【再建築不可の連棟住宅が建て替え可能に?】 連担建築物設計制度を知っていますか?

角地を除いて認定道路ではない私道に面し、そこに3戸一棟の1戸など連棟長屋の方式で建築されている住宅は、全体を建て替えるとして建築確認申請をしなければ再建築をすることはできません。

中には連投長屋として建築確認申請をしていながら、検査後に切り離しをして見た目は一戸建てのようになっている住宅もありますが、これは単に違法なだけであって、当然のごとく1戸としての再建築はできず、改修工事しか行うことはできません。

このような再建築不可の物件は全国規模で考えれば、その実態を正確に把握することが困難なほど件数が存在しています。

レインズで200万円以下などと検索して得られる情報の多くは、筑後30年以上を経過した再建築不可物件であることが多いものです。

経年変化による劣化状況が著しく、単独での再建築も不可、さらに解体して更地にするにも連棟を切り離す必要もあり手間も費用もかかる。

現状のまま住むなどの場合を除き、金額が安い以外には何らメリットが存在しない住宅です。

資産価値も低いことから査定をしても捨て値ともいえる金額で販売するしか無い不動産業者泣かせとも言える物件ですが、建て替えができるとなれば話は変わります。

資産価値も含め、少なくても「倍」以上の金額に跳ね上がるからです。

皆様は「連担建築物設計制度」という言葉をご存じでしょうか?

建築基準法第86条第2項で定められている制度で、一区画内に存在する既存建築物(連棟長屋など)において、各建築物の位置及び構造が安全上、防火上、衛生上支障がないと特定行政庁が認めるものについては、複数建築物が同一敷地内にあるものとみなして建築規制を適用(つまりは建て替えが認められる)制度です。

条件は大変厳しいものですが、再建築不可の物件が建て替えできる可能性があるのです。

このような制度について理解しておくことは無駄にはなりません。

今回は連担建築物設計制度の要件などについて解説します。

再建築の条件

再建築不可となる条件は様々にあり、基本的なところは皆様ご存じかと思いますが端的に表現すれば「現在の建物を解体して更地にしてしまえば、新しく建築をすることができない」土地に存在している既存建物のことです。

代表的なものに既存住宅ではない市街化調整区域の土地がありますが、建築基準法上の幅員4m以上の道路に2m以上接していない、つまり再建築に必要な道路要件を満たしていない連棟長屋もまた再建築不可物件の代表と言えるでしょう。

建築基準法の道路に2m以上接道していない、いわゆる私道の存在は市区町村によってバラツキもありますが、旧市街などが数多く現存する地域はとくに多い傾向が高いと言えます。

3戸1棟の1戸

上記の図は「3戸1棟の1戸」と呼ばれる方式で、連棟長屋のA・B・Cそれぞれが建物の所有権を持つことは可能ですが、再建築するにはA~C全体として申請するか、単独では連棟長屋Aのみが道路要件を満たしていることから再建築が認められることになります。

もっともAが単独で再建築をすればB及びCは全体としての再建築もできなくなるのですから、連棟部分の切り離しなどに応じるはずもなく、実質上再建築は不可ということになります。

連担建築物設計制度とは何か?

前項で紹介した敷地において、全体として再建築する以外、BやCは再建築すら考えることができないと解説しました。

残された手段はリノベーションなどにより現在の住宅を延命させることしかありませんが、ご存じのように再建築不可の物件担保評価は著しく低く(金融機関によって担保対象とされない)リフォームローンなどの利用が制限されることもあります。

さらにどれだけリノベーションを施しても新築年月日は従来のままで、売却金額も安い。

このような現象は全国各地に存在していますがそれを救済する可能性として、連担建築物設計制度が存在しているのです。

各建築物の位置や構造・安全や防災、衛生上で問題がないと特定行政庁から認定を受ける必要はありますが、認定が得られれば3つの建物が一つの宅地内に存在しているとされA・B・Cそれぞれが単独での再建築が可能になるのです。

まさに再建築不可の連棟長屋所有者にとっては救世主とも言える制度なのです。

ですが認定されるためのハードルは低くありません。

まず私道所有者全員の承諾が必要です。

単独で建築申請が可能な連棟長屋Aを除くB及びCは、自ら所有する物件の価値があがるのですから応諾は簡単でしょう。

また相隣関係に問題がなければAも応じるでしょうから、これはそれほど難しい作業ではありません。

次にそれぞれの既存建物が存在する敷地にたいし境界確定が必要になります。

連棟であっても、それぞれの敷地が明確になっていればこの作業は不要ですが、持分割合などで一部を所有している形の場合、それぞれの敷地を区割りしなければなりません。

利害関係が大きく及ぶ部分ですから、この作業には時間が必要となる可能性は高いでしょう。

また安全上の問題をクリアするためには生活用道路(私道)とは別に避難経路を確保する必要があるほか、防災上の問題を解消するため各戸に防災設備を接している他、私道に関しての整備も必要とされます。

そもそも連棟長屋は、形は違いますがマンションと同じような扱いとなりますから、私道の整備などについても特定の個人が労力を負担するのではなく、管理組合を造るなどして、それぞれの所有者が協力してあたる準備が必要でしょう。

連担建築物設計制度の問題点

デメリット

再建築不可の連棟長屋などにおいて救世主ともなる「連担建築物設計制度」ですが、これは1999年5月に施工されていますから目新しいものではありません。

執筆時点で27年(5月で28年)も経過しているのです。

ですが不動産業者でこの制度を理解している方はそれほど多くもなく、建築基準法による定めですから建築士のほうが精通しているでしょう。

不動産業者の認知が低いのは、この制度が開始された当時、運用指針が建設省住宅局から各都道府県知事あてに発せられましたが、その内容は概念的なものであり、その結果として各特定行政庁の認定基準が統一されておらず、およそ使いづらいものとなっていることも原因でしょう。

連担建築物設計制度の適用事例を調べてみると隣地斜線緩和や容積率移転など、再建築の要件を満たすため一つの敷地内に存在する各建築物をより生かすため様々な申請が行われていますが、それにたいして各特定行政庁は独自の判断基準で比較的柔軟に対応している実例が見受けられる反面、個人として申請するには手間が多いことから3戸一棟の1戸など、所有者が少ない人数の場合に「誰が率先して動くか」といった問題が生じます。

連担建築物設計制度が適用された有名な事例に、2002年と2003年に連続して発生した火災による大阪市中央区の「法善寺横丁」への適用があり、連なる飲食店の接する道路幅員が2.7mしかないのに、既存のまま再建築を認めました。

もっともこの際には、安全確保のため再建築物件は耐火構造を条件とし、さらに非難バルコニーの設置が義務付けられました。

また古都京都においては歴史上、連棟建築物が多く、また道路要件を満たしていない既存建築物の割合が多いことから、連担建築物設計制度を「袋路再生」と呼び替え柔軟に対応している事例が多く存在していますので、それらの事例を調べてみるのも面白いでしょう。

もっとも特定行政庁ごと認定基準もことなりますから、実際の申請を検討する場合には各担当窓口に確認が必要です。

まとめ

再建築が可能になれば、不動産の売却価格は軽く2倍以上になるでしょう。

ですが再建築不可の連棟長屋で、かつ築年数が相応であればそもそもの金額は低いことから、販売価格を引き上げるために連担建築物設計制度の利用を検討することはあまり現実的とはいえません。

敷地内既存建築物媒介を丸ごと受任するなどの例外を除けば、そのうちの1戸による媒介報酬で関わる業務としては割に合わないからです。

ですから制度自体は知っていても、手掛けたことはない方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

もっとも主要エリア内の特定行政庁における連担建築物設計制度の認可条件などを理解しておけば、タイミングにより大きなビジネスチャンスをつかめるキッカケになることもあるでしょう。

知識として深く学んでおいても「損」はありません。

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