「商品を売る前に自分を売れ」これは大昔から語り継がれる営業の鉄則と言ってもよいでしょう。
誰もが耳にしたことがあるでしょうし、意識して実践している会社や個人の方も多いと思います。
誰もが知っているこの基本的な話ですが、実例や成功事例を交えて今回のコラムでご紹介していきましょう。
わかっているようでわかっていない、やっていない、できていないのがこの自己開示です。
簡単にできることなので、不動産、新築、リフォームをはじめとしたすべての業種の方が是非真似をしてください。
有名ハウスメーカーの営業現場ではこんなことがおこる
どこの会社でもいいのですが、例えば積水ハウスを例にとってみましょう。
積水ハウスの展示場は全国どこに行ってもあります。
仮にあなたが家を建てようと思い、積水ハウスのある展示場にノーアポイントでふらっと訪問したとしましょう。
玄関をくぐると、あなたの来店はセンサーに感知されます。
そして、その情報を察知した営業マンが現れるのです。
問題はこの営業マン。
できれば優秀で誠実な営業マンに当たりたいのは山々ですが、これはいわゆる営業マンガチャ状態。
たまたま現れた営業マンが、積水ハウスと契約した場合はあなたの担当となってお世話をすることになります
会社は有名だが営業マンは知らない人
積水ハウスの社名は誰もが知っています。
詳しい建物構造や会社の内部まではもちろん分からないわけですが「有名な会社で安心できるだろう」との認識は誰しもが持つでしょう。
ですから、積水ハウスの社歴や資本金や借入金がどうのこうのと執拗に聞いてくる人はまずいません。
有名な会社で信頼できるということが大前提になっているからです。
しかし、目の前に現れた営業マンはどうでしょう。
あなたにとってこの営業マンは全く知らない初対面の人間です。
積水ハウスという信頼ある会社の社員であることは信頼性を一定程度担保しますが、ひょっとしたらだらしない性格かもしれませんしそもそもあなたとそりが合わない可能性もあります。
つまり、積水ハウスという法人は自己開示をしなくてもある程度信頼されるのですが、営業マンは自己開示をはっきりしないと、お客さんの信頼を得られないということになるのです。
営業マンガチャ
〇〇ガチャなる言葉はかなり定着したと思います。
もっともポピュラーなのは親ガチャでしょう。
親の財力、社会的地位、社交性などさまざまなものが、その子どもの未来を決めてしまうということです。
これが住宅展示場にも当てはまります。
目の前にたまたま現れた営業マンがあなたの担当なのですが、これはまさしく営業マンガチャと言えますね。
積水ハウスは信頼できるのですが、とぼけた営業マンに当たったらたまったものではありません。
ですから、営業マンが自己開示をすることが重要なのです。
その自己開示の内容をお客さんが好意的に評価してくれれば、契約してくれる確率が高まります。
ある大手ハウスメーカー営業マンの自己開示
大手ハウスメーカーに勤務するAさん
Aさんもこの自己開示を営業の切り札として使っています。
住宅展示場にやって来たお客さんに対して接客をするわけですが、接客開始後5分以内に自己紹介を書いたA4サイズの紙を渡すのがAさんの定番。
この自己紹介のコピーは私もしっかり持っているのですが、〇〇小学校卒業し、〇〇高校、〇〇大学と実名で経歴が書いてあります。
ただ、一見してすぐに分かる目立つ内容が、大学時代に水泳でオリンピックの選考会に出た文章です。
オリンピック選考会時の泳ぎを新聞に取り上げられた記事をコピーして大きく貼ってあります。
この紙を渡されたお客さんとしては、一瞬見るとなんだろうと思ってそこを見るでしょうね。
そこには大きくこう書かれています。
「〇〇 オリンピック選考会に出場しましたが、あと一歩でオリンピックに出られなかったのです!今でも非常に悔しいです!」
ほとんどの人が驚く
もしあなたが、このくだりを見たらどう感じるでしょうか?
「ふーん」と何の感情も示さないかもしれませんが、実際にはほとんどの人が「えっ?オリンピック?すごいね!」と驚くとのこと。
お客さんがこのように食いついてくれたらAさんの勝ち。
Aさんはとても口下手なのですが、お客さんがこのように話を振ってくれると、そこからは水泳の話をしながら雑談をするが彼の成功パターンなのです。
一般的にどうでしょう。
スポーツで相当なところまでいった話は、悪印象にはなりません。
特にお客さんが同じようにスポーツをしていると話が一気に盛り上がるらしいです。
これも簡単に想像が付くことです。
「私も水泳をやっていたんだよ!」となる確率は高くないと思いますが、これが野球やサッカーになると、その確率は高くなるでしょう。
お互いに野球をやっていたとなれば、ポジションはどこだったとか、何処の大会で、どこの学校と当たったのかなどと話が盛り上がるのは確実です。
つまり、学生時代にやっていたスポーツ一つをとっても、自己開示をすることが営業上重要であることは明々白々です。
パワービルダー勤務の入社20年のベテランBさんは子供のころ転勤族
Bさんとはかれこれ20年の付き合いになりますが、彼は若手の頃べらぼうに売りまくり、今は部長を務めながらいまだに自分でも売っています。
Bさんも展示場などの初回面談では半分ほどの時間雑談に徹するそうです。
彼の得意技は自分の幼少期の話。
「私は子供のころ親が転勤族で地域を転々として寂しい思いをしました。そんな私を救ってくれたのは野球です」
実際の現場でどのような空気感で話をしているのか私は知りませんが、この話をするとお客さんの心を掴めると断言します。
特に小さな子供がいるお客さんに対しては、何か共鳴するものがあるのでしょう。
キーワードは子供に寂しい思いをさせてはいけないということ、そしてもう一つは野球をやってきたということです。
筆者も自分のことはよく話しました
私も現役時代は自己開示を徹底的にやりました。
ただ、すべて口頭でしたので、プロフィール表という形にはしていませんでした。
しかし、その狙いは同じです。
完全に個人的な話ですが、私は練馬区内の朝日新聞専売所に住み込み、奨学金をもらいながら大学に通っていました。
自分としてはそんなに大変だった記憶もありませんし、こんなもんかと思っていたのですが、お客さんにとっては結構インパクトのある話だったようです。
特にバブル真っ只中での新聞配達生活でしたので、イケイケの時代を体験していたお客さんにとっては、余計にこの話が面白かったようです。
貧乏自慢をする気はありませんが、奨学金をもらい新聞配達をして大学に通っていたという話は絵になるのでしょう。
また、このような話を聞くと「この人(筆者)は悪い人ではないだろう」「きっと真面目な頑張り屋さんなんだ」と映ったのでしょうね(笑)
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。