにしていたわけではありませんが、定期的に訪問活動をするなど組織だったフォローの体制は築いていませんでした。
ですから一部の仲の良いお客さんや、お客さんの方からこちら側にやって来るような方のみと、それこそ密のやりとりをしていました。
しかし、ごく普通のお施主さんやちょっとしたトラブルを起こしてしまった方とは、当然のことながら引き渡し以降の接点はほぼないという状態だったのです。
このような状況でしたので、紹介情報はごく一部のお客さんからしか上がってこない状態でした。
懇意にしているお客さんが他社にリフォームを頼んだ
社長が話したこんなことが私の脳裏に強く残っています。
「非常に仲良くしていたお施主さんでもちろんクレームは皆無。そして建物の出来栄えにも極めて満足していたんだけど、引き渡し後15年目を迎えたときに室内のリフォームを近隣の大工さんに任せてしまったんだよね。これを聞いた時とにかく愕然としちゃって・・・」
この時の社長の気持ちは大いに理解できます。
ものすごく懇意にしていたのですから、リフォームの相談は自分に来るのは当然だし、そのまま任せられるだろうと考えるのが当たり前のことでしょう。
このリフォーム受注をとれなかったのは単純明快
② B工務店は新築専門だとお客さんが思い込んでいた
答えはこの2つです。
いくら普段から付き合いがあって仲良くしていても、工務店側から「リフォーム予定ができたらうちに相談してね」と言わないと、お客さんとしてはいざリフォームがあったときこの工務店のことを思いつかないのです。
そしてもう1つの理由が次です。
工務店側からすると新築はもちろんだけども、リフォームだって当然やると考えていますよね。
しかし、お客さんはそうは考えないのです。
あくまでB工務店は新築をやった会社になり、リフォームと直結しないのです。
ですから、いざ自宅でリフォームの需要が発生したときにB工務店のことが頭に浮かばず、ネットで近隣のリフォーム会社を検索しだしてしまうのです。
数多くの小規模工務店さんとお付き合いが私はありますが、ほとんどのケースがこれに当てはまります。
多くの社長が「うちの仕事には満足しているはず それなのになぜリフォームの話がうちにこないんだろう?」と首をひねります。
ただ前述したように、この2つの理由を念頭にしっかりおかないとリフォーム受注は絶対に来ません。
「 年末にカレンダーでも配ってみようかな・・・」
B工務店が最初に手を付けた営業戦略はこれ。
皆さん驚かれるかもしれませんが、年末にカレンダーを配るという平成どころか昭和のやり方です。
しかし、結論から先に申し上げますと、この作業がリフォーム受注を引っ張ってくるきっかけとなったのです。
初年度だけですが、わたくしはこのカレンダー配りにお付き合いをしました。
そのときあった会話を再現してみましょう。
施主「えー、びっくりした(笑)でも、カレンダー全員に配るなんつったらとんでもない手間でしょう。どうしちゃったのよ(笑)」
社長「いろいろとうちは頑張ってみようと思いましてね・・・ところで 建築18年になるでしょう。そろそろリフォームというかどっか直したいとかおかしくなったとか出てきたんじゃないですか ?」
施主「あー・・・確かにね。上のお兄ちゃんがもう家を出ちゃったんで部屋が余ってるのよ。それとトイレもね、随分古くなったし。今は節水トイレとかそういうのがあるらしいじゃない」
この結末はこうです。
部屋の改装に加えて、トイレと洗面台のリフォーム工事にもつながりました。
驚いたのは社長です。
「森さん!こんなことあるんだね!いやびっくりしたよ。顔出してみるもんだな。これも営業だよね」
このポイントをまとめましょう。
まずは実際に顔を合わせたのは当然のこととして、リフォームの需要がないか、つまりお施主さんが考えていないかを直接ハッキリと口に出して聞いたわけです。
築18年ですから時期的に考えるとリフォームが出てきてもおかしくない頃になります。
ストレートに聞いてみると、意外にこのような反応が返ってきます。
これはこのケースではなくて、ほかの会社でもほぼ同じような状況が多数発生します。
そしてもう1つは、B工務店がリフォームをやるとの認識が、このお施主さんの頭になかったと推測されることです。
ですから、もし本格的にリフォームをやろうと考えた時は、ネットか何かを探してリフォーム専業業者に見積もりを依頼した可能性が濃厚でしょう。
ところが目の前に社長が現れて「リフォーム考えていませんか?」
と聞かれたわけですから「B工務店もリフォームをやってくれるんだ」と考えたのが自然です。
そして、これも当たり前のことですが、新築をやってくれた社長ですし何のクレームもなくて信頼を置いているわけですから「見積もりをお願いします」となるのに、ほとんどハードルはありませんでした。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
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積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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