【不動産業者なら覚えておきたい】市街化調整区域の既存住宅活用について

市街化調整区域の活用などについて学ぶコラムの第四回目になります。

これまでは市街化調整区域の基本から始まり、開発許可を必要としない建築や開発許可申請の要件など「新しく建築を行い活用する」ことに主眼を置いてきましたが、新築するばかりが市街化調整区域内の活用方法ではありません。

市街化調整区域内の既築住宅を購入し「悠々と田舎ライフを満喫したい」という方もおられるでしょう。

多少の手直し程度で生活に支障がない住宅であれば、当面は再建築のことなど気にせずに日々の暮らしを堪能すれば良いのですから。

これは市街化調整区域では建築をすることについては様々な規制があるのは知っていても、既築住宅の売買についてまで規制されている訳ではないと考える方が多いからでしょう。

ですが実際には、既築住宅であっても売買自体に許可が必要となる場合もあります。

土地の売買や建築行為、既築住宅の売買についてまで様々な許可や法律知識が必要とされること(しかも総じて金額が低く、住宅融資も受けにくい)が、私たち不動産業者の間でも「市街化調整区域の不動産はちょっと……」と言われる原因なのでしょう。

ですが一度、基本から覚えてしまえば、それほど難しいものではありません。

今回は市街化調整区域における既存建物について解説をします。

既存住宅とは

市街化調整区域内においては原則として開発許可を受ける、もしくは開発許可不要である(農業従事者が自己の居住に供するために建てるなど)場合を除き、新たに建築することはできません。

これは市街化調整区域が「市街化を抑制する地域」とされていることからも、乱開発を防止するために必要な措置です。

前回までのコラムでは原則論を基本から学んでいただくために、あえて既存住宅や既存宅地の解説を控えてきました。

開発許可などについて基本を正しく理解してから学ばないと、混乱してしまう恐れがあるからです。

前回までに解説した内容を思い出していただきたいのですが、市街化調整区域は都市計画区域内において市街化を抑制する地域として定められた区域です。

ですが都市計画が定められるまでは、そもそも市街化調整区域や市街化区域などの区分は存在していなかったのです。

都市計画図

でも都市計画法第7条1項で「都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができる」とされたことにより、ある日突然、都市計画が策定され区分(線引)が行われました。

住人からすれば行政の定めによりいきなり「市街化調整区域に線引きされたから、ここでは新たな建築行為が認めません!」となってはあまりにも理不尽です。

そこで区分前(線引き前)に適法に建築された住宅や、すでに開発された宅地などについては例外的に救済する必要がありました。

これが既存住宅であり既存宅地です。

「線引きの日」は市街化調整区域に区分された日のことですが、年度は市区町村によりことなります。

ですがほとんどの市区町村では昭和43~53年頃までに線引きが終了しています。

この線引き前すでに住宅が存在していた場合(既存住宅)については、開発許可を得ず「同規模同用途に限り」建て替え(建築許可は必要)することが認められるのです。

ですから市街化調整区域内の住宅を扱う場合、まず確認したいのが線引き前に建築された住宅であるかどうか(開発許可を受けた団地などについては除く)です。

既存住宅の確認・証明方法

線引き前に建築されていることが証明できれば、既存建築物の建て替えに対して開発許可が不要となり、農業従事者や相続人など開発許可不要などの条件を満たす一般承継人だけではなく、売買により所有した第三者も建築行為(増改築・建て替えなど)を行うことができます。

既存宅地のであることの確認や証明は登記事項証明書や閉鎖登記簿謄本などの公文書で確認します。

その他、撮影記録証明付きの航空写真などによる方法もありますが、それら写真の多くは建築物の用途が不鮮明で用途を断定する資料としては不完全な場合が多いでしょう。

そのため現所有者の住民票や戸籍謄本などを併用し、確認や証明を行います。

その他、基準時(線引の日、または既存宅地制度の廃止日)以前に杭打ち工事や基礎工事に着手していることが確認でき、それを証明できれば既存建築物であるとされます。

既存住宅を建て替えできる範囲

続いて既存住宅の建て替えについて学びましょう。

前項の調査などにより既存住宅であることが確認・証明できれば市街化調整区域内でも開発許可を得ず建て替えや増改築を行うことができます。

ただし制限もなく自由に建築できるわけではなく、基本的に以下の要件(市区町村によって独自の要件を定めている場合があります)を満たしている必要があります。

1. 同一の用途(所有者の変更以外、建築物の変更を伴わない)であること
2. 同一の敷地(敷地の拡大や開発行為を伴わない)であること
3. 同一の規模(既存建物の述床面積に対して1.5倍以内、もしくは280㎡以内であること)

また開発許可は不要ですが、建築許可は必要であることには注意が必要です。

上記1~3の要件について、よくある質問を下記に掲載しておきます。

敷地が拡大されたかについてはどう確認するの?

基本的には既存住宅が建築された際の建築確認申請図面などにより敷地の範囲を確認します。
それにより確認が出来ない場合については土地・建物登記事項などにより敷地の範囲を判断するとされています。

建て替え時の建ぺい率や容積率はどうなるの?

必ず建築計画前に建築地を管轄する市区町村に確認しましょう。
一般的に建て替え後の住宅の規模は、既存住宅の延床面積にたいし1.5倍以内とされています。
また建ぺい率60%・容積率200%をそれぞれ指定建ぺい率としている地域が多いでしょう。

大きさの制限内であれば、平屋を2階建てにしても大丈夫?

建て替え前の規模と大きく変わらないとの定めは全ての市区町村に共通していますが、階数増に関しては前後1階以内(平屋を2階建てに、2階建てを3階建てに)まで可能としている市区町村が多いようです。
階数減(2階建てを平屋にするなど)に関しては特段の定めがされていないようです。

構造が変わらないとはどういうこと?

木造から鉄骨造への相互間、鉄骨造から鉄筋コンクリート造への相互間については大きく構造が変わらないとしている市区町村が多いようです。
木造住宅を鉄筋コンクリート造で建て替えることは認められませんが、躯体を鉄骨にすることは大きな構造変化とされていないようです。

建て替えは新築であると理解して良いの?

便宜的に新築ではありません。

建て替え後の床面積を従前建築物の床面積合計1.5倍以内とし、かつ構造や用途についても従前と同一と定めている理由は、あくまでも「改築」であるとして開発許可を不要としているからです。

ですから実際には完全な新築工事であっても、体裁上はあくまで「改築」となり、これらの手続きは「開発行為等適合証明申請書(不要証明や60条証明とも呼ばれる)」により行われています。

線引き後に建築された住宅は開発許可を得なければ建て替え不可、さらに所有も制限される

線引き後に建築された住宅を建て替える(増改築含む)には、原則として開発許可が必要です。

ですがそれだけではありません。

一般承継人(相続人など)以外の線引き後に建築された住宅を第三者が取得する場合、建替・増改築の予定がなくても、所有することにたいし都市計画法による用途変更の許可が必要なのです。

これが一般に「属人性により建築された住宅(農家住宅など)」の売買です。

属人性とは、都市計画法により開発許可が不要とされている「農業林漁業などの従事者が自ら居住する目的で建築した住宅」のことであり、これはあくまでも個人の資格によって建築が認められた住宅です。

そのような個人の資格要件により線引き後、建築された住宅は、第三者であれば開発許可なしに建築ができない住宅なのですから、売買について制限を受けるのも当然です。

許可なく所有(売買)することは認められていないと覚えておきましょう。

既存宅地について

既存住宅と同様の考え方に既存宅地があります。

既存宅地とは、当該地が市街化調整区域線引き以前に、すでに宅地として利用されていたと法的に確認・証明できる土地のことです。

既存住宅と同じ救済措置です。

但し平成12年に行われた都市計画法の改正により、この既存宅地制度は廃止されてしまいました。

廃止後以降の措置については市区町村により年度の違いはありますが、開発許可制度の運用基準改正により「線引き前宅地」として取り扱われています。

具体的に行政は以下のような点から総合的に確認し、線引き前宅地であるかどうかを判断することとされています。

1. 都市計画法第43条第1項第6号改正前において、既存宅地の確認がされているかどうか
2. 線引き時点において土地登記簿の地目が「宅地」となっていたか(登記日付で判断)
3. 宅地として利用するために線引前、農地転用許可が得られているか
4. 線引き時点の航空写真において、宅地として利用されているかどうか(線引時点の地目が農地以外の場合)
5. 線引き以前に道路の位置指定を受けた区域で、当道路位置指定台帳において建築予定になっているか(線引時点農地以外)
6. その他公的な資料により線引き前に宅地であったことが証明できるもの

私たち不動産業者が調査する場合にも上記の確認事項を参考に調査をすれば良いでしょう。

これらの調査により線引き前宅地(既存宅地)であるとされた場合には、開発許可を得ず建築することができます。

ただしその場合においても、以下のような基準を満たしている必要がありますので併せて覚えておきましょう。

●前面道路が建築基準法第42条第2項道路以上であること
●敷地の最低面積基準が定められている場合には、それ以上の大きさであること(市区町村によって異なる)
●地目が宅地となっていない敷地の場合には、地目変更登記後に建築許可申請を行うこと
●基本的には第二種低層住居専用地域に建築できる用途の建築物(市区町村によって異なる)であること
●高さ制限・建ぺい率・容積率などについては市区町村で定められた範囲内であること

まとめ

今回は既存建築物と線引き前宅地(既存宅地)の判断基準や、建築に関しての制限について解説しました。

記事をお読みいただければお分かりになるとおり、既築住宅や線引き前宅地であるかどうかは査定や販売方法を検討する上で重要なポイントです。

市街化調整区域内の土地などであっても、建築が可能である場合には顧客の所有目的も含め大きく変わるからです。

開発許可を得ることができなければ、資材置き場や駐車場などに利用目的が限定されがちな市街化調整区域の土地ですが、既築住宅や線引き前宅地であればその限りではありません。

市街化調整区域の土地建物に関し「建築できない・調査が面倒・金額が安い・住宅融資が受けられない」などのデメリットばかりに目を向けるのではなく、他社が積極的に扱わないからこそチャンスであると考え、そのために正しい調査方法や知識を学んでいく必要があるでしょう。

【今すぐ視聴可能】実践で役立つノウハウセミナー

不動産会社のミカタでは、他社に負けないためのノウハウを動画形式で公開しています。

Twitterでフォローしよう

売買
賃貸
工務店
集客・マーケ
業界NEWS