「13年ぶりにお施主さんに会いに行ってみるかな」➡全く想定外の結果に

数年前の話をしましょう。

小規模工務店Fの会長と客宅訪問に同行したときのことです。

建築後しばらくお客さんの顔を見ていなかった話を聞いた私は「しばらくぶりのお客さんをピックアップして訪問しましょう」と会長に提案し、4件のお宅を一緒に回ったのです。

「間をあけずに顔を出した方が良いでしょ~」「たまには行ってみるものですよ」くらいの軽いオチを想定していたのですが、結果は全くの想定外の展開になってしまいました。

実話ですので多少話をぼかしますが、ほぼこのままのことが目の前で起こったと考えてもらって結構です。

2月の寒い冬晴れ

本州にある家族経営の小規模工務店。

内陸部の県なので2月の冬はかなり気温が落ち込みます。

昼の一時頃だった記憶がありますが、私とある会社の若手社員二人でF社に出向きました。

そこで会長と初めて顔を合わせたのですが、この会長が実に陽気で楽しく、その風貌なども含めていかにも職人という感じの雰囲気を漂わしていました。

後で社員に聞いたのですが、中学を出てそのまま大工の道に進み早60年という大ベテランの社長。

曲がった事が大嫌いで、その腕は周囲でも評判の折り紙付きということでした。

私はその腕前を見たわけではありませんし、見抜く能力もありません。

ただ、しばらく話しているうちに職人気質というのはすぐに伝わってきました。

そんなことで 挨拶もそうそうに済ませて出発。

詳細はかけませんが、ある事情がありこの社長と一緒にしばらく音沙汰のないお客さんのお宅を突然訪問してみようということになったのです。

1件目は不在、事件は2件目で起きました

一件目のお宅は不在。

そのまま帰ろうとする会長に「せっかく来たのですから名刺の裏にその旨を書いて投函して行きましょう」とアドバイスし、会長も「おお、そうだね」と名刺の裏に訪問した旨を書き込んでポストに投函。

そして二軒目です。

一件目のお宅から車で三キロぐらい離れた場所だったのですが、建築後13年経った数寄屋造りの立派なお宅に伺いました。

「Fさん!久しぶりじゃない!」

対応に出たのは奥さんでした。

上品な感じの女性で物腰も柔らか。

会長と奥さんの会話を再現してみましょう。

会長「ご無沙汰しています。F工務店のFです」
奥様「びっくりした! 久しぶりじゃない! いきなりどうしたの?」
会長「引き渡し後10年以上経過したOBのお宅を回ろうと言うことになりましてね」
奥様「アフターサービスってやつ?」
会長「そういうわけでもないのですけども、まあ皆さんどうしてるかなーという意味もありますし、お宅によってはリフォームをちょうど考えたというケースもたまにあるものですからね」
奥様「そうそう、ちょうどいいとこに来たわね。実は外壁が結構ボロボロになって来たような気がするのよね。これって全部塗り直したらいくらぐらいかかるの?」
会長「あっ!はい!では、ちょっと見積もり出しますね(驚)」

急展開だったのですが、このような話になりました。

会長はかなりびっくりしていましたね。

私も内心あまりに旨い展開になったものですからびっくりしたのは事実です。

ただ、ここまでスピーディーな展開ではないにしても、似たようなケースをこれまで相当数私は見てきました。

建築後10数年経てばリフォームの需要は必ずある

このように考えてください。

引き渡しをして15年、20年と経ったお宅であれば、極めて高い確率でリフォーム需要が発生しているのです。

それどころか、引き渡し後10年未満のような案件であっても、意外なほどリフォームの要望が出るから面白いのです。

訪販会社が軒並み外壁リフォームをかっさらっていく現状がある

外壁リフォーム専門の訪問会社がありますが、業績好調会社は笑いが止まらないほどの収益を上げています。

もちろん中には悪徳業者がいるわけですし、良心的な会社であっても基本的には高い利益率を上げていることは容易に想像できるでしょう。

ただ、そういう彼らは 飛び込み訪問で営業を行っているのです。

逆の立場になってみてください。

あなたが築15年の家に住んでいて、そろそろ外壁が傷んできたと考えていたとしましょう。

そこへ突然の訪問。

インターホンの向こうにはビシっとスーツを着た背広姿の若いお兄ちゃんがいます。

ドアを開けて出てみると「外壁が傷んでいますよ」と話し、早くしないと大変なことになりますとせき立てるわけです。

そこで見積もりがすぐ出されて契約を迫られるわけですが、5万10万円の話ではありません。

150万、200万といった見積もりが出てくるのです。

それを出されて即押印をするなんてことを考えられるでしょうか?

ところが、そこで決断をくだして判を押す人がいるから、訪問販売業が成り立つのです。

しかし、あなたのこの家は、どこかの工務店かハウスメーカーが建てた家です。

本来であればそこの住宅会社の営業が声をかけてきて、あなたもそこに外壁リフォームを頼むのが普通ですし筋ともいえるのですが、現実にはそうならないのです。

リフォーム受注を取るのは簡単なこと

“簡単”と言うと語弊がありますが、あえて“簡単”と書かせていただきます。

訪問販売でいきなりやってきて、その場で100万円単位の仕事を取ることと比較すれば、その家を新築した工務店ならば既に人間関係はできていますし、お互いの信頼関係も構築されているはずでしょう。

また、懐具合もある程度分っていますし、家族構成なども把握しています。

さらに言えば、間取りも当然把握していますし、建物の構造も分っています。

どこに筋交が入り、どこに火打ち金物が打たれ、どんなクロスを使っているか、キッチンはどこのメーカーかなど、細かい情報もすべて記録に残っているのです。

これだけのアドバンテージがありながら、リフォーム受注がとれないどころか外壁リフォームやその他のリフォーム工事を他の会社に取られてしまうというのは、どう考えても合点がいかないと思いませんか?

「リフォーム受注を撮るのは簡単なこと」と私が啖呵を切ったのはそういう意味です。

もちろん、ふらっと顔を出したからといって、いきなり100万円200万円のリフォーム受注をバンバン取れはしません。

ただ、インターホンを突破して、お客さんと顔を合わせて話すことが最大のハードルになっている訪問販売の営業マンと比べれば、新築担当の工務店は電話やメール一本で「ちょっとお時間取ってくれますか?」で簡単に顔を合わせることはできるのです。

顔を合わせるどこか、家の中に招き入れてくれお茶やお菓子が出てきても不思議ではありません。

もう一度くり返します。

これだけの有利なポイントがありながら、リフォーム受注が取れないのはおかしいと思いませんか?

基本は地ならしのための訪問活動

既述したF工務店のように、訪問したらいきなり外壁リフォームの受注がとれた、というケースはそうそう発生しません。

しかし、顔を出す行為が、あなたの存在をお客さんの頭の中に刻みつける極めて有効な手段となるのです。

いざリフォームをやろうと思った時「そういえばF工務店にも電話してみようかな?」と思いだしてもらえればいいのです。

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