【防災意識が高まる昨今】営業マンなら活用したい地殻変動や地盤情報の利用について

最近、住宅を選ぶ際のポイントが変化しています。

立地や価格は不変ではありますが、原油高による電気代高騰に備えるための断熱性能のほか、頻発する自然災害に備える防災意識の高まりです。

とくに2011年の東日本大震災により日本人全体の防災意識は大きく変化しました。

「自分の住まいが(もしくは購入物件)が、災害に強いのかどうか」について真剣に考えるようになったのです。

そのような意識変化に対応するため住宅メーカーなどは耐震性や防災性の高い住宅開発に取り組み、それらを備えた住宅は人気を博しています。

不動産売買においてハザードマップを利用しての説明責任が公布されたのはさきの震災より1年早い2020年7月17日(施行は同年8月28日)からですが、説明が求められているのはあくまでも「水害」だけです。

地盤や地耐力にたいしての説明は義務付けられていません。

慣例として「現状有姿」が原則とされていますから、地盤情報の説明や提供は義務とされていないのですが、よくよく考えてみればユーザーの防災意識の高まりには応えられていない気がします。

義務ではないが意識は高まっている。

このことから考えれば、義務ではなくてもある程度の情報を提供することにより他社との差別化を図れるでしょう。

今回はそのような理由から、国土地理院地図に本年度から連動を開始した「地殻変動情報」の解説のほか無料で近隣の地盤データを確認する方法について解説いたします。

国土地理院地図の地殻変動情報とは

不動産業者である皆様に国土地理院地図についての解説は不要でしょう。

国土地理院は国土交通省設置法に基づき測量行政を司る国土交通省の特別機関ですが、測量成果や情報収取により得られた様々な成果について情報が提供されています。

国土地理院地図はその代表とも言えるでしょう。

これまでも地殻情報については国土地理院で収集されサイト内でも公開されてきましたが、2023年3月28日からはJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の運用する陸域観測技術衛星2号(だいち2号)の観測データを用いて作成された、日本初の「地殻変動地図」が公開されています。

地図は下記URLから確認できます。

https://mekira.gsi.go.jp/index.html

地殻変動情報表示サイト

サイトにアクセスして開かれた地図を拡大していけば調査地点最寄りの地殻変動情況が確認できます。

地殻の変動情報は「赤い矢印」として表示される変動ベクトル図のほか、基線変化グラフ・座標変化グラフとして表示することができます。

このうちもっとも利用頻度が高いのは変動ベクトル図ですが、期間は1ヶ月・1年・5年・10年を設定し、現在の電子基準点との差異について変動情況を確認できます。

表示されるのは水平変動ですが、上記の全体地図をみても本州が東西に圧縮されている様子や、東北から四国にかけて太平洋沿岸側が西方向に変動している様子が見て取れます。

このような変動率を確認することにより、プレートの相対運動情況やその影響による地殻変動が確認できます。

結局のところ、これで何が分かるのか?

端的に言えば地震が発生する危険度です。

そもそも、地殻変動は地震の発生や地震活動に関連します。

変動ベクトル図や変動率を分析することにより地震の震源域やプレート境界の動きを推測するため必要とされるデータです。

もっとも、そのような解析は不動産業者では荷が重い。

ですから地図を拡大し、10年間などの指定した期間でどのような動きがあったかを確認するだけにとどめます。

地震,地図,データ

地殻変動が大きくなると地盤沈下や隆起・地表面の変動などが観測されるようになります。

地盤の安定性や地震などの災害リスクが高いと評価されるようになるのです。

地震,地図,データ

詳細な分析まではできなくても、防災について説明するために必要な参考資料として活用できるでしょう。

地盤データの活用

前項で紹介した「地殻変動地図」と併せて利用したいのが「地盤データ」です。

地盤データは土地の地層や地質的な特性のほか、地下水の状態などを知ることにより地盤の安定性を確認することを目的としており、新築時おいて地震の影響による不同沈下などを防止するための地盤改良工事や支持杭などの措置を行うための判断基準として利用されます。

もっとも新築だけではありません。

必要な措置を高じていない築古の既築住宅などにおいても、顧客の要望に基づき薬剤注入工法などの地盤補強工事は可能ですし、実際に不動沈下が確認される場合には住宅自体をジャッキアップして地盤補強を行う方法もあります。

地盤調査が義務付けられたのは2000年ですから、それ以降に建築された住宅であれば地盤データもあるでしょうし第三者の地盤補償保険にも加入しているでしょうから万が一の場合でもそれほど心配はないのでしょうが、問題はそれ以前に建築された住宅でかつ地盤調査を行っていない住宅です。

そのような住宅を内見し顧客から「この住宅、地盤は大丈夫なんですよね?」と聞かれても、地盤調査を実施していない住宅であれば迂闊に「大丈夫です」とは言えません。

地盤調査は既築住宅であっても行えますが、いかんせんスウェーデ式サイディング試験で5万円程度の費用が必要です。

地盤調査を行い、その結果に基づいて必要な措置を講じるのが一番間違いもないのですが、契約前、しかも地盤が良いのか悪いのかも分からない状態でその調査費用を誰が負担するのかで悩んでしまいます。

そのような時におすすめしたいのは地盤補償会社が無料で提供している地番データです。

地盤保証会社が日本に何社あるかまでは筆者も正確に把握していないのですが、全国的に名を知られすぐに思い浮かぶのは一般社団法人ハウスワランティや一般社団法人住宅技術協議会などを含めた8社ぐらいでしょうか。

それぞれ保証期間や保証内容・費用に違いがあるのですが、単純に近隣地盤データを参照したいという目的であればジャパンホームシールド(JHS)から提供されている「地盤サポートマップ」がもっとも使い勝手がも良くオススメです。

ジャパンホームシールドは地盤調査・解析実績が150万以上あるとされており、過去に行った調査物件の地盤データを地図上に落とし込み「無料」で提供してくれています。

公開されているデータはあくまでも過去に行われた地盤データであり、当該地の地盤についての情報を提供しているわけではありません。

それに測量方法や地盤の特性などにより変化するという点には注意が必要ではあるのの、測量地点から半径数十~数百メートルの範囲に及ぶこともあります。

一概にはいえませんが「この住宅、地盤は大丈夫なんですよね?」という質問にたいし、当該地に近接した地盤データなどを提示して「あくまでも近隣地盤の過去データですが、当該地周辺は軟弱地盤で形成されており地震の発生確率は高いとされているようです。さらに……」と、具体的な説明ができるようになります。

もっとも、地盤に問題があると思われる地域においては有償で地盤調査を実施し、必要に応じ適切な対策を講じる必要性があります。

ですがその前段の説明として「地盤については私たちに説明責任はありませんので……」と話すよりも信頼が得られることでしょう。

「地盤サポートマップ」の利用方法とデータの読み方

「地盤サポートマップ」へは下記URLにアクセスすることで利用できます。

https://supportmap.j-shield.co.jp/#14,35.6939,139.7918

地盤サポートマップ

調査したい所在地の住所を入力すればカラフルな丸印のついた地図が表示されます。

任意に地図を指定すると「災害リスクをまとめたレポートをみる」が開きますので、それをクリックします。

地盤サポートマップ,災害リスクをまとめたレポートをみる

すると指定した地点の「地震時の揺れやすさ」、「液状化の可能性」、「土砂災害の可能性」、「浸水の可能性」などを示したレポートが表示されます。

地盤サポートマップ,災害リスクをまとめたレポートをみる,レポート

地震時で揺れやすく液状化の可能性が高い場合には、解説するまでもなく地盤が弱いということです。

さらにページの左側の矢印をクリックして開かれる地盤情報・地質などの条件を指定すれば、それに関連した情報が提供されます。

地盤サポートマップ,防災情報

条件を指定すればそれに連動して地図の地耐力・地震時の揺れやすさなどに関するポップアップウィンドウが表示されます。

地盤サポートマップ,地耐力

ポップアップウィンドウを利用すれば地図上で表示されている色の区分などについての説明を確認できます。

地盤サポートマップ,ポップアップウィンドウ

「地盤サポートマップ」ではこれ以外にも明治時代から平成までの間に刊行された地図の表示や、液状化の可能性・水害の防災情報などのほか、地震や洪水・津波発生時の避難場所なども表示できますので、使いこなせばかなりの情報を顧客に提示できるようになるでしょう。

具体的な対策を行う前には当該地において地盤調査を行う必要はありますが、必要度合いを検討するための資料として活用したいものです。

まとめ

コラム冒頭で解説したように、ハザードマップを用いていの水害情報以外は説明責任が義務とされている訳ではありません。

とくに心配していない方にたいし、検討物件の周辺が軟弱地盤で液状化の危険性が高いなどと指摘すれば、不安をあおり契約の機会を逸してしまう可能性もあります。

説明責任がない以上、聞かれてもいない情報を開示する必要まではありませんが、顧客の防災意識が高まっているのは前述したとおりです。

質問されても説明責任を理由に回答をはぐらかすよりは「あくまでも近隣データに過ぎませんが」と前置きし、具体的な情報を開示するほうが顧客からの信頼を得られるようになるでしょう。

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本マニュアルにおいては、調査項目を8つに分類して解説していきます。また、入門編では各項目の大まかな考え方、概要のみを解説します。それぞれの詳細や具体的な調査方法については、実践編で解説をしますので、まずは全体像を何となく掴んで頂ければと思います。

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