【一般的ではないからこそ正確に理解しておきたい】代理契約の実務

相続による所有権移転義務化が控えていることばかりが原因ではないでしょうが、最近、高齢者からの売却相談が増加しています。

もっとも、相談の傾向は各不業者の主要とするエリアや業務形態により変わるかとは思いますが、そのような高齢者の相談に応じていると、よくあるのが「難しいことはよく分からないから、アンタに全部任す」というセリフです。

全て任すと言われるほどに信頼されたのであれば業者冥利につきるのですが、多くの場合は本当に面倒だと思っているからが理由のようです。

とくに所有者がサ高住など老人施設に入居している場合や、健康状態が思わしくないけれども近親者が身近にいないケースなどでは、内見立会はおろか契約に関する打ち合わせ等も頻繁にはできませんし、連絡が取りづらいという点もあります。

「相場なみで売れれば良いから、面倒なことはすべて代理して欲しい」との要望が出されることも多く、この場合、求められているのは「代理」です。

判断能力に問題はないのですが仲介と代理の違いを説明しても理解が得られず、希望する要件を満たそうとすれば代理として一切を取り仕切るしかありません。

ところで、皆様は一般的な仲介と代理の違いはご存じでしょうか?

仲介による不動産売買契約とは違い、代理契約においては契約から決済そして引き渡しまで、仲介とは異なる点で問題が生じないよう、報酬やその責任の範囲まで含めて覚えておかなければならない注意事項が存在します。

今回はそのような代理人として稼働する場合の注意点やポイントについて解説します。

https://www.retpc.jp/archives/25299/

委任契約書に提携書式は存在しない

所有者からの依頼により代理を受任すれば、代理人として取引に関与することになります。

代理権は本人に代わり他人が法律行為をして、代理人による効果は本人に及ぶことになります。

そこで下記のような要件が必要となります。

1. 代理人に有効な代理権が存在する。
2. 代理人が本人のためにする旨(顕名)を示す。
3. 代理権の範囲で意思表示をなす。

これらの要件で代理権の範囲は特に重要とされ、親権者や後見人、家庭裁判所により保佐人等の審判による法定代理人とはことなり、任意代理人として委任契約で定めなければなりません。

任意代理人の範囲は原則として代理権授受行為で定めるとされていますから、委任状の文言や内容、代理人の地位などを明確にしておかなければ後々、紛争を生じかねさせません。

民法では第三節[代理]第99条以降で代理権について、第四節では第119条以降で無効及び取り消し行為について定められていますが、宅地建物取引士資格試験の設題範囲であることから記憶しておられる方も多いでしょう。

代理権の範囲は委任契約の締結時点で具体的に定めておく必要があり、それ以外の範囲における代理権の行使は無権代理となりますので注意が必要です。

代理権の範囲が定められていないもしくは不明確な場合における代理行為は第103条において保存行為・利用行為・改良行為など「管理行為(管理行為に処分も含まれるとする考え方もありますが、後日、紛争をまねく原因となります)」に限定されてしまうからです。

さて私達、不動産業者が所有者に依頼されて代理人となる場合に必要なのが、まず代理権の委任契約書です。

残念ながら国土交通大臣の定めによる標準契約書は定められていません。

ですから代理権を受任する場合には、自分で委任契約書等を作成する必要があります。

もっとも委任契約書については、「委任状」に宅地建物取引業法第34条2で定められている関係事項をすべて記載し、かつ、その委任事項を受任者である私達、媒介業者が受任した旨の書面を委任者(所有者)に交付すれば宅地建物取引業法上において問題は生じません。

ちなみに筆者が公益社団法人不動産流通推進センターへの相談内容を基にして作成し使用しているものが下記の書面ですが「委任状」にも関わらずA4書式で3枚構成となっています。

委任状

まず冒頭で委任である旨を明確に表示します。

委任状,冒頭

それ以降は売買物件の表示、売却条件、禁止事項、有効期間、解除に関する事項、指定流通寄稿への登録、業務報告、報酬の順で委任内容を記載しています。

これらにより宅地建物取引業法第34条2において定められている関係事項は全て記載されていることになりますから、任意代理人として委任の範囲で活動できることになります。

よく「代理」に関して同業他社から相談を受けるのが「任状や委任契約書と併せて媒介契約も締結したほうが良いのか?」との質問ですが、そもそも委任と媒介は趣旨がことなりますから原則論としては必要ありません。

宅地建物取引業法第34条2による記載事項を満たしていれば、宅地建物取引業法上において問題が生じないことは確認済みですが、国土交通大臣の定めによる標準媒介契約書には「代理」の文字が記載されていますので心配になるのでしょうか?

専属媒介契約

先程、ご紹介した筆者が使用している委任状においても、禁止事項や有効期間、指定流通機構への登録や業務報告に関しては専属専任媒介契約書で定められている期間等を援用していますが、心配であれば専属専任媒介契約で締結しても良いでしょう。

ただし媒介と委任は業務内容や権限もことなりますから、混同しないよう注意が必要です。

約定報酬の額は?

さて次に考えたいのが代理における報酬額についてです。

媒介契約の場合には宅地建物取引業法により「約定報酬額の制限」が定められており、その金額を超えて報酬を受け取ることはできません。

ただし代理においては委任者との合意により金額の上限は自由に出来ると考えがちですが、そうではありません。

「物件価格×6%+12万円」が上限となります。

つまり一つの取引で両手数以上の金額を受領することは出来ないのです。

代理人として代理報酬を得ることは当然にできますが、その上限はあくまでも両手数金額となり、自ら購入者を探索し媒介による契約を締結させても、委任者からの約定報酬が上限である場合には買主から報酬を受領することはできません(上限に達しない代理報酬の場合、上限との差額を購入者から報酬として受領することは可能)

その他、注意しておきたいポイント

媒介契約は売主・買主の双方から依頼されても問題ありませんが、委任契約を当事者双方とおこなうことは民法第108条による双方代理の禁止により利益相反行為にあたります。

自ら探索した購入者に対しては、あくまでも媒介契約の締結であると覚えておきましょう。

また代理人としてレインズに物件登録を行った場合、買側の媒介業者により客付けされ共同媒介になりますが、その場合においても一取引における上限は適用されます。

つまり上限金額を委任者から受領する場合、買側の報酬は受任者である者が負担しなければなりません(買側業者は自ら探索した顧客からは報酬を得ない)

レインズに物件登録する場合には、委任者からの約定報酬金額によりその旨を記載して置かなければトラブルに発展することもありますから注意が必要でしょう。

また委任状による代理権限は限定列挙している必要がありますから、取り決めをした範囲を超えた越権行為は無権代理であっても委任者がその責任を負うことになりかねません。

通常の媒介とは異なるということを自覚して慎重に対応する必要があるでしょう。

まとめ

増加する空き家問題の解消について、政府は本格的に法整備を進めています。

空き家が放置されている原因は相続トラブルのほか、相続をしたけれどもその所在地が遠方で管理できないなど理由は様々ですが、実際に手をかけず放置を継続している所有者はともかく煩わしいことが嫌いな傾向があります。

冒頭で例をあげた高齢者による「難しいことはよく分からないから、アンタに全部任す」とは異なる理由ではありますが「面倒」だというのが本音ではないでしょうか?

そのような所有者の「面倒だ!」という意識を変え、売却を決断させるには「代理」は有効な手段の一つでしょう。

あまり一般的ではない取引形態ではありますが、今後、そのような相談案件が増加することを見越して備えることが必要ではないでしょうか?

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