不動産を買い取りしてほしい、売却の仲介をしてほしいなど、不動産会社にはさまざまな依頼がされています。
仕事の受注にあたって大切なことの1つが、対象物件の調査を行うことでしょう。
いい加減な調査を行うと、後々重大なトラブルに発展してしまう可能性があるからです。
そこで今回は、物件の調査不足によるトラブル事例をご紹介します。
ぜひトラブル事例を反面教師にして、物件調査は念入りに行ってください。
物件調査で大切なことは「目的を明確にすること」
不動産の物件調査で代表的なものは現地調査と役所調査でしょう。
調査を行う際、なんとなく現地や役所に足を運んでいませんか?不動産はその特性上、1つとして同じものはありません。
物件や売主・買主の事情などによって、重点的に調査するポイントが異なるでしょう。
物件調査において大切なことは「目的を明確にすること」です。
重要事項説明書を作成するため、売主・買主から受けた質問に回答するため、建築のためなど、調査の目的はさまざま。
物件調査では、目的を明確にして「何を知りたいのか」考えながら調査を行うようにしてください。
物件調査を怠るとどうなる?トラブル事例をご紹介
不動産業界で働く人間であれば、物件調査が大切であることはよくご存知でしょう。
それでは物件調査を怠ると、どのような問題が起こることが考えられるでしょうか。
ここでは調査不足によるトラブル事例をご紹介します。
建築に関する調査不足
マイホームを建築しようと土地の購入を検討していたAさん。
不動産会社の担当者は建築に関係する制限などを調査し、「特別問題はありません」とAさんに伝えました。
Aさんは土地購入と並行して建築士と打ち合わせしていましたが、その中で地区計画による制限があることが判明。
地区計画の内容を遵守すると、Aさんの希望が一部叶わないことがわかったのです。
役所調査では、土地の用途地域や建ぺい率、容積率など建築に関することを調査します。
地域によっては、地区協定や建築協定が規定されていることがありますので注意が必要です。
境界トラブル
取引対象である土地の境界を、売主は「隣地との境界がわかりにくいから植木鉢を置いている。植木鉢の端までが敷地」と説明していたのでそのまま顧客に説明しました。
しかし隣地所有者は、「植木鉢がこちらに越境していて迷惑している」という認識のため、引渡し後にトラブルとなってしまいました。
土地の売買においては、原則として売主に境界明示義務があります。
隣地との境界は「境界標」と呼ばれる杭やプレートなどを目印として示されていますが、長い年月が経つと境界標が見当たらず、隣地との境界が不明確になっている場合があります。
不明確な場合は土地家屋調査士にきちんと測量をしてもらうなど、対処法を売主に提案すると良いでしょう。
設備トラブル
売主から「キッチンにある食器洗い乾燥機は使用できる」と聞いていたので動作確認をせずに買主へ引き渡したところ、故障していることが判明しました。
不動産会社の担当者から「設備は問題なく使用できる」という説明を受けて物件を購入した買主とトラブルに発展してしまいました。
中古住宅にはさまざまな設備が設置されています。建物の設備を確認する際は、念のため動作を確認しておくと良いでしょう。
建物内の設備を確認していくうちに、確認漏れが出てしまう可能性があります。
ですから、できれば動作確認の際に売主にも同行してもらい、一緒に確認してもらうことをオススメします。
売主への聞き取り不足
売主は売却金額が低くなることを恐れ、不動産会社の担当者から聞かれなかったので過去に事件のあった土地であることを伝えませんでした。
買主は、物件の近隣に住む人からの情報で知ったため、「事件のある土地だと知っていたら購入しなかった」とトラブルになってしまいました。
事件・事故・火災などのようなネガティブな要素があると、売却が難しくなるのではないか…と考える売主がいます。
しかし、買主に重要な情報を提供せずに契約をしてしまった場合、後々トラブルに発展する可能性があるのです。
事実を「ネガティブな要素」と受け取るかどうかは人それぞれ。必ず、売主・買主双方が納得した上で契約が締結できるよう、売主への聞き取りを行って情報を引き出しましょう。
マンション管理規約の確認不足
ペットを飼育できるマンションの購入を考えていたEさん。
担当者から「このマンションではペットを飼育している人がいますので、ペット飼育は問題ありません」と説明を受けて購入しました。
しかし入居してから、管理規約でペットの飼育が禁止されていることがわかりました。
ペットを飼育しているのは限られた人だけで、特別な許可を得なければ飼育できないということでした。
分譲マンションでは、管理規約が定められています。
ペットの飼育に関して、管理規約で禁止されていたり、飼育に条件がつけられていたりすることや、ペット以外にも楽器演奏に時間制限があることなどが定められていることがあるのです。
分譲マンションの調査では、管理規約の内容を確認しておきましょう。
トラブルを防ぐためにできること
上記でご紹介したように、物件の調査不足が結果的にトラブルを生み出してしまうことがあるのです。
どの会社でも、トラブルはできる限り避けたいもの。ここでは、トラブルを防ぐためにできることについて解説しましょう。
疑問に感じることがあれば調査を続行する
調査をしていく上で、これまでの経験や知識から疑問に感じることがあれば、調査を続行しましょう。
「おそらく大丈夫だと思う」と「調査をした上で問題はなかった」では、顧客の安心度合いも異なります。
また役所の人は、聞かれたことにしか答えないことが多いため、例えば建築指導課などへ出向いたときには、一通り質問が終わったあとに「建築にあたって何か特別な法令や制限はありませんか」などと投げかけることをオススメします。
調査の基本は省略せずに調査する
不動産の調査では、現地のほか、さまざまな施設に足を運ぶことになります。
正直に言って、かなりの手間がかかります。
場合によっては、現地と役所などの施設を何度も往復することになることもあるでしょう。
調査を怠ると後々のトラブルに繋がる可能性がありますので、面倒だと感じても調査の基本的なことは省略せずに行いましょう。
顧客への説明は「とにかくわかりやすく」
物件調査では調査の目的を明確にして行うことが大切ですが、顧客への説明の仕方も非常に大切です。
とくに不動産に馴染みのない人にとっては、用語1つ1つの意味がわかっていないことがあります。不動産の取引では、不動産業界特有の用語、法律用語など、日常生活では聞きなれない言葉が使用されています。
顧客へ調査結果を伝えるときには、「とにかくわかりやすく」意識して説明すると良いでしょう。
説明する際、相手にきちんと伝わっているかどうかを確認してください。
相手の表情などから理解していなそうだと感じたら、顧客に「ご不明な点はございませんか?」「わからないところがあれば、随時仰ってください」などと話しかけながら進めてみてください。
トラブルを防ぐために物件調査は念入りに行おう!
不動産の知識・経験がない人にとっては、すべてが初めての体験です。
そのため顧客側は、「何を確認したら良いのかわからない」「不動産の取引ではこれが普通なのか?」と不安に感じていることが多くあります。
「おそらく大丈夫」ではなく、物件調査は念入りに行いましょう。
調査を進めていく上で、事件・事故などのネガティブな事実を知るかもしれません。
しかし、後々トラブルに繋がりそうな重要な事実は契約前に必ず顧客へ伝えてください。
売主・買主双方が納得した上で気持ちの良い取引ができるように、物件調査をきちんと行い、サポートしていきましょう。