どこまで知ってる?リフォーム工事の公的制度

住宅業界では新築からリフォームへのシフトが国の政策としてもおこなわれています。

そのなかには既存住宅の質を高め流通を促進させる目的の制度もあり、リフォーム工事を担う工務店などはこれらの制度について把握しておく必要があります。

これらの制度は税制優遇制度と併せて活用することにより、顧客満足度の向上と工務店の受注機会増加を図る要因ともなり得るものです。

ここでは9つの制度について概要をお伝えします。

認知度の低い傾向がある「住まいるダイヤル」や「住宅履歴情報」などの制度を知る機会にもしてください。

長期優良住宅の増改築に係る認定制度

長期優良住宅認定制度は2009年(平成21年)6月から新築を対象にはじまり、2016年(平成28年)4月から既存住宅の増改築工事にも適用されるようになりました。

住宅の状態が長期間にわたって良好に維持できるよう、適切な措置を講じた場合に「長期優良住宅」として認定する制度です。

具体的な措置としては次の4つをいいます。

1. 構造や設備が長期に使用できる
2. 居住環境に対する配慮がおこなわれている
3. 住戸面積が一定以上である
4. 長期的な点検・補修計画が策定されている

長期優良住宅の認定を受けると次のようなメリットがあります。

1. 長期優良住宅リフォーム推進事業の補助金が受けられる
2. フラット35リノベの金利引き下げが可能
3. 住宅ローン減税や投資型減税が適用される
4. 地震保険料の割引が可能

>>国土交通省の長期優良住宅のページ

既存住宅インスペクション・ガイドライン

中古住宅の売買時に取引対象物件の劣化状態などを専門家が点検し、売主・買主がその情報を共有する仕組み「住宅診断(インスペクション)」については、媒介契約時に専門家のあっせんなどについて説明することが宅地建物取引業法で定められています。

売買時に限らずリフォーム工事を計画する場合には、現状の劣化状態などを点検しその結果にもとづき計画を立てることが望ましく、インスペクションの方法について一定の基準を定めたものが「既存住宅インスペクション・ガイドライン」です。

策定されたのは2013年(平成25年)6月であり、今後見直しされる可能性もありますが、基本的な考え方は参考になります。

>>国土交通省が公表したガイドライン

住宅リフォーム事業者団体登録制度

国土交通省の告示にもとづき創設された制度です。

2021年8月現在16の団体が登録されています。

住宅リフォームを営む事業者はたいへん多く、一定規模に満たない工事については国土交通省の建設業許可が不要なため、新規参入や既存事業者から独立するなどにより新規事業者が多いのも事実です。

そのため消費者からは『信頼できる業者を探すのがむずかしい』『リフォームを依頼したが納得のいかない内容だった』などのクレームも多く、信頼されるリフォーム事業者としての評価を受けるには「住宅リフォーム事業者団体」への加入が有効な方法です。

団体は上記のようにたくさんあり、リフォーム業界の健全な成長・発展を目的とした「住宅リフォーム推進協議会」が設立されています。

事業者団体への加入に関しては、同協議会が発信する情報も参考になります。

>>国土交通省の住宅リフォーム事業者団体登録制度のページ

住まいるダイヤル

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する、国土交通大臣指定の相談窓口です。

リフォーム工事の顧客となる一般消費者からの紛争相談はもちろんですが、事業者からの相談も可能です。

・施主が工事代金を支払わない
・施主からの要求がエスカレートする

などの紛争・トラブルについて、あっせん・調停・仲裁の裁判外紛争解決手続きが可能です。

事業者にとって参考になる次のようなトラブル事例集もあり、困った時の参考になりそうです。

・契約を交わさず着手した工事を途中で他社に切り替えられた
・設計完了後に予算オーバーを理由に解約されそう
・施主の希望でデザインに凝りすぎ雨漏りのクレームになっている
・連絡ミスで住宅性能表示制度の検査を受けていない
・第三者監理を施主から要望された
・地盤調査をせずに着工しあとから追加が発生してトラブルに

>>住まいるダイヤル

住宅履歴情報

住宅は新築により建築されたのちさまざまな修繕やリフォームがおこなわれます。

これらの工事履歴を所有者が正確に記録することは少なく、売買により所有者が変わる場合や所有者がリフォームする場合においても、以前の工事履歴が判然としないため適切なリフォーム計画を立てられないといった事情が生じます。

住宅の工事履歴情報は現在の所有者だけではなく、将来的な関係者にも共有されることが望ましく、第三者組織による情報の保存・管理を目的として「住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会」が2010年(平成22年)5月に設立されました。

蓄積保存する履歴情報は次の4つのシーンで活用されます。

1. 点検
2. 不具合の発生
3. リフォーム
4. 売却

2021年8月現在44の団体・企業が住宅履歴情報サービス機関として登録されており、住宅履歴情報に住宅を登録するには、各サービス機関にておこなうことになります。

>>住宅履歴情報(いえかるて)

リフォーム瑕疵保険

「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」により、新築に義務付けされた瑕疵保証をおこなう「保証保険」は、リフォーム工事や大規模修繕工事にも適用できるようになりました。

リフォーム事業者は瑕疵保険を付保することにより、万が一施工ミスなどにより修繕工事の義務が発生した場合に、工事費の資金を保険により賄うことが可能になります。

さらに瑕疵保険期間中にリフォーム業者が倒産した場合、発注者は損害も含めた保険金の請求を自ら保険会社にすることができ、工事完了後の安心感をアピールすることも可能です。

「瑕疵保証保険」付きというリフォームメニューは、消費者に対する訴求効果も期待でき、受注増を図る営業戦略としても有効です。

>>住宅瑕疵担保責任保険協会

安心R住宅

安心R住宅とは構造性能などが安心でき、Reuse(リユース、再利用)、Reform(リフォーム、改装)、Renovation (リノベーション、改修)された住宅のことをいいます。

安心R住宅は次の要件を満たしていなければなりません。

1. 現行の耐震基準に適合するか、昭和56年6月1日以降に建築したもの、あるいは昭和56年5月31日以前に建築したもので耐震診断により安全性が確認できた住宅
2. 既存住宅売買瑕疵保険契約のための検査基準に適合している
3. 共同住宅では管理規約と長期修繕計画があり情報開示できること
4. 事業者団体ごとの基準に則り「汚い」イメージが払しょくされたリフォームをおこなっているか、リフォームに関する費用を含んだ提案書があり、リフォーム事業者のあっせんができる住宅
5. 所定の「安心R住宅調査報告書」を作成し交付するとともに情報の内容を提示できる住宅

「安心R住宅」を認定する事業者団体は国土交通省に登録します。

2021年8月現在、以下の13団体が登録されています。

>>国土交通省の特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度のページ

住宅性能表示制度

2000年(平成12年)4月1日から施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづき創設された制度です。

住宅がもつべき性能について評価し「等級」により表示します。

評価する性能は以下の項目です。

・構造の安定性
・火災時の安全
・劣化の軽減
・維持管理更新への配慮
・温熱環境
・空気環境
・光・視環境
・高齢者等への配慮

評価は一般社団法人住宅性能評価・表示協会に登録されている評価機関がおこないます。

2021年8月現在の評価期間は全国に123件あります。

住宅性能を客観的な数値により表記するため、リフォーム工事の施主に対し工事内容の信頼性を高めることができます。

>>住宅性能評価・表示協会

住宅金融支援機構の融資制度

住宅金融支援機構の融資はリフォーム工事にも適用でき、2021年8月現在以下の融資制度を使うことができます。

個人向け 賃貸オーナー向け マンション管理組合向け
フラットリノベ 賃貸住宅リフォーム融資(省エネ住宅) マンション共用部分リフォーム融資
り・バース60 賃貸住宅リフォーム融資(耐震改修) マンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)
リフォーム融資(耐震改修工事) 賃貸住宅リフォーム融資(長期耐用耐震改修) 災害復興住宅融資(マンション共用部分補修(管理組合申込み))
リフォーム融資(部分的バリアフリー工事または耐震改修工事)【高齢者向け返済特例】 サービス付き高齢者向け賃貸住宅購入融資 災害復興住宅融資(マンション共用部分補修(管理組合申込み)) 【東日本大震災】
リフォーム融資(住みかえ支援(耐震改修)) 賃貸住宅リフォーム融資(サービス付き高齢者向け住宅) 災害復興宅地融資(管理組合申込み) 【東日本大震災】
災害復興住宅融資(補修) 賃貸住宅リフォーム融資(住宅セーフティネット)
災害復興住宅融資(補修)【東日本大震災】 災害復興住宅融資(賃貸住宅リフォーム)
災害復興住宅融資(補修・大阪府利子補給型) 災害復興住宅融資(賃貸住宅リフォーム) 【東日本大震災】
災害復興住宅融資(補修・鶴岡市利子補給型) 災害復興宅地融資(賃貸住宅)【東日本大震災】
災害復興住宅融資(中古リフォーム一体型)
災害復興住宅融資<東日本大震災(中古リフォーム一体型) 版>
災害復興住宅融資(補修)【高齢者向け返済特例】
災害復興住宅融資(高齢者向け返済特例・倉敷市補助型)
財形住宅融資(リフォーム)
財形住宅融資(補修)<東日本大震災特例措置>

たくさんの種類があるように見えますが、災害復興の特別な融資制度が多くあり、全国どこでも使える融資は太字で記載したものになります。

>>住宅金融支援機構

まとめ

国の制度には一般的に知られている制度とあまり知られていない制度があります。

それぞれの制度には目的があり、相互補完的に役立っているケースもあります。

リフォーム工事を依頼する顧客にとっても、活用することによりメリットとなる制度もあり、最新の情報には常にアンテナを張っておきたいものです。

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が公表している「2020年度住宅リフォームに関する事業者実態調査結果報告書」では、同業他社が各種制度に関してどの程度把握し活用しているかなどがわかります。こちらも参考にしてください。

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