【司法統計から考える】任売取り扱い知識が必須とされる理由

長期化するコロナの影響により収入や売上が減少した方が数多くなりました。

そのような生活に困窮した方を支援するため新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金制度が創設され、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止の措置の影響により休業させられた労働者のうち休業中に賃金を受けることができなかった方等を対象として給付が実施されました。

これら給付金については審査よりも給付を優先としていたことから悪用され、全国的に給付金詐欺が横行するなどの弊害もありましたが、収入が減少した事業者や労働者にとって頼みの綱となる政策でした。

このような給付処置は一定の効果を上げたと言えるのですが、疲弊し業績や売上が減少した企業は延命策として販売管理費の大半を占める人件費の削減を検討するのが「常」です。

そこで一番に割を食うのは派遣やパート社員、次いで業務スキルや役職等を勘案した上、給与の高い中高年層です。

住宅ローンを利用している場合、中高年層の多くは未完済でしょうから給与やボーナスのカット、もしくはリストラにより返済負担が重くのしかかります。

主婦がパートに出ているのも家計の足しにするためが理由でしょうから、突然、解雇されればローンの返済が厳しくなる可能性も予測されます。

労基法は存在していますが、実際には擁護されない弱い立場から雇用調整の対象とされているのが現実で、総務省統計局による完全失業者数を見ても女性の上昇が目立ちます。

完全失業者数,女性

このような背景から住宅ローン支払いに困窮される方が増加し、法的な支払い督促や調停・競売の申立が増加していそうなものですが、実際にはそうなっていません。

むしろ減少傾向なのです。

住宅ローン支払い,トラブル,件数

毎月情報が公開され、年度ごとでも確認できる裁判所司法統計の推移を見ると平成27年から令和元年までの過去5年間で民事調停は微増していますが支払督促は減少しています。

民事・行政事件,裁判所司法統計

それ以降、コロナ禍も含む令和2年及び3年においては訴訟・調停は前年対比で上昇、破産・督促・保全命令の各事件は前年対比で減少しています。

単純にこれらの数字だけを見れば「破産や督促事件が減少=住宅ローン支払い困窮者も減少」しているような印象を受けますが、実際には司法統計に現れない所で、様々な動きがあるのです。

その一つが任意売却の増加です。

今回は様々なデータにより住宅ローン困窮者が増加していることについて説明を行うと同時に、業績を伸ばしたい不動産業者には「任売スキル」が必須となる理由について解説します。

裁判所委員会でも議題として上げられている実態

一般社団法人不動産流通協会が公開している月ごとの物件公告数を見ても、競売事件の件数は減少しています。

一般社団法人不動産流通協会,競売事件

ですが、この数字だけで困窮者が減少していると考えるのは早計です。

代わって上昇しているのが任意、つまりは「任売売却」の件数です。

残念ながら任売は裁判所が介入しませんので正確にその全体数を把握することは困難です。

ですが任売が増加していることにより競売事件が減少しているという因果関係については、各裁判所で実施されている意見交換会でも度々、取り上げられています。

ご存じのように競売は、不動産価格が上昇している昨今ではあってもオークション方式ですから、競落価格を予想しながらも最低落札価格以上、できる限り低く入札できる金額で「札」を入れます。

結果的に金額は低くなり、債権者が回収できる金額も少なくなります。

任売は債権者が主導権を握るとはいえ、表向きは通常の売買ですから販売価格も競売と比較して高くなります。

住宅ローンが延滞されている場合、その債権は債権回収会社(サービサー)が金融機関から委託又は譲り受け、債権回収に動いている場合がほとんどですが、いずれにしても回収額が大いに越したことはありません。

つまり競売よりも任売で売却できるなら、その方が有り難いのです。

債務者にとっても競売で強制的に立ち退きをされるよりは、多少、引っ越しの融通を聞いてもらえる任売のほうがメリットも多く、何よりも高く売れればそれだけ債務が圧縮され、残債の額によっては手元に現金が残ります。

このように債権者と債務者の利害が一致することにより、任売は増加しているのです。

任売物件はどう扱う?

「任売」という言葉は知っていても、積極的に取り扱っている業者は少なく、経験があると言っても実際には1~2度程度ではないでしょうか?

宅地建物取引業者は、コンビニの数よりも多いのですが「任売」を扱える会社といえばごく少数でしょう。

任売の数は増加していますが、それは一部の任売を扱える業者の業績を底上げする結果が生じているだけに過ぎません。

ノウハウがないだけで利益が得られていないのはあまりにも勿体ない。

経験がなければ何やら難しく考え構えてしまうものですが、任売と言っても、売却自体は一般的な売買と同様です。

大きな違いは、販売価格の決定や売却承認がすべて債権者にあることです。

つまるところ任売案件を取り扱うのに、新たに覚える必要があるスキルは下記の2つだけです。

1. 住宅ローン支払い困窮者の探索
2. 債権者との交渉力

覚えてしまえばそれほど難しくもないのですが、やはり任売を扱ったことがないと何から初めて良いのかも分からないでしょうし、手探りで始めるには多少、ハードルの高い面もあります。

ご覧頂いている不動産会社のミカタサイトでは、不動産業者研修用の動画講座であるミカタラーニングにおいて、筆者が「任売」の扱い方について解説している動画(有償)で学ぶこともできます。

別段、宣伝目的ではありませんが住宅ローン困窮者は悩みを抱えていることも多いですから住宅ローンの支払いが延滞することは、別段、犯罪行為でもないし、そこに至るまでの様々な理由が存在するのであろうから落ち込む気持ちを盛り上げ、負債を精算し新たな生活を始めるための手段に過ぎないことを正しく伝える必要があります。

「住宅ローンの支払いに困ったら」などのフレーズで広告等をしても、相談するには葛藤がありますから、そのような方々と「縁」を結ぶにはやはりそれなりのノウハウが必要なわけです。

同様に少しでも高く売却して債権回収を希望するサービサーと、時間的な制約の中で販売活動を行う私達、不動産業者の意識も違いますから作成する査定書や、各種、通常取引とはことなる書類の提出時期などもあります。

自ら調べて経験を積み覚えていくことも出来ますが、一連の流れを経験者から学べば成長速度はより早くなるでしょう。

まとめ

競売や任売を扱っていると、何やら悪い不動産業者のイメージになるのではないかと心配される方もおられるようですが、そんなことはありません。

実際に債務者からは任売により支払い督促が停止されることから安堵し、サービサーの交渉や販売価格により有利な条件で売却できる可能性もあり、感謝されることの方が多いのです。

任売は3か月以内に確実に売却できる価格で販売するのがセオリーですから、購入者も割安に物件を取得できるのですから嬉しい。

サービサーも納得した額の債権を回収できますし、私達も正規の仲介手数料を報酬として得られるのですから問題なく売却することができれば皆、嬉しいのです。

もっとも任売スキルは職人芸のような部分もありますから、扱う者によりその方向性を意図的に操作できてしまう面が少なからずあります。

結局のところ扱う人によりけりです。

あくまでも筆者の希望ですが債権者・債務者、そして物件販売を媒介する私達、不動産業者の三方がそれぞれの利害において満足できるように活動いただければ嬉しく思います。

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