【省エネ基準適合義務まであと1年】いまさら聞けないそれ以外の改正ポイント

住宅の省エネ対策を推し進めるために改正された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されたのは令和4年6月17日のことです。

脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律,施行時期

最終的な施行となる新築住宅・非住宅への省エネ基準義務付けは公布日から3年以内とされていましたが、国土交通省によれば2025(令和7)年4月1日から施行するとされています。

省エネ義務化については、これまで「不動産会社のミカタ」コラムで何度かとりあげてきました。

ですが注目度の高い「省エネ義務化」をテーマとして記事を構成してきましたので、それ以外の改正ポイントについて深くは解説してきませんでした。

そこで今回は一連の改正ポイントのうち、省エネ義務化以外の改正点について解説したいと思います。

住宅金融支援機構の低利融資制度

住宅金融支援機構では、代名詞である「フラット35」は当然としてグリーンリフォームなどの直接融資についても令和4年4月から段階的に制度改正が行われてきました。

フラット35,直接融資,制度改正

令和4年10月以降の設計検査申請分については「【フラット35】S(ZEH)」が適用され、ZEHに限り金利が優遇されています。

【フラット35】S(ZEH)

リノベ融資についても、省エネルギー性の基準が強化されているのは見逃せないポイントです。

リノベ融資,省エネルギー性,基準

また本年(令和5年)4月以降の設計検査申請分からは省エネ技術基準が見直され、従来であれば断熱性能等級2相当以上で利用できたものが、「断熱性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上」に引き上げられています。

省エネルギー性,基準

強化された基準は省エネ基準義務化、つまり令和7年度に施工される基準と同じものですが、フラット35を利用するためには先行してこの基準をクリアしていなければならないことについては覚えておく必要があるでしょう。

興味深い点として地域連携型子育て支援による0.25%の金利引き下げ期間が5年から10年に延長(令和4年4月融資実行分より)されていることでしょう。

地域連携型子育て支援,フラット35

それ以外にも省エネリフォーム工事に利用できる「グリーンリフォームローン」は、融資限度額が最大500万円までという縛りはありますが、「融資手数料無料・無担保・無保証」かつ金利1.56%(令和5年4月30日までの適用金利)という低利で利用することができますから、既築住宅の購入後にリフォームを検討している方には嬉しい融資でしょう。

ただし太陽光発電設備の搭載や断熱改修工事、高効率給湯器への交換など用途制限はありますが覚えておく必要があるといえるでしょう。

省エネリフォーム時における高さ制限などの緩和

新築・既築を問わず太陽光発電の搭載を検討した場合に弊害となるのが「高さ」などの各種用途制限です。

とくに第1種・2種の低層住居専用地域においては原則として10または12mの高さを超えることができませんから、泣くなく搭載を諦めた方もおられるでしょう。

改正法により、市区町村が定める再エネ利用設備の設置に関する促進計画に適合する建築物にたいしては、高さ制限・容積率制限・建蔽率制限にたいしての特例許可制度が設けられました。

建築基準法,建築物省エネ法

「市街地環境を害さない」かつ「構造上やむを得ない場合」という前提のもと個別審査されますので、必ず認められるという訳ではありません。

ですが既存もしくは計画建築物の高さが制限ギリギリであり、太陽光パネルの設置により制限を超えてしまうことから搭載を検討することができなかった住宅においても、設置ができる可能性が生まれたことについては覚えておく必要があるでしょう。

それ以外にも採光に必要な開口面積について、床面において50Lx(ルクス)以上の照度を確保すれば開口部面積で建築基準をクリアできるように改正されました。

省エネ,開口部面積,建築基準

また外壁の断熱改修工事や日射遮蔽のために必要な「庇」などの設置を検討する際にも、高さ制限の緩和と同様に個別判断され、建ぺい率を超えて計画できる可能性がでてきました。

省エネ,建築,工事

もっとも、これら緩和措置はあくまで必要な範囲における最小限の工事とされており、さらに建築審査会の同意が必要とされていますから必ず認められるという訳でもありません。ですが顧客からの様々な相談に応じる不動産業者としては覚えておきたい改正ポイントです。

表示制度も刷新された

性能に関する表示について、販売・賃貸などの物件種別によらず「全ての建物物」を対象として「建築物省エネ法第33条の2,第33条の3」に基づく表示が義務付けられました。

国土交通大臣の責務として下記「改正概要」に基づく措置が講じられます。

建築物省エネ法,改正

あくまで新たに建築される物件が対象ですが、「建物性能が暖房光熱費に大きく作用する」という認識は一般の方にも広がっています。

住宅に関するアンケートなどにおいても住宅を選ぶ基準は「性能」と解答する方も増加していますから、既築住宅を販売する場合や性能表示をアイキャッチとして入居者募集をしたいと考える場合には、「既存住宅の住宅性能表示制度」を扱う検査機関に依頼して性能評価を受けるのも1つの方法でしょう。

BELS,建築物省エネルギー性能表示制度

性能表示方法としては上記〈参考〉にあるようにBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)に準じ、国土交通大臣が表示事項・表示方法などについて告示で定めるとされています。

BELS認証は新築・既存を問わず評価・表示を行うことが可能です。

申請から評価証明書の交付までの基本的な流れは下記のとおりですが、費用は数万円程度です。

BELS申請,評価書等交付

判定は「一次エネルギー消費量基準」と「外皮性能基準」および「ZEB/ZEHの取得有無」によって判定され、数値が小さくなるほど性能が高い建築物となりそれに応じ星の数が増えていきます。

BELS,評価書

判定結果が一つ星だと好意的に受け止められるか微妙なところではありますが、性能に自信がある住宅については必要に応じ提案してみると良いでしょう。

二級建築士の独占業務範囲も見直された

不動産業者には直接関係のない話ではありますが、二級建築士の独占業務範囲も改正されました。

従来は「高さ13mまたは軒高9m」を超える場合には構造計算が必要とされるため、新築・増改築の設計・工事管理業務は一級建築士でなければ行えませんでした。

改正により3階建て木造建築物のうち、簡易な構造計算によって構造安全性を確かめることが可能な範囲であるとして「高さ16m以下」の建築物の設計・工事管理業務については二級建築士でも行えるようになりました。

二級建築士,独占業務範囲,改正

これによりリフォームなどの増改築で階層を建てましする場合、構造が「木造」であるという前提はありますが、二級建築士にも依頼できるようになりました。

まとめ

新築住宅にたいする省エネ義務化ばかりが注目される「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」ですが、今回解説したようにそれ以外にも様々な関連分野において改正されています。

顧客の様々な相談に応じる必要性のある不動産業者であれば、「直接は関係しないからいいや」という発想ではなく、広く改正内容を理解して有益な提案ができるよう備えておく必要があると言えるでしょう。

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