【いよいよ所有者不明土地特別措置法が施行】ガイドラインで学ぶ改正法の内容

本年(2022年)5月に公布された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律」が、同年11月1日より施行されました。

相続件数の増加に対し土地利用ニーズの低下などから所有者不明土地が増加を続けているといった背景もあり、何らかの対策を講じなければ今後さらに増加を続けることが懸念され、それを抑制するために市町村の権限を強化すると同時に関連法を整備することが今回の改正された法律の目的です。

今回の改正に先立ち、これまで段階的に関連法が整備されてきました。

具体的には令和2年に「土地基本法」が改正され、それにより令和3年に「土地基本方針」が閣議決定されました。

また市町村長の有する権限を強化するため、土地の適正な利用や管理の確保の観点から土地政策が再構築され、それにより令和3年に「民事基本法制の見直し」が行われました。

これにより所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化、両方の懸案事項を総合的な民事基本法制で実現することが可能になったのです。

これら法改正に関しては以前から不動産会社のミカタコラムでお伝えしてきましたが、今回は施行に伴い国土交通省から公開されたガイドラインを参考に改正ポイントについて解説します。

法改正の概要を理解する

そもそも「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律」とは、どのよう条文で構成されているのでしょうか?

基本的な内容の理解がない状態でガイドラインだけ紹介しても片手落ちになりますので、まず法改正の概要について解説します。

1.所有者不明土地の利用円滑化の促進

所有者不明土地を公益性の高い施設として活用する「地域福利増進事業」の対象事業に、備蓄倉庫等の災害対策に必要な施設や、再生可能エネルギー発電設備の整備が追加されました。

これらを実現するため土地の使用権期間延長のほか手続き方法も見直され、迅速に実行することが可能になりました。

また土地に限らず老朽化した建物(朽廃建築物)の存在する所有者不明土地についても、上記目的(地域福利増進事業等)の特例手続き対象とされることになりました。

2.災害等の発生防止に向けた所有者不明土地の管理の適正化

管理されておらず、今後も管理が見込めない所有者不明土地等については、周辺地域における災害等の発生を防止する観点から、市町村長による代執行等の制度等が創設されました。

3.所有者不明土地対策の推進体制の強化

市町村においては所有者不明土地対策計画の作成や所有者不明土地協議会の設置が可能となりました。これにより市町村長には所有者不明土地等の利活用に取り組む法人を、推進法人として指定し権限を委任できるようになりました。

新規に公表されたガイドライン

前項で解説した内容が主な法の改正点ですが、空家対策に苦慮している市町村が、地域性も含め自ら具体的なルールを定め、空家の増加を防止する対策を講じる他、様々に活用できる権限を与えられたという点において画期的なものだと言えるでしょう。

そのような市町村ごとの対策を住民等に示す上で必要となるのが「所有者不明土地対策計画」ですが、ここでは盛り込まれる内容について解説しておきましょう。

計画を策定する際の指針は「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の第45条第2項で定められており、具体的には以下のような内容を盛り込むこととされています。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

とはいえガイドラインにおいてもまず計画を策定すること、つまりは「市町村は空家対策を真剣に考えている」とPRし、住民等への認知度を高めることが優先であるとしています。

その後に進捗を踏まえながら、必要に応じ計画を見直していくのです。

とくに第3号の確知所有者に対する情報提供又は助言や、第4号の土地所有者の効果的な探索などについては正解となる方法が存在している訳でもなく、計画策定後も試行錯誤しながら変更が加えられることになるでしょう。

具体的な計画としては下記のようなものが盛り込まれることを想定しています。

●所有者不明土地・低未利用土地の利活用に係る相談窓口の整備
●地域福利増進事業を実施しようとする者に対する土地所有者関連情報の提供
●密集市街地区において、地域福利増進事業を活用し防災備蓄倉庫を整備
●空き家・空き地バンクの運営及び周知
●推進法人の募集及び指定

上記計画の中でも空家バンクや推進法人については、私達、不動産業者が関与できる部分となりビジネスチャンスが生まれることが想定されます。

空家バンクについては既に実施している市町村も多いことから、次項で推進法人について解説します。

推進法人に勝機あり?

特別措置法の改正により市町村における権限が増大しました。

今後は本格的に未利用地や空家の活用、また増加を防止するための動きが本格化することになるでしょう。

併せて2024年4月1日から相続登記も義務化されますから、着実に外堀が埋められていくことになります。

私達、不動産業者としては未利用地等の売却相談が増加する可能性を踏まえれば、その前に何らかの手を打っておきたいものです。

そこで注目したいのが推進法人、正確に表現すれば「所有者不明土地利用円滑化等推進法人」です。

推進法人に登録されるには特定非営利法人・一般社団法人・一般財団法人又は「所有者不明土地の利用の円滑化等の推進を図る活動を行うことを目的としている会社」であることが要件とされ、募集方法については市町村が定めることとされています。

募集については期限を定めての公募によるほか、申請があった都度、個別に審査する方法等、自由に定めることが認められています。

同様に審査基準も市町村が自由に決められるとされていますので、一般の不動産会社でも指定を受けられる可能性があるでしょう。

ガイドブックでも下記のような法人が参加することを期待しています。

所有者不明土地利用円滑化等推進法人,ガイドブック

審査基準は各市町村によりますので一概には言えませんが、最低限として以下のような条件を満たすことが求められるでしょう。

●当該市町村で活動をしている法人であること
●推進法人の業務を適正に行える組織体制や人員を確保できていること
●必要な経費を賄うことができる経済的基礎を有していること
●関係行政機関もしくは民間団体等と連携してすでに活動している、もしくは今後行うことが可能であると認められること

所有者不明土地利用円滑化等推進法人として指定されれば、あくまで公益的見地において活動することが求められます。

具体的には所有者不明土地の活用や相談業務に加え、将来的に所有者不明土地になるおそれのある低未利用土地の適正な利用及び管理についての業務などを扱う他、所有者不明土地対策協議会の構成員として参画することになります。

所有者不明土地利用円滑化等推進法人

行政との協議により所有者不明土地対策計画の作成・変更の提案ができるなど、地元密着で活動している不動産業者が指定を受けることによる恩恵も大きいだろうと予測され、地域に貢献しながら適正に不動産事業を行うことができるキッカケとなる可能性が高いといえるでしょう。

よしんば推進法人の指定が受けられなくても、適度な距離感を保ちながら関与していくことにより受けられる恩恵もまた大きいのではないでしょうか。

まとめ

未利用地や空家の増加を防止することは、日本全体において看過することができない喫緊の課題とされています。

解説した法改正もそうですが、相続登記義務化についてもそれらを防止するための措置に過ぎません。

「なぜこんな良い場所が空き地なのだろう?」と考えてしまうような土地や空家が、未利用で長期に放置されているのをよく見かけますが、相続で揉めているなど様々な理由はあるのでしょうが何とも勿体ないことです。

これまでは登記も義務ではなく、また市町村が行政権を行使するにも権限が伴わないことから手を出しづらいといった背景もありました。

既に施行されている「空家特別対策特別措置法」に加え今回、解説した「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」そして2024年からの相続登記義務化が揃えば、いよいよ放置によるメリットなどなくなります。

そのような点を理解して物件所有者と交渉することにより有休不動産を市場に流通させることが可能となり、ひいては私達のビジネスも活性化するのではないでしょうか。

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