【不動産業者必見!!】クレーム対応について

連絡がきて、嬉しい人などいないであろう不動産クレーム。

処理のために時間は取られるし、多方面に頭を下げなければならない上に当事者であれば気分も落ち込みます。

ないにこしたことがないクレームですが、どれだけ注意をしていても少なからず発生するのもまた「クレーム」です。

「不動産業はクレーム産業」と言い切り、電話などの口調では平身低頭に対応していながらも、その実は椅子にふんぞり返り返っているなど、クレームに慣れてしまっている方が多いのも不動産業界の特徴ではないでしょうか?

調査不足など自らの「落ち度」で顧客に迷惑をかけた場合、クレームの入った理由についても納得できますし、今後、同じミスをしないようにという経験にもなります。

ですがそうではない場合、たとえば部下がクレームを受け対応しても「収まり」がつかず、上司として同行したとき、予め聞いていた話と顧客の話が食い違い「いったい、どっちの言っていることが本当なの?」と悩むこともあるでしょう(原則はお客様の言い分が正しいというスタンスで和解に向け話をしますが……)

経営者や役職者の「責務」ですから、激しい口調で怒鳴られてもひたすら耐え忍ぶしかないのですが、そうは言っても心のなかで「なんで、自分が……」と悲しくなります。

そんな経験ありませんか?

業界特有の傾向もありますから、クレームをまったくのゼロにすることは難しいのでしょう。

ですが限りなくゼロにすること、もしくはクレームが発生しても大事にならず収めることは、これから解説する幾つかのポイントに注意すれば可能です。

あくまでも不動産業界31年の経験で学んだ筆者なりの「クレーム防止策」ではありますが、皆様の参考になればとの思いから解説したいと思います。

信頼関係があればクレームに発展しづらい

まず一定以上の信頼関係があればクレームは発生しづらくなります。

正確には、思うところがあっても信頼関係による抑制が働き、心情的にクレームを言いにくいからです。

クレームはサービスに対する苦情・改善要求・権利請求などを表す言葉として定着している和製英語ですが、もう一つ「主張」の意味を持っています。

そこである程度の関係性が構築されている場合には、主張としてのクレームではなく、あくまでも「相談」として持ち出されることが多くなります。

つまり「オタクから購入した物件だけど!」といったお叱り口調ではなく、「今回、購入した物件について相談が……」といった感じです。

どちらの言い回しでも迅速に問題処理しなければならないのは同じですが、受け取る私達にとって心のハードルは低くなります。

知人など当初から信頼関係が構築されている状態ではなく、物件問い合わせ等から始まるお付き合いの場合、下記のポイントを心がけて信頼を築き上げていくことになります。

これらを意識することにより信頼関係を構築し、かつクレームの発生しにくい状態を継続できるからです。

1.マメに連絡する。

電話やSNSなど、連絡手法は顧客の要望により様々ありますが、心がけるのはマメな連絡です。

ただしマメとはいっても友人関係ではないのですから、意味もないのに連絡頻度だけを増やせば煩わしく思われるでしょう。

余程、緊急性の高い連絡以外は顧客の仕事中は避けるのはもちろん、昼食や夜食などの時間帯は避けるべきでしょう。

また奥様に連絡する場合でも、夕食準備中の時間帯は避けるなどの配慮が必要です。

そのように時間帯等も考慮したうえで、依頼があった場合の進捗状況や現状などについての連絡は、一体の頻度でおこなうよう心がけましょう。

また当たり前のマナーですが、筆者にも度々かかってくる新築マンションの営業電話(なぜ電話をしてくるのか未だに不明ですが)などは、社名を名乗ってからいきなり話し始めます。

「〇〇市に建築中、人気抜群の新築分譲マンションにキャンセルが出ましたのでご紹介を……」なんて具合に、こちらの状況や意向も聞かず一方的に喋りだします。

不特定多数に電話することを強要している会社によくある話法です(筆者も似たような電話営業の経験はあります)

ですが最低限として「恐れ入りますが、いまお話をさせて戴いても宜しいでしょうか?」と、相手方が話をできる状況であるかを確認するのは基本でしょう。

そして相手方が応対に難しい場合には「それでは何時頃、お電話させていただいても宜しいでしょうか?」と、次回連絡のアポを取るぐらいのマナーは必要でしょう。

マメに・礼儀正しく・不必要な連絡はしないを心がけるだけで、関係性が構築されます。

2.思い込みで説明しない。

不動産用語や関連法、融資等に関する話しは、私達、不動産業者にとっては日常用語であっても、顧客にとっては初めて聞く話です。

わかりやすく説明するよう心がけましょう。

クレームを受けて詳細に話を聞いていくと、契約不適合など物理的な瑕疵を除けば顧客の「思い込み」が原因である場合も多く、理解が不足していることにより「当初、聞いていた話と違う!」という言い分になっていることが多いものです。

理解力に個人差があるのは仕方がないことですが、私たちは不動産のプロです。

勘違いや理解不足の場合には、「言った・言っていない」などの水掛け論に発展しがちですが、双方が感情的になれば収拾がつかなくなります(クレーム処理のため部下に同行して一番、多いのがこのパターンです)

正しく理解を得られる説明ができていなかったのであれば反省して「説明に不足があったようで申し訳ございません。あらためてご説明をさせて戴きたいと思いますが」と、説明に不足があった可能性について謝罪し、あらためて説明をする必要があるでしょう。

不動産屋の常識・非常識なんて造語もあるように、物件や法的な説明をする場合には、都度、理解の程度を確認しながら時間をかけて説明するように心がけることが大切です。

また私達の記憶違いで誤った説明をすることもあるでしょう。

理解が不足しているのに思い込みで説明をするのは論外ですが、誤った説明をしたことに気がついた時には、迅速に謝罪と併せ訂正をおこなうようにしたいものです。

3.依頼や報告は期日を遵守する。

約束した期限を守るというのは、不動産業界ではなくても最低限のルールです。

時には不可抗力や情報が収集できないなど様々な理由により約上期日を超える場合もあるかもしれませんが、そのような場合、すみやかに相手方に連絡をするのが当たり前です。

連絡をして謝罪し、なぜそのような状態になったかを説明したうえで期日延長も含め対策を検討します。

ミスは人間誰しも起こりうるものですし、「叱られるのが怖い」などの気持ちも理解できますがまずは報告する。

対策はそれからです。

それでもクレームになった場合の対応方法

クレーム,対応

前項でクレームを減少させるためには信頼関係を構築し、それを持続していくことが何よりの対策になると解説しました。

そのような対応を心がけている筆者にクレームがないのかと言えば、そんなことはありません。

ですが、ここ十数年は自身が担当した案件で大きなクレームに発展した例はありません(昔は裁判寸前まで発展したものもありますが……)

近年の大きなクレームは、勤め人で会った時代に部下が発生させたものや、同業者から「収拾がつかなくなったから、申し訳ないけれど同行してもらえないだろうか」と請われ対応したケースです。

不動産業界に31年も在籍して様々なクレーム対応の経験をしたお陰で、それなりに処理能力は高くなったと自負しています(それだけ辛い思いをしてきたということでしかないのですから、自慢にもなりませんが)

そんな経験則から得た、クレーム対応方法について解説します。

1.事実関係の確認が最優先

モンスタークレーマーなどの用語が一般に浸透したからでしょうか「事実関係が分からない状態で謝ったら負けだ!」なんて話す方をよく見かけますが、ある意味で正しくまたある意味では間違っています。

確かにクレームの目的が過剰な損害賠償であるなど、状況確認をせず謝罪すれば「謝ったのは、お前たちに落ち度があるからだろう!」なんて言われるケースもありますから、状況確認が優先されるのは間違いありません(実際に、安易に謝罪をしてしまった部下に同行した際に、いきなり言われたセリフです)

顧客に不愉快な思いをさせたのは事実でしょうから、そのことについては誠意を持って謝罪しましょう。

「このたびは不快な思いをさせたことにつき、誠に申し訳ございませんでした」など、あくまでも相手方の心情を不快にさせたことにたいする謝罪です。

ただし、正確な状況や事実関係を確認できるまでは事案について安易な謝罪はせず「今回は事実関係と状況の確認をするためにお伺いしました」などと、目的を明確にすることが大切です。

また相手方が感情的になり一方的にまくし立てる時には反論せず、気持ちが収まるまで適度に相槌や質問をはさみ、落ち着くまで待ちましょう(筆者の経験ですが、どんなに激昂していても1時間以内で収まります)

2.感情的にならない

筆者は自分が温厚な人間だと思っていませんが、クレーム対応時には冷静沈着を心がけ感情的にならないよう注意しています。

感情が高まるとつい言葉遣いも荒くなりますし、またクレーム内容によっては反論したくもなりますが、そこはグッとこらえましょう。

相手方の言い分と、要求する内容や事実関係の全てを把握するまで反論は必要ありません。

3.クレーム内容を整理して確認する。

クレームの目的は様々です。

契約不適合によるものか、対応が悪かったので文句を言いたかっただけなのか定かではありません。

ですから、前項で解説したようにまず不快にさせたことについて「謝罪」し、相手方の趣旨を聞き取ります。

そして聞き取った内容を整理して「〇〇の部分の改善を求められていると理解しましたが、間違いはございませんでしょうか?」と、冷静に要望を言語化して確認を取り、可能であれば打ち合わせ記録などに記載して相手方に確認してもらうことです。

自身に「権限」がある場合にはその場で解決案を提示することも可能でしょうが、そうではない場合、一度、会社に持ち帰り返答させていただくことを伝え即断は避けましょう。

返答は迅速を心がけ、相手方に正しく結果を伝えることが大切です。

理不尽な要求にたいしては?

クレームが金銭目的である場合に多いのが「誠意を見せろ!」という言葉です。

その他にも、少々の傷で簡単に補修や部材の交換ができるのに「丸ごと交換しろ!」というのもあります。

合理性のある要求であれば迷惑損料なども検討して対応する必要もありますが、内容がまとめきれていない段階で安易に「金銭の支払い」により解決策を提示すべきではありません。

このような傾向の方に安易な提案をすれば「味をしめ」、しばらくするとまた要求してきます。

筆者は何度もそのような経験をしてきました(筆者ではなく、前任者が応じていたのです)

金銭の支払いに妥当性はない旨を伝えると「前任者は迷惑をかけたからと誠意を見せたのに、オマエは何だ!」と怒鳴られましたが、そんな言葉に怯えてはいけません。

「お客様のおっしゃる誠意とは金銭であると受け取りましたが、誠意とは一体、金銭に勘案して幾らのことなのでしょうか?申し訳ございませんが、これからのやり取りは後日紛争を防止するため全て録音させていただきます」と言いながら、ICレコーダー等を取り出して録音を開始します。

この状態で具体的な金銭要求をしてきた方はおられませんが、さらに激昂する方は多いものです。

ですが主張内容に合理性があり、請求も納得のいく場合ならいざしらず理不尽な要求にたいしては法的な方法も含め、厳格な対応する必要があります。

最近では耳にしませんが、筆者が不動産業界に入りたての頃に経験した「立ち退き案件」などでは、ビルに専有している反社組織の方々はまず恫喝して言質を取り、そのうえで念書を書かせるのが常套手段でした。

クレーム対応から逃れたいばかりに、簡単に覚書や念書を書くのは論外ですが、現在でも「一筆書け!」と強要するのは日常的にある話です。

「書いたから負け」とまでは言いませんが、その後の交渉が不利になることは間違いありません。

自分で処理できないと判断した場合に顧問弁護士がいるのであればそちらに、そうではない場合、上席などに早い段階で相談するのが良いでしょう。

いずれにしても理不尽な要求にたいしては毅然と立ち向かう心構えが必要です。

まとめ

今回は筆者の経験をもとに、クレームについての心構えについて解説しました。

経験からの解説ですので、必ずしもこれが「正解」であるとまでは言いません。

ですが冒頭でもお話したように、自身にたいするクレームは経験年数に応じて減少しましたが役付として部下のクレーム同行は日常のようにありましたから、対応件数はそれなりだと思っています(自慢になりませんが)

クレーム対応は営業に通じる部分があります。

相手方の微妙な言い回しやニュアンスなどを読み取り、正確に言語化して解決策を提示することにより和解に持ち込むからです。

実際にクレーム対応により信頼を得て、知人を紹介して戴けるようになるなどの話をよく耳にします。

ですが最初はたいしたことのない話であったものが、連絡が遅延するなど対応が遅れ、そのような積み重が大きなクレームへと発展しているケースが多いように感じます。

クレーム処理は初動が肝心、そして誠意を持って迅速に対応する。

日頃からの心構えで余計な時間を取られる大きなクレームが減少するのであれば、それに勝るものはないでしょう。

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