【利用者の7割以上が後悔しているサブリース契約】その問題の根底を考える

これを読まれている方の大半が不動産業者である「不動産会社のミカタ」コラムでサブリース契約についての解説は不要でしょう。

ご存じのように、サブリース会社が賃貸オーナー所有の賃貸マンションなどを一棟丸ごと借り上げ、第三者に入居を斡旋するもしくは丸ごと転貸することによりサブリース会社が賃貸経営をオーナーに代わって運営する方法です。

賃貸オーナーからすれば入居者からのクレームや建物の維持管理・家賃徴収などの手間をかけず、また空家リスクなども回避することができあらかじめ定められた固定収入が得られるのですから健全経営としての管理形態の一つとして普及しています。

わずらわしさから開放され利益を得たい賃貸オーナーには喜ばれるサブリースですが、不動産業者の皆様であればそこに潜む危険性については充分に理解されていることでしょう。

国土交通省においても投資提案を中心としたサブリース契約に関してのトラブルが、年々増加していることから注意喚起を促しています。

サブリース,締結前,注意

ご存じのようにサブリース源契約の締結時には不確実な事項に係る断定的な判断の提供や、重要事項である賃貸人にたいする不告知などの一定行為が禁止され、それらに関しての説明及び書面交付が求められますが、それ以前にサブリース会社が借り上げた賃貸マンションなどの管理事務を行う場合には「賃貸住宅管理業」に該当し、本来であれば「賃貸住宅管理業者登録規定」に基づく登録が求められます。

登録した業者には「賃貸住宅管理業務処理準則」の遵守が求められ、それに違反した場合、法第2章の賃貸管理業に関する規制対象とされ監督処分や罰則の対象とされます。

ですが登録が義務とされるのは管理戸数が200戸以上(200戸未満は任意登録)ですから、必ずしも登録が義務とされているわけではありません。

そこで小規模であることを理由として賃貸住宅管理業の登録をせず、当事者に不利益な内容でサブリース契約を行う業者が暗躍するのですが、そもそも2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立し「賃貸住宅管理業を営む者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない」とされるまでは、国土交通省の調査において3万2400社とされた管理業者のうち登録をしていたのはわずか15%(4800社)だったとされていました。

そこで小規模であることを理由として賃貸住宅管理業の登録をせず、当事者に不利益な内容でサブリース契約を行う業者が暗躍するのですが、2023年2月13日に大阪エリアを中心として賃貸管理業をおこなっているアセットテクノロジーが、投資用不動産でサブリース契約した経験がある110名にたいし「サブリース契約の絶望調査」をおこなったところ、回答者の約7割以上が契約を後悔しているという調査結果を公表していました。

サブリース契約,アンケート
【サブリース契約での絶望、経験者に調査】74.6%がサブリース契約に関して「後悔」経験あり 「収益が低い」や「想定以上の免責期間」などが原因に

正しく活用されれば当事者にとっても運営会社にとっても素晴らしはずのサブリース契約が、なぜこのようなトラブルを誘発し問題視されるのでしょうか?

今回はサブリース契約に関しての基本的な考え方や、アンケート結果から見える問題点などを取り上げながら「サブリース契約に潜む闇」について解説します。

サブリース会社は日本に何社あるの?

一般的にサブリース会社と呼ばれてはいますが「特定転貸事業者」と呼ぶのが正式です。

ですからサブリース会社が行っている契約も、サブリース契約ではなく「特定賃貸契約」と呼ぶのが正しいのです。

特定賃貸契約の目的は、契約に基づき賃貸した住宅などを第三者に転貸することですが、そこの営利の意思をもって反復継続して賃貸を行っているには、事業規模によらす「特定転貸業者」であるとされます。

この場合「営利の意思をもって反復継続的に賃貸しているもの」は客観的に判断されます。

サブリース会社の多くは賃貸管理を兼業としている場合も多く、登録義務は200戸以上の管理戸数を持つ管理会社とされていることから賃貸管理業としての登録は免れたとしても特定転貸事業者(サブリース会社)であることから逃げることはできません。

それでは日本全国にサブリースを手掛けている会社はどのくらいあるのでしょうか?

一説では2023年現在でサブリースを主業として活動している会社は240社前後と言われているようですが、実態はそんなものではありません。

平成30年時点として国土交通省庁が公開した資料によれば、登録されている賃貸管理業者のうち小規模ではあってもサブリースを実施している会社は全体の4分の1を超えているとされており、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行された以降、宅地建物取引業者に限らず建設会社や管理会社などが一気に登録を行ったこともあり登録業者数は飛躍的に増加し、そのうちの何社がサブリースを手掛けているのかについてまでは行政も把握しきれてはいないのでしょう。

サブリースの実施割合,国土交通省

サブリース会社を取り締まる法律は?

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が2021年6月に施行されたことについては前述しましたが、そのうちサブリースに関する部分について2020年12月15日から施行済みとなっています。

サブリース方式,図解

この法律の対象は賃貸管理業であるか否かのほかその規模を問わず、客観的にみてサブリース業者(特定転貸事業者)であるとされるもの及びサブリース契約を勧誘するものが対象とされています。また勧誘者についてはサブリース会社の社員などに限らずその委託を受けて勧誘するものや、その勧誘者から再委託を受けたものも含まれるとされています。

つまり契約に関与した者すべてが対象とされるのです。

ですがあくまでもサブリースに関し単体で成立しているものではなく「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」に包括される形で施行されていますので、賃貸住宅維持保全業務及びこれと併せて行われる金銭管理業務を「賃貸管理業」と定義しなおしたところで、200戸以上を扱う業者の登録だけが義務とされていることには変わりありません。

そのような問題点については後述しますが、具体的には以下のような点が強化されました。

●重要事項説明を義務とし、書面には賃貸経営不動産管理士の署名・捺印をした書面を交付する。
●誇大広告や不当勧誘の禁止
●賃貸住宅管理業の登録を義務付ける
●罰則の強化

これらの法律が遵守され正しくサブリース契約が行われていれば良いのですが、実態はそうでもないようです。

賃貸住宅における管理会社等を巡る相談件数の推移

消費者庁などは継続してサブリース契約に関する注意喚起を促していますし、国民生活センターに寄せられる相談も増加を続けています。

サブリース契約の問題点は

実際に不動産コンサルを業としている筆者のもとにはサブリースにより損害を受けた方からの相談が寄せられてきます。

法改正後は、逆に相談件数が増加しているのですから不思議です。

冒頭でアセットテクノロジーのアンケート結果として「回答者の約7割以上が契約を後悔している」と紹介しましたが、これは法律が改正される前にサブリース契約を締結したばかりではなく、法改正後に契約を行った方も多分に含まれているのでしょう。

確かに改正法により義務登録が採用され、勧誘者にたいする行為が規制されたことは大きな前進であると思いますが、サブリース業者による重要事項説明書の交付などはあくまでもマスターリース契約の時点です。

「サブリースにより収入は確保されますから、実質的な負担を心配する必要などありません」と、入居状況によらず収入が確保されると誤認させ請負契約を迫る業者を抑制することはできません。

請負契約時には重要事項説明などの義務はないからです。
筆者のもとにも請負契約後に不安になり相談に訪れるかたがいるのですが、残念ながらその時点では「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の罰則規定の対象とはならず、せめてもの反抗として、そのような建築会社とはマスター契約を結ばないのが関の山でしょう。

ですが意図的にそのような手法により請負契約を締結した建築業者の建物は、請負金額にたいし見合ったものではない場合がほとんどです。

建築工事を差止めるにも出来高までの支払いは必要ですし、違約の問題もありますから建築途中で放置する訳にもいきません。ですがそのような状態であれば竣工してからの悩みもつきないでしょう。

また改正法においても行為規則違反によって締結された契約の取り消し権や、解除・無効に関しての規定は存在しておらず、また勧誘者から再委託を受けたものも含まれるとされてはいるものの連帯責任を追わせるための根拠も規定されていません。

間違いなく評価されるべき法律ではありますがサブリース契約に関してのトラブルを完全に抑制できるとまでは言えない内容になっています。

サブリース契約によるトラブル相談の内容は?

国土交通省が令和元年7月に賃貸住宅管理業者11,538社(うち7,109社は未登録業者)と家主や入居者を対象として実施されたアンケート調査の結果によれば、その時点で契約締結時において将来の家賃変動や賃料減額のリスクについて説明を行っていると回答した業者は6割程度であるとされていました。

サブリース業者による契約締結時の家主への説明状況

同じアンケートによる家主からの回答においても「賃料や資金などの入金問題」や「管理業務の内容についての見解の相違」のほか、マスターリース契約であるという特殊性によるものでしょうか、管理業務に関する報告が行われず実態の把握ができないなどのトラブルが報告されています。

家主が受託管理業社との間で経験したトラブルの状況

またそれ以外でも建築業者や不動産会社が介在し十分に資産を有しない相手に高額な融資を斡旋するほか、住宅金融支援機構への不正融資を申し込むなど融資に関してのトラブルの根底にもサブリース契約があることも覚えておく必要があるでしょう。

まとめ

サブリース契約と同様に問題市視されている契約方式としてリースバックが取り上げられることも多いのですが、そのどちらも正しく運用されている限り消費者のリスクを回避しつつ依頼者の安心を得ることができる素晴らしい契約方式です。

ですが実際には利益優先指向のごく一部の業者が、必要なリスク説明を行わず強引ともいえる契約を締結させ問題を発生させることにより、法律を遵守し誠実に業務を行っている業者も含め悪い印象を持たれているのです。

アンケート結果だけを鵜呑みにしてサブリース契約を締結した方々の7割以上が不満を抱えているとまでは思いませんが、そのような意識を持たれている方が多いという点を念頭に置き、マスターリース契約時には十分な説明を行ったうえで理解度を確認し、トラブルなどに発展することがないように注意する必要があると言えるでしょう。

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