【普及の陰で囁かれる太陽光パネルの大量廃棄問題】買取期間終了後の備えや撤去費用についてご存じですか?

高騰する電気代により、これまで以上に注目が集まる太陽光発電システム。

その搭載率については、2022年3月に環境省が公開した最新情報として「令和3年家庭部門のCo2排出実施統計調査」により、戸建住宅11.6%・集合住宅0.2%とされています。

令和3年家庭部門のCo2排出実施統計調査

地域により電力消費量はことなり暖房のため灯油やLPガスを使用している世帯の多い北海道などの寒冷地では比率もことなりますが、それ以外の地域では約50%前後、家庭で利用しているエネルギーは電気です。

ですから電気料金の値上げはストレートに家計に響くことになります。

地方別世帯当たり年間エネルギー種別消費構成比

支払っている電気料金は、全国平均で11万円/年にもなっています。

原発再稼働の是非は別として火力発電に依存している現状においては、年間支払額はさらに上昇していくでしょう。

地方別世帯当たり年間エネルギー種別支払金額

そのような背景を受け、発電した再生可能エネルギーを自己消費に利用しようという「非FIT太陽光発電」のニーズが高まりを見せています。

かって一般家庭が太陽光発電を設置する目的は「売電」でした。FITが日本に導入された当初の平成24(2012)年は42円/kw(10kw以上40円+税/kw)もの高値で売電できましたから、短期間で設置費用を回収し、それ以降は利益とすることができました。

つまり相応の「儲け」が得られたのです。

ですが、年々買取金額は下がり続け、2022年には10kwの家庭用で17円/kwにまで下がりました。

買取金額,太陽光発電

モトを取ることはできない買取金額ですから、新築だけではなく既築住宅においても電気代高騰に備えるため検討している方が増加しているのです。

その背景には、システムの普及により搭載金額も安くなったこともあるのでしょう。

住宅用太陽光発電のシステム費用の推移とその内訳

電気代高騰により注目を浴びる太陽光発電ですが、新たに搭載を検討する場合はもちろん、太陽光発電が搭載されている既地住宅を取引する場合にも注意しておかなければならないポイントがいくつかあります。

今回はそのようなポイントについて解説します。

現在は「売電」より自己消費の方がお得だが……

太陽光パネルの寿命は長く概ね20~30年と言われています。

太陽光発電システムは、太陽光パネルと接族箱、パワーコンディショナー・分電盤を基本として構成されていますが、太陽光に変化により影響を受ける発電量を制御するためのパワーコンディショナーは、寿命が10~15年程度とされています。

つまり、太陽光パネルよりもはるかに短い。

パワコンがなければ発電できませんから、寿命がきた機器は約20万円前後の費用を投じて交換しなければなりません。

FIT制度が開始されたのは2012年のことです。買取金額が高額なこともありメリットも多く、とくに新築戸建において太陽光発電の搭載が提案され採用されました。

それから10年超、太陽光発電搭載住宅の「売り物件」をレインズで見かけることも多くなりました。

そのような住宅はすでに固定買取期間が終了していますから「売電」は行われていません。

新電力などに「安価」で売電している住宅もあるでしょうが、せいぜい8~11円/kw(税込)程度ですから、自己消費したほうがはるかにメリットがあります。

当然の話しですが太陽光発電システムが発電するのは日中のみです。

昼間に電気を使い倒すなら話は別ですが、通常は家電製品の利用がせいぜいでしょうから4~9kw/hのシステムで発電した電力をすべて消費できる訳ではありません。

売電されず消費もされない余剰電力は捨てられます。

この「捨てられる」については少々、説明が必要なのですが、電気には「電圧が高いところから低いところへ流れる」という原則があります。

システムにより発電された電力は101±6V、電圧になおせば最大107Vで買電している電力100Vよりも電圧が高い。

発電された電力は直流ですからパワーコンデショナーにより交流に返還され分電盤に送られます。

そこで家電製品などを使用すると、電圧の高い方、つまり太陽光で発電した電力から優先的に使用される訳です。

そこで使いきれなかった電気は太陽光発電の電力よりも低い電圧で流れている電線へ逆流します。

これが余剰電力で、電力会社が購入する電力になります。

ところが売電していない場合には、パワーコンディショナーがピークカット(過積載によりパワコンで処理できる容量を超えた発電が行われた場合に電力を捨てること)します。

勿体ないので自己消費したい場合には蓄電池を導入するしかないのですが、家庭用として不満なく利用できる程度の容量を新たに導入する場合、80~200万円程度の出費を覚悟しなければなりません。

ちなみに蓄電池の寿命は10~20年が目安です。

電気料金を月額1万円以上支払っている家庭であれば、家庭用として使いでのある10kw前後の蓄電池を200万円ほどかけて導入すればギリギリですがメリットも生まれます。

ですが機械には当たり外れがあります。

10年少々で寿命を迎えれば「損」をすることになりますので、賭けのような側面もあるでしょう。

もっともその前にパワーコンディショナーが寿命を迎えますから、20万円程度かけて交換しなければなりません。

既築住宅で新たに蓄電池の設置を検討する場合には、現在設置している発電システムがあとどのくらい持つのかを考えてからにする必要があるでしょう。

売電できず蓄電池も導入していない場合には余剰電力は「捨てる」しかありません。

ですが電力会社によっては余剰電力の預かりサービス(東京電力の「再エネおあずかりプラン」など)を実施し、一定の月額料金を負担することにより上限電力量まで預かってくれるところもあります。

東京電力,再エネおあずかりプラン

蓄電池の導入を検討した場合、併せて考えてみる必要があるでしょう。

太陽光発電が搭載されている既築住宅を購入する場合、「太陽光発電が搭載されているから電気代がお得になるね」とするのは素人考え。

私たち不動産業者は、買取が終了している太陽光発電搭載住宅を斡旋する場合、これらのポイントを理解して注意を促す必要があるでしょう。

じきに訪れる太陽光発電大量廃棄

FIT法の施工により一気に増加した太陽光発電システムですが、これから10年以内には初期にシステムを導入した世帯に搭載された太陽光パネルが順次寿命を迎えることになります。

新電力への余剰買取金額が安くても、自己消費まで含めれば得であると考え太陽光パネルを交換するか、それとも撤去して廃棄してしまうかの選択を迫られる方が増加していきます。

そこで太陽光発電の撤去費用について解説しておきます。

解体費用の内訳は大きく撤去費・補修費・運搬費・処分費に分けられます。

撤去費の内訳は足場代・架台をバラす作業などに必要な人工代です。

また屋根にビス止めして架台を設置している場合には、撤去後のビス穴を埋めるなどの補修費も必要です。

解体業者もコーキングなどでビス穴を埋めてくれるでしょうが、処理がマズければ雨漏りなどの原因になりかねませんので、実績のある業者に依頼するのが良いでしょう。

またパワコンを同時に撤去する場合には、それらの費用や手直し費用も加算され、撤去した廃材を処分場まで運ぶ運賃も必要です。

太陽光パネルは産業廃棄物ですから、中間業者によって処理されます。

ガラスなどをリサイクルに回すための処理ですが、この方法については環境省が太陽光発電大量廃棄時代に備える形で「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を策定していますので、それに則った形で処理されます。

現在の相場では、2,500~3,000円/枚といったところでしょうか。

搭載した発電量によってことなりますが、一般家庭の場合は20~40枚程度のパネルが搭載されています。

処分費だけの目安としては50,000~120,000円が相場でしょう。

これら費用の総額は建物形状や階数・システムなどにより金額は変動しますが、おおよそ15~30万円が目安になるでしょう。

まとめ

太陽光発電が搭載されている既築住宅を扱う場合、内覧者と一緒になって「太陽光発電が搭載されているから、電気が使い放題だ」などと軽はずみに喜んではなりません。

買取が継続している場合には名義変更のため変更認定申請・変更届が必要となりますので、その手伝いも必要になるでしょう。

また固定買取期間が終了し自己消費している場合でも、捨てられている電気をそのままにするのか、それとも蓄電池の導入を検討するのかなどの相談にも応じる必要があるでしょう。

また将来的な撤去費用などについて質問される可能性がありますから、それなりの知見を有していなければなりません。

電気代の値上がりにより既築住宅でも搭載を検討する方が増加していますし、東京都では一定条件に該当する新築住宅には太陽光発電の搭載が義務化されます。

太陽光発電に関しての全般的な知識を学ぶのは勿論ですが、近い将来訪れる太陽光発電システム大量廃棄時代に備え、広く学んでおくよう心がけたいものです。

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