【全国平均は2年連続で上昇】国税庁が発表した令和5年度の路線価傾向について

7月3日、相続税・贈与税の算定基準となる2023年度の土地路線価が発表されました。

気になる結果ですが、標準宅地の評価基準額が全国平均で2年連続の上昇、その平均値は約1.5%でした。

路線価よりひと足早く公開されている公示価格においても全用途で変動率がプラスでしたから、およそ予定通りの結果だと言えます。

令和5年,全国の地価動向

公示価格においてもコロナの影響で弱含みであった商業地のプラスが、令和4年度の15都道府県から一気に23都道府県にまで増加しています。

令和5年,都道府県別地価変動率

このような公示価格の上昇を受け、令和5年度の路線価は上昇するだろうとの予測はついていましたが、最高路線価の上昇都市は29にも達しました。この傾向はコロナが落ち着いて活性化したインバウンド需要の増加も含め、企業における社会経済活動がやっと正常化したことが理由であると分析されています。

ただし、オフィス需要の低迷が続いている地域は横ばいがぜいぜいで、良くて多少の上昇に留まるなど回復傾向に差があると指摘されています。

今回はそのような路線価の傾向について考えてみたいと思います。

理解していますか?路線価の基本

公示価格は解説するまでもなく土地価格を示す重要な指標の一つです。国土交通省土地鑑定委員会が、毎年1月1日時点における全国約26,000地点の基準地を不動産鑑定士の協力を得ながら審査し、1㎡あたり適正金額を決定したものです。

特段の事情が存在しない限り実勢価格に近く、私たちが査定をする際にも参考にするよう推奨されています。とはいえ、実勢価格は様々な要員により変動しますから公示価格=実勢価格とならないことは皆様ご存じのとおりです。

公示価格が国土交通省管轄であるのにたいし、路線価は相続税や基準地価の算定基準として用いられる財産評価基準ですから管轄は国税庁になります。

公示価格が不動産鑑定や公共事業用地の取得算定基準であるのにたいし、路線価は税金を計算するための算定基準とされていることから、税の公平性や評価の妥当性の観点からも漏れ落ちのない調査が必要です。そのため調査地点数も公示価格の26,000地点にたいして約13倍にあたる、およそ336,000地点に達します。

あくまでも目安ですが、路線価は公示価格や実勢価格の約8割に相当すると言われています。査定物件の近隣で公示価格の基準地や取引事例が確認できない場合、路線価から割り返して参考にしている方も多いのではないでしょうか。

令和5年度の路線価傾向

私たちが査定の参考にするため利用している路線価ですが、所有している当人は上昇を喜べません。路線価は市区町村が行う固定資産税評価の基準としても用いられていますし、何よりも相続税の計算に影響を与えるからです。路線価が上昇に転じれば納税額も増加するのですから、手放しで喜べるはずもありません。

さて、そのような路線価の上昇率はどのようになったのかを見ていきましょう。

もっとも、エリアごとの細かい上昇率や具体的な金額については国土交通省が公開している財産評価基準の路線価図・評価倍率表から確認していただくほうが良いので、コラムでは際立った傾向について解説します。

エリアを直接、調べたい場合には下記URLからご確認ください。

https://www.rosenka.nta.go.jp/

令和5年,財産評価基準

最高路線価が上昇した都市は29都市、前年並みの横ばいが13都市、前年よりも下落したのはわずか4都市しかありませんでした。前年の全国平均上昇率は0.5%でしたが、今年度は1.5%上昇になりました。

今年度の特徴としては商業地の回復があげられています。特にインバウンド需要などを見越して開発に力を入れている都道府県では上昇が顕著になっています。

路線価が最も高いとされる「東京都銀座5丁目」、不動産業者なら誰もが知っている鳩居堂前の路線価は38年連続首位を更新し、前年比1.1%上昇の4272万円/㎡になっています。

もっとも2020年の路線価は4592万円/㎡でしたから、コロナ禍の影響を受け一旦下落に転じ、じわじわと価格を戻している状況です。

東京都銀座5丁目,路線価

都道府県単位の平均上昇率から見ると第1位が北海道で前年対比6.8%の上昇、ついで福岡県の4.5%・宮城県4.4%と続いていますが、これらの都道府県はいずれも再開発事業の計画などにより投資需要が増加し、期待感も伴い価格を上げた市が都道府県全体を牽引しています。

首位となった北海道においては北海道新幹線の札幌延伸に備え、札幌駅周辺の土地取引が活性化して土地価格が大幅に増加したことが要因です。その他に日本ハムファイターズの本拠地である北広島ベースボールパーク(エスコンフィールドHOKKAIDO)のオープンによる影響も要因の一つとされています。また本年度の路線価には反映されていませんが、千歳市でこれから工事が開始される次世代半導体製造工場「ラピダス」の誘致により、千歳市内周辺地域では工事関係会社による賃貸住宅争奪戦が繰り広げられており、それを契機に土地価格も上昇しています。来年度以降も目が離せない状況だと言えるでしょう。

福岡県においては福岡市が牽引役となっています。とくに「天神ビッグバン」と呼ばれる天神地区の大規模再開発が要因です。再開発によるオフィス大量供給を見越して活性化しているテナントビル争奪戦もそうですが、そこを通勤圏とした久留米市、なかでも西鉄久留米駅前通は前年対比19.1%の上昇率となっておりバブル以降最大の上昇率を記録しています。

大規模開発によりその周辺地域が値を上げることについて解説は不要でしょうが、天神ビッグバンで値の上がる福岡市を避け、多少割安感のある北九州市を狙う方が増加しました。それにより店舗・賃貸マンション需要が活性化し路線価も15.9%の上昇となっています。

第三位の宮城県は、上位の2都道府県のような大規模開発こそないものの、コロナによる影響が和らいだことにより活性化する再開発需要に後押しされるようにマンションやオフィス需要が回復し、さらに大型商業施設の進出が際立つ仙台市が宮城県全体を牽引しています。

このように3%以上上昇した都道府県をそれぞれ調査していくと、大なり小なり再開発による不動産取引活性化が少なからず影響していることが確認できます。

都道府県別,路線価変動率

上記の変動率表を一読すればお分かりになるように、全国平均で路線価が上昇したと騒いでも、実際には実勢取引や公示価格・路線価にいたるまで全国一律で上昇している訳ではありません。
際立つ牽引役が平均値を引き上げているだけのことです。このような分析は市町村やエリア単位まで掘り下げていけばさらに際立ち、まさに二極化であることが確認できるでしょう。

路線価が全国平均で上昇などの記事が流れると、マイナスに転じているエリアの方々までが私たちの作成した査定書を見て「全国的に土地は値上がりしているはずなのに、なんで数年前に行った査定結果より低くなっているんだ!」なんてクレームを浴びせられることもあるでしょう。そのような際には、値上がりしているエリアにはそれなりの理由が存在していることを説明する必要があるのです。

小ネタとして覚えておきたい、相続登記時に計算する際の路線価年度

路線価の上昇要因と併せて覚えておきたいのが、来年(令和6年)4月1日から施行される登記義務化に関しての税知識です。

登記が義務化され、これまで未登記であった土地家屋などが順次登記されていくことでしょう。
相続対象となる不動産が漏れなく記載された遺産分割協議書が存在し、それに基づき申告を済ませ相続している場合は問題ありませんが、誰が相続するかで揉めあやふやの状態であることから法定遺留分による相続するとしていたものを結局は単独で相続し登記した場合などには注意が必要です。

このような場合、すでに相続税を収めている場合であっても修正申告が必要とされ、その場合には延滞税に加え加算税が課せられる場合もあります。

この場合、相続税を計算する場合の路線価については相続が発生した年(被相続人の死亡日)なのか、相続があったことを知った年なのかで悩むこともあるかと思いますが、正解は前者、つまり被相続人が死亡した日を含む年度の路線価が財産評価基準になります。

取りあえずの相続税申告の場合、土地建物の所有権は法定遺留分に基づく按分としている場合が多く、いざ登記する段階において単独所有とする場合には新たに遺産分割協議書を作成する必要があります。

相続税申告や相続回復請求権などには期限も存在していますが、遺産分割協議について時効は存在していません。相続人全員の合意があれば、いつでも分割のやり直し(再協議)が可能です。

ただし当初、法定遺留分により法定相続人がそれぞれ所有権を取得するとしていたものを単独に変更した場合、税法上においては「贈与」になります。それを防止するため対価を支払えば「売買」が発生したことになり、贈与税や所得税が発生することもありますので注意が必要です。

上昇した路線価で、登記を躊躇する方からの相談が寄せられる場合もあるでしょうから、このような相続税に関しての税知識も学んでおく必要があるでしょう。

まとめ

今回解説した路線価もそうですが、上昇の背景は公示価格や実勢価格が値上がりしているからです。実勢価格が上がってもいないのに路線価だけ引き上げられることはありません。

土地取引が活性化して値を上げるのはある面において喜ばしいことですが、今回解説した路線価傾向からも分かる通り、新型コロナによる影響がある程度落ち着きをみせたことによるインバウンド需要の増加、それによる商業施設需要により取引が活性化して値を上げているのです。

その周辺地域も価格において影響を受けますが、市井の方々が実需として購入する場合、価格の上昇が足かせになっている傾向が全国各地で確認されています。

立地の良いマンションの売れ行きは好調ですが、その影響で値を上げた周辺地域は戸建てが主流です。

土地が値上がりし、さらに建築単価も値上がりしている状況において新築戸建着工棟数は減少傾向にあると言われています。

注文住宅の受注が減少しても、社員や下請け業者の仕事は創出しなければなりません。そのため当初の予定を上回る件数の建売住宅を建築した会社も多く、筆者の活動する札幌市においても通年であれば500戸程度とされる新築建売在庫数が、現在は1000戸以上も在庫されているようです。

売れなければ資金回収が出来ませんから、業者の中には利益を度外視した値引を行っている会社もあり、つい先日話した営業マンは「200~300万円の値引きでは見向きもされない」と頭を抱えていました。

自社が抱える商圏の路線価を勘案し、再開発などにより販売が好調な都心部と、土地価格が上昇しても、その煽りで販売が停滞する周辺エリアに二分化されている状況を正確に把握して冷静に販売戦略を練ることが求められるでしょう。

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